次世代のモノ作りに挑戦 第33回
株式会社久留米サンモード 代表取締役社長 林田 明久氏

地場産の久留米絣の振興にも一役
“うなぎの寝床”と現代風モンペに挑戦

繊維に携わっている人ならば、久留米と言えば「久留米絣(くるめかすり)」が口について出る人も多いのではないだろうか。久留米絣は、福岡県久留米市および周辺の旧久留米藩地域で製造されている絣で、綿の藍染めが主体。伊予絣、備後絣とともに日本三大絣の一つとされる。婦人服の縫製企業で久留米絣の縫製も手がけているのが久留米サンモード(福岡県久留米市合川町一二七一、林田明久社長)である。久留米の本社を訪問した。

ー久留米サンモードは九州に四工場あったサンモードグループの一社ですね

もともとは私の祖父(林田茂雄氏)から始まっています。祖父がこの地(久留米)の今とは違う場所で一九四九年(昭和二十四年)に創業。息子が三人いて長男である私の父(茂昭会長)に久留米、次男に玉名、三男に柳川を受け持たせ、祖父が日田を経営し、それぞれサンモードが付いていた。久留米サンモードは一九四九年の創業からは七十六年になりますが、株式会社久留米サンモードとしての設立は一九八三年(昭和五十八年)です。グループはその後、経営者が亡くなったりして今は久留米サンモードと玉名サンモードの二社だけです。玉名は従兄弟の二人が社長、専務として頑張っています。私は二〇一八年に久留米サンモード社長に就任しました。

ー現在の工場人員は?

全員で二十八人。そのうち外国人実習生は十二人。ベトナム四人、ミャンマー八人で、残りは日本人です。全体の人数はここ十年くらい変わらず、実習生と日本人のバランスは変わりますが、三十人くらいをキープしています。

ー実習生はいつから

二十年くらい前からです。受け入れ団体は福岡ファッション協同組合。最初は中国人で、次にベトナムに移りましたが、ベトナムは集まりにくくなり、今はミャンマーに移っています。外国人は年齢も若くて二、三十代。日本人も二十代が二人、三十代が四人、あとは四十代とかですね。日本人は二年前に福岡の香蘭服飾短大から二人入ってきて今年の四月で三年目。頑張ってくれています。高卒も十年くらい前から入れていたけど辞めてしまう。とりあえず入って来るけど、服飾が好きでないとやはり続かない。

本縫いミシンは全てJUKIの縫製現場

うなぎの寝床の絣を全体の2割生産

ー生産アイテムは

婦人のジャケット、ワンピースが中心です。取引先は地元の『うなぎの寝床』が多い時には三、四割あり、全体で二割くらい。他は一般のアパレルです。

ーうなぎの寝床は地域文化商社として全国的にも注目されています

絣は小幅で裁断の仕方も特別だから入りづらいのですが、うちは元々久留米絣をやっていたから入りやすかった。うなぎさんも創業時に若い人が二、三人来られた。最初は『こんなに作ってお金払ってくれるのかな』と(笑い)。立ち上げの時は二十枚くらい作って、四、五百枚になり、今は年間一万四、五千枚くらいになっている。

ー現場から見たうなぎの寝床が伸びた背景は

売り方、宣伝の仕方、伝え方がうまい。これまで久留米絣でそういうのはなかった。どちらかというと昔のイメージ。それが現代風のモンペの名前の付け方でカラーもいろいろある。久留米のみんなを巻き込んで久留米絣のイメージを変える。その伝え方、売り方がうまい。

ー小幅による工場での問題とは

裁断の時、延反台が長くないといけない。モンペ一枚で五、六㍍は必要。小幅で狭いから延反台が短いところは二回に分けてやる。うちは少しやっていたから入りやすかった。生地幅が狭いから裁断の正確さが求められる。CAMで裁断しています。縫い方とかいろいろ考えています。

地元の機屋さんから運ばれてきた久留米絣の原反

使いやすさで作業者もJUKIを評価

ー縫製の現場を見させて頂きましたが、JUKIのミシンが多いですね

本縫い、オーバーロックは全てJUKI。本縫いはDDL‐9000CS。ボタン付けは平ボタン付けのLK‐1903BNと根巻きボタン付けのAMB‐289。電子閂止め、電子シャツ穴、サージング、エッジコンもあります。総合的にJUKIさんがいい。針送りだけは他の工場さんがやめられたので、外国製を中古で買ったんです。それで両方の針送りを持っているんですけど、やっぱり使いやすくてみんなJUKIさんの方を使う。穴かがりもそうです。

ー国内縫製の状況について

取り敢えず埋めているというのが実情だと思いますが、それが利益に繋がっているかというと繋がっていないと思う。元々の工賃が安いから一割、二割上がっても他業種に比べると安い。この産業自体、工賃が下がってきて実習生を入れて安く抑える。それで今から残ろうと思ってもどうか、と思う。工賃を上げていくとか、いい仕事を掴むとかじゃないと生き残れない。

ー特定技能の資格取得に向けて縫製業界は動いています

今年の四月二十日、アパレル工連による国際認証を取りました。国際認証は厳しいとかいう意見もたくさんある。でも良い機会だと僕は思う。今までみんながさぼってきた。国際認証を取ったところしか実習生を入れるべきではないと思う。冷たい言い方だけれど残るところは残る。自分たちの力で残れないならやっぱり終わりかなと。自動化と言っても完全自動化はできないし、やっぱり本人たちの技術。でも技術の割に賃金が安い。だから人並みにもっていかないと人は来ないですよね。業界が盛り上がって生き残っていく方向にもっていかないと。

ボタン付けもJUKI

取引先とはWin―Winの関係で

ーOEM以外に新しい取り組みも

ファクトリーブランドも少し始めています。ふるさと納税は久留米絣のバッグ、ハンカチなど三つくらいやっています。今期はもう少し増やそうと思っている。ファクトリーブランドではありませんが、うなぎの寝床さんと服以外でのコラボを行っています。昨年、西鉄久留米駅に出来た久留米絣の装飾(ディスプレイアート)に企画段階から携わらせて頂いたほか、今は端切れの企画をやっています。絣は捨てるところがないと言われていて、モンペの端切れをつかってパンツを作るという企画です。これにはうちの若い社員が企画段階から参加していますが、若い人たちの力はすごいと実感しています。取引先とはWin―Winの関係で一緒にやっていきたいと思っています。

 

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