次世代のモノ作りに挑戦 第1回
株式会社ナカノアパレル 代表取締役社長 中野 憲司氏

JUKIは今年4月に開催された「JIAM2016 OSAKA」(国際アパレル機器&繊維産業見本市)で新しいコンセプト「JUKIスマート・ソリューションズ」を掲げ、様々な角度から縫製産業の課題に応える提案を行いました。「JUKI-アパレル工業新聞・コラボ企画」(アパレル工業新聞・JUKIホームページに掲載)の新シリーズとして、労働力確保難、人件費の高騰の一方、ITやデジタル技術の進化など、アパレル生産を取り巻く環境が激変する今、オピニオンリーダーの方々に「次世代のモノ作り」に向けた取り組みをお聞きしていきます。

第1回はレディスのカットソーメーカーで、本社を東京から山形県南陽市に移転して話題を集めた「株式会社ナカノアパレル」の中野憲司社長にご登場頂きました。

若い人が集まる工場環境作りへ全力

ー今年5月に本社を東京から山形県南陽市にある山形工場に移転されました。

東京に営業やパタンナーをはじめ、人事、総務関係含めて約40人います。それまで当社は中国の自社工場が生産の主力拠点でしたが、国内生産を強化するため2012年7月に経営を引き継いだのが山形工場です。本社を山形工場に移転したのは災害が少ない山形に移ることでの危機管理が理由で、国内外合わせて500人の事業のリスク回避です。本社移転が話題になり、東京からのUターン組や県外の人なども(入社希望の)手を挙げてくれるという効果が出ましたね。それにも増して、この工場で生産する商品に君らの人間性が表れているから本社を持ってきたんだと話したら、社員みんな前向きになってくれました。これが一番大きな移転効果です。取引先にもモノ作りを強化する姿勢を示したことで、山形工場に来社されるお客さまがものすごく多くなっています。欧米ブランドとも取引がありますが、メード・イン・ジャパンよりも、豊かな自然に囲まれた中でモノ作りしているというメード・イン・ヤマガタに対する評価が高いんです。
今年4月に工場の向かいの土地を取得し、来年には東京本社の機能を代替できる体制や開発の機能、それに寮や研修センター、企業内幼稚園・保育所などを備えた建物を建設する予定で、工場と一体感を出せるビレッジ的な雰囲気の環境にしたいと考えています。山形県だけの問題ではありませんが、少子化により全国で学校がどんどん閉校し、もう地元だけでは人集めが出来ません。近隣はもちろん首都圏からも若い人が集まってもらえる環境を作れば、手を挙げてくる人も出てくると思うんです。このまま何もしなかったら縫製工場はどこもなくなってしまいます。

ー現在の山形の体制は。

山形工場が約90人、白鷹分室(西置賜郡白鷹町)が18人で、このうちベトナム人実習生が19人います。この工場を受け継いだ5年前は68人で、設備もほとんど買っておられなかった。だから設備投資も行い、初年度から毎年学校回りを始め、現在2工場合わせて約110人となり、平均年齢も当時の46歳が38歳まで下がった。それだけ若い人を一生懸命採用してきた。新卒者もいるし、ゼロだったの20代の男性社員も4人に。そういう若手を入れてくると活性化します。やはり工場は人ですね。2、3年以内に200人体制にする目標です。
一方、中国拠点は無錫の本体と6つの分工場があり全体で410人。分工場は安徽省に2工場、無錫近隣に4工場あります。これまで東京からすべて仕事を入れてきましたが、今年から中国内販と欧米の受注にも取り組んでいます。

ー4月のJIAMではJUKIが提案した「スマートファクトリーゾーン」の縫製ラインで山形工場の方々にご協力を頂き、ポロシャツ生産を実演しました。そのラインのイメージを山形工場に導入されています。

JIAMでスマートファクトリーに参加させてもらったのですが、将来、IoT(モノのインターネット)やロボットが入ってくると根本的に縫製業は変わると感じましたし、そういう仕組みを作っていかないといけないと思います。山形工場で稼働している1ラインがスマートファクトリーの考え方やイメージだけを取り入れたもので、立ち作業のシステムはそのまま残し、ミシンは既存機種ですが、すべてJUKIさんの製品で構成しています。現在は5人でいろいろなアイテムを流しています。それでも従来の縫製工場のイメージを一新し、オペレーターは企画室で仕事をしている感覚で、モチベーションアップにつながっているようです。導入直後にアメリカの取引先アパレルの経営者が工場を訪れ、大型モニターでJIAMの実演を流して説明をすると、とても興味津々な様子でした。

「スマートファクトリー」のイメージを取り入れた縫製ラインを導入

大型モニターを使ってJIAM2016の「スマートファクトリー」を紹介

カットソー生産にJUKIの高速シリンダーベッド両面飾り偏平縫いミシンが活躍

「匠の会」を立ち上げ、新たな技術開発へ

ー「匠の会」を設けて技術開発にも力を入れていますね。

独自の縫い方、技法などを絶えず研究していかないと新しい商品が生まれません。新しい技術を取り入れた商品提案はお客さまにもメリットがあります。そのために無縫製設備を導入したり、バインダー開発などに力を入れて来ましたが、もっと幅広くヒントを得るためミシンメーカーさんや副資材メーカー、大学の先生方などにご協力頂く目的で匠の会を立ち上げました。しかし、いろいろなメーカーさんがご一緒ではなかなか本音の話が出来ないということで個別に取り組むことになったわけです。その第一弾がJUKIさんで、6月に私どもの東京の営業、パタンナーと山形工場のメンバー約15人が多摩本社にうかがい、JUKIさんからは開発やJUKI販売の多数の方々に参加して頂きました。
事前に当社の各部門が今困っていること、こういったことが出来ませんかということを投げかけていました。それに基づいてこれは既存設備でこうしたら出来ます、これは研究中、開発中という、いろいろなやりとりを行うことが出来ました。多様な素材に対する糸調子の設定という要望も出しましたが、これは今度のデジタル本縫いミシンが1つの回答でしょうね。今回は3、4時間のミーティング後にショールームを見学、各ミシンの説明を受け、また1時間くらい議論させて頂いた。機械にあんまり縁がなかった営業のメンバーもモノ作りの背景、どういう設備があって製品が出来上がったのかなどに理解が深まり、お客様に技術的な説明をする奥行きが広がります。具体的な回答を頂いたので、整理して順番に詰めていくということを繰り返していくことによって、新たな技術開発が生まれてくると期待しています。

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