わが社のモノ作り戦略 第11回
ミヤモリ 代表取締役 宮森 利隆氏

国内生産にこだわるスポーツウエア工場

スポーツウエア生産企業のミヤモリ(富山県小矢部市埴生二〇八、宮森利隆社長)は、設計・試作、二次加工、縫製までの一貫体制を構築し、国内でのモノ作りに徹してきた。量産から別注まで柔軟に対応できる強味を生かし、アパレルの多品種小ロットに対応するとともに、ウェブ経由で個人のオリジナルウエアやサークル・クラブ活動のユニフォームなども受注している。また、繊維産地である地元と連携し、「ロボットを守るウエア」を素材開発から手掛け、大手自動車部品工場などに採用されている。国内のモノ作りが縮小する中、新たな取り組み先を開拓するミヤモリの現状と今後の方向性などを宮森社長にお聞きした。

設計・試作から一貫生産体制で

ースポーツウエアも海外生産が進んだ中で、国内生産に徹してこられました。

現在、ミヤモリが百五十人、鹿児島市にある子会社のアクトリーが六十人で、グループ全体で年間生産量は約百万枚です。扱っている商品を素材別で見ると、七五%が「伸び物」と呼んでいるストレッチ素材で水着、フィットネスウエアなどのアイテム、二五%がカットソーでジャージー関係のスポーツウエア、メンズ・レディスのカジュアルウエア、襟付きのTシャツなどを生産しています。アクトリーも生産アイテムはほとんど同じで、一番多いのが水着、フィットネスウエア。もともと布帛のウインドブレーカーやウインドアップなどを生産するため立ち上げた会社で、今も一部そうした商品をやっています。
伸び物の中心アイテムである水着は、競泳水着、フィットネス水着、遊泳のファッション水着の三タイプがあり、タイプによって使用するミシンも違います。競泳は水の抵抗を減らすためフラットシーマーを使い、縫い目を残さないようにメスで切り落としながら縫っていきます。フィットネス水着はゴム入れ、ヘム縫い、平二本などを使います。遊泳は見せる部分や自分が楽しむ要素があるのでフリルや花みたいなものを手付けしたりします。
もう一つのフィットネスウエアでは、コンプレッションウエア、スポーツタイツのような商品があり、最近増えているのはコンプレッションウエアで、ゴールドウインさんの「シースリーフィット」は裏に芯張りするなど当社で手掛けている中では一番難しい商品ですね。このブランドでは薬事法の扱いで売られる商材があり、その製造のためミヤモリもアクトリーも「一般医療機器製造業」の認定を取得しています。

ー機能的にも設計・試作から量産までの一貫体制を構築されてきました。

一貫体制を確立したのはこの十年間です。デザイナーはいませんが、企画にはパタンナー、サンプル製作のスタッフ計六人がいますので、イラスト画だけ頂ければ設計・試作からプロト製作まで全部出来ますし、特殊な素材でなければ調達して製品売りもできます。
製品売りでは二つの形態があります。一つは従来の取引先でも材料の売り買いをして欲しいという要請が増えています。機能素材を使った商品も多く、取引先は開発した生地だけ指定し、あとは全部当社にお任せと。それでパターン、副資材の選定、プリントなど、生地以外は全部担当します。もう一つは材料から全部準備し、本当に製品売りするケース。新規顧客開拓の一環としてホームページを開設しており、ネット経由で個人や小売店などのお客さんが広がっています。よさこいのチームウエアや幼稚園のクラブ活動着を作りたいとか、お風呂屋さんの社員用ユニフォームとか、それこそ北海道から沖縄までお客さんがいます。熱心な人はサンプルを送ってこられますが、だいたいは絵や写真程度で、それで求められる商品に近い素材や材料を探して製作します。
そのほかにアパレルや商社から量産はないけど、パターン製作やサンプル作成だけを依頼される仕事もあります。最近は中国をはじめ海外の工場でも設計からやる工場が多いんですが、イラスト画だけ投げて上がってくると、見た目は形になっていても着用感が良くないとか立体的になってないケースがあり、理由を聞くと型紙に問題があるそうです。だから工業企画までは日本でやって、仕様書、型紙、サンプルを持って海外で生産したいというわけです。

ー縫製現場でも改革に取り組んでいるそうですが。

国内生産にこだわっていくために試行錯誤しています。今、目指しているのは国内の優位性であるQR生産体制の確立と、国内に残る商材をどう取り込んでいくかということです。ミヤモリの生産ラインはカットソーが一ライン、水着が三ラインの計四ラインあり、一ラインは二十人~二十五人編成です。スポーツウエアですから別サイズ、別注、チームオーダーなどもあり一枚から対応していますし、量産でも一ロットは平均二百枚前後でしょう。こうした量産から別注まで柔軟に対応するため、昨年後半から「アメーバー方式」という現場改革を始めています。
これまで素材別の大きなくくりでABCDの四ラインにしてきましたが、AとC、BとDをくっつけて二ラインにし、二つのラインの中で広げたり、小さくします。かつて大きなラインといえば大量生産の仕組みでしたが、今回は大きなラインに変えてもそういう発想ではなく、設備などを有効に使いながらできるだけ繁閑を少なくし、稼働率を高めるのが狙いです。例えば五十枚のオーダーなら従来の一ライン二十人でやるより、二、三人で対応した方が効率が良い。そういうケースがいっぱいあるんですね。また、水着とジャージーでは繁閑の時期が異なり、ジャージー関係の仕事が薄くなった時期に遊泳が忙しくなることがあります。その繁閑を上手くミックスするため大きなラインにして、その中で設備や人の交流、多能工化を進めるのが目的です。つまりロットに応じて適切な人員をライン長や管理職が話し合って決めて投入していこうというわけです。そうすると後から投入した物を先に上げることもできますし、ロットにかかわらずQR生産に対応できる仕組みにつながると考えています。

ストレッチ素材、カットソーの商品に取り組むミヤモリの縫製現場

鳥の巣防止仕様の「DDL-9000B-DS」(特注機)で水着の裏地を仮止め

水着の足ぐり工程は電子本縫い千鳥縫い「LZ-2290A-SS-7」を使用

積極的に新規取り組み先開拓

ーQRとともに新規市場開拓を重視していますが、ロボットウエアもその一環として取り組んだものですね。

きっかけは地元にあるアルミダイキャストを製造している自動車部品工場から、溶接ロボットに着せるウエアを作って欲しいという依頼でした。従来のカバーは火花、粉塵、油で汚れて長持ちせず、一年くらいでぼろぼろになっていたそうです。それで富山県工業技術センター生活工学研究所や地元の繊維関係企業とプロジェクトチームを作り、平成二十年度の県の「新商品・新事業創出公募事業」の支援を受けて開発を始めたわけです。開発した生地は常温で百五十度、瞬間で七百度くらいには耐えられますし、ロボットに負荷を掛けないため、柔らかくてフィットします。また、セパレートタイプにして、一番傷む先端だけ交換できる工夫をしています。納入に当たっては、当社のパタンナーが現地で実際に採寸してロボットの動きや取り付けたアタッチメントを考慮して設計します。だから、お客さんには、これはロボットウエアのイージーオーダーです、と話しています。最初に依頼された工場では半分のロボットに開発したウエアを着せていますし、大手自動車関係の工場で徐々に採用を決めて頂いています。この素材で製作した耐熱耐炎ウエアが、昨年十月に開催された全国繊維技術交流プラザで、県内では初めて最高賞の中小企業庁長官賞に選ばれました。

ロボットウエアは手間ヒマも掛かりますし、爆発的に売れる商材ではありませんが、これを通じてオリジナルの素材を開発するプロセスを学べたし、自分たちで実際にオリジナル商材を販売していくという勉強にもなりました。会社の一つの挑戦といったら大げさですが、こういう新しい取り組みをどう広げていくかが今後の課題です。

ー多様な商品を生産していく上でJUKIのミシンも多く取り入れられています。

本縫いミシンもフラットシーマーもすべてJUKIさんですね。特にフラットシーマーは競泳水着の生産を立ち上げる時にグループで相当の台数を入れました。それまでもフラットシーマーを使った経験がありましたが、競泳水着は縫い目を残さないように両メスでカットしますから、調整が難しいし、技術的に苦労しました。その時にJUKIさんの地元の担当者にはいろんな形で協力して頂けました。そういう対応の良さがJUKI製品を選んでいる理由です。

競泳水着生産の立ち上げから活躍しているJUKIのフラットシーマー

JUKIは世界のアパレル生産を全力でサポートします

ニット縫製向けに新機種
●セミドライヘッド高速オーバーロック/インターロックミシン
●新型の両面飾り偏平縫いミシン

国内では1月から発売

JUKIは、昨年九月に大阪で開催されたJIAM2012(国際アパレルマシンショー)で発表したニット縫製向けのセミドライヘッド高速オーバーロック/インターロックミシン「MO-6700DA」シリーズ、新型両面飾り偏平縫いミシンのフラットベッド型「MF-7500(D)」、シリンダーベッド型「MF-7900(D)」を一月から国内で発売しました。
セミドライヘッド高速オーバーロック/インターロックミシン「MO-6700DA」シリーズは、セミドライミシン「MO-6700D」シリーズのモデルチェンジタイプ。新製品は、主要駆動部の特殊表面処理やグリス給油方式に加え、針棒機構、上ルーパー機構を無給化したドライ技術を継承し、縫製中の油汚れを解消することができます。このため油汚れによるシミ抜き作業や、縫い直し作業を削減します。特に、グリス充填口を設けているためメンテナンス性が向上しました。
また、針を動かす駆動部分の部品形状を改良したことなどにより、縫製スピードが従来機の最高毎分六千針から七千針に約一七%アップしました。難素材・新素材のパッカリング防止に最適な調整・装備をミシン各部にセッティングした「パッカリング防止仕様」も品揃えし、オペレーターは難しい調整の必要がなく、美しい縫い品質を実現することができます。
両面飾り偏平縫いミシンはフラットベッド型「MF-7500(D)」、シリンダーベッド型「MF-7900(D)」の二タイプで、セミドライ、糸切り装置付きタイプなど八シリーズを発売しました。ニット製品の縫製は、素材の種類、伸縮率に応じ、送り関係を調整しますが、新シリーズは上下、水平方向を複合的に調整できる世界初の「新送り機構」を搭載。これにより3D縫製による縫製不良を解消するほか、多種・多様なニット素材に対応した美しい縫い目を実現できます。
セミドライシリーズは、油の飛散の要因となる面部機構のドライ化を継承していますが、針棒部に使用する部品の材質変更を行い、縫製スピードを毎分五千針と二五%アップ。糸切り装置付きはダイレクトドライブモーターを搭載したため縫製の応答性がよく、従来のサーボモーターと比べ、消費電力をMF-7500(D)は二九%、MF-7900(D)は二七%削減します。
また、新送り機構および送り前後の調整を製品外部から調整可能としたことで、メンテナンス性が大きく向上しました。

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