次世代のモノ作りに挑戦 第23回
株式会社パルコモード 代表取締役社長 山本美樹子氏、取締役専務 山本直樹氏

国内最大のレディスボトム工場
企業内認定スクールで技術者を育成

山形県米沢市にあるパルコモード。隣の南陽市にあるパルコヌーベル南陽と合わせて約160人で、年間20万着強を生産している婦人ボトム専門工場では国内の最大手です。東北で唯一の厚生労働省認定企業内訓練校「パルコモードファッションスクール」を運営し、技能検定への挑戦で多くの技術者を養成してきたのをはじめ技能継承、人材育成に力を入れてきました。一方、早くから独自のハンガーシステムを導入、最近もJUKIのデジタルソーイングシステム「DDL‐9000C」を取り入れるなど積極的に設備投資を進めています。山本美樹子社長、直樹専務のご夫婦と、スクールの校長も務めている鈴木百合子常務の3人にお話を伺いました。

ー生産キャパが縮小し国内工場はフル稼働です。とりわけボトム工場は限定されているのでお忙しいでしょう。

 社長「うちも人員が減って作れる量が限られているので、受けすぎて納期遅れというご迷惑を絶対掛けたくないのでいろいろ調整させて頂きながらやっている状況です」
 専務「そんな中でも新しいホテルの館内着上下やリフォームした古民家のユニフォーム用のはんてんを依頼され、サンプルラインで作ったりしています。バッグも飛び込みで受けました。モノ作りが好きな社員が多く、遊び心で量産以外のモノに取り組むのは楽しいしモチベーションアップにつながれば、という思いがあります」

ー現在の人員は。

 社長「本社が120人、南陽工場が38人。もともと本社は150人、南陽工場が50人の規模でした。日本人社員の数はほとんど変わりません。専門学校や地元の高校からも年に2、3人採用しています。今春新卒で来た社員は、地元の高校時代からうちに勤めたいという希望を持っていて、仙台の専門学校を卒業して入ってくれました」
 専務「現在年間生産量は20万着強で、一時に比べ減少しています。生産キャパが少なくなった最大の理由は実習生。30年以上、中国から18~20人の実習生を受け入れてきましたが、10月末に本社はわずか2人になりました。ようやく12月に中国人の技能実習3号が3人、1号が1人来ます。それと新たにミャンマーから受け入れを始め、12月に6人、来春4人、さらに3人の受け入れを予定しています。そんなことで人の体制は徐々に整っていくだろうと考えています」

ーボトムでもパンツが多いんですね。

   社長「以前は7対3でスカートも手掛けていましたが、今はたまにスカートが入ると、なんでと言われるくらい」
 専務「もうボトム工場というよりパンツ工場とみられています。アパレルさんからは、スカートは上下セットでお願いできるが、パンツができないんですと言われます」

パルコモードファッションスクールの校長も務める鈴木百合子取締役常務

ー貴社の特色であるパルコモードファッションスクールは91年8月に開校し、今年で31年目になります。

   専務「創業者の今井三男から校長を受け継いだ鈴木常務をはじめ指導員が担当しています。毎年、基礎技術、スペシャリスト、2級技能士、機械メンテナンスなど7コースを開設し、対象は全社員で約八割が受講しています。もう本当に定着しています」
 常務「各コースが週1回、1時間だけ就業時間内をもらい、16時15分から18時15分まで開いています。コースによって6回とか8回とかまちまちで、2級技能士コースは1年間掛けてやります。縫いの基本を学ぶ基礎技術コースではポケット、ファスナー、ベルトなどを順に学べます。スクールで学んで技能検定に挑戦し、現場では約7割が婦人子供既製服縫製作業の技能士資格を持っています」
 専務「すごいと思ったのは、事務の社員が技能検定にトライして合格し、1人はサンプルラインに行き、もう1人も資材担当に移りました」
 社長「うちは1枚流しですから、1人で何工程も受け持ちます。私はこれだけやっていればいいという工程はありません。ですからスクールで勉強し、ラインに戻ってくる仕組みが必須です」

ー生産現場は多品種小ロット対応になっています。

   社長「前工程担当のFC(フロントコントロール)が芯張り、テープ付け、サージングや、ポケット、ベルト、ベルトループの作成、玉縁縫いなどを担当、組み立てラインは本社が7ライン、南陽工場が3ラインあります。1ラインは平均6人編成で、『パルコローテーションコントロールシステム』(PRCS)と名付けたタクトシステムによるハンガーシステムが稼働しています」
 常務「組み立ては1枚流しで、多能工化しているので1人が本縫い、アイロン、ロックなど2、3台を持って作業しているのが特徴ですね。アイパッドに仕様書を取り込み、各縫製ラインは切り替え時にアイパッドを持って行って、オペレーターが順番に脇に置いて流します」
 専務「自動機を使えば品質も生産性も安定してくるので、当社からアパレルさんにスワッチを付けて仕様を提案しています」

ハンガーシステムを導入し1枚流しラインを構築

ーJUKIのデジタルミシンも採用されています。

   専務「9000Cシリーズは立ちミシンタイプを現在八台導入しています。またJUKIさんからは人材育成プログラム『e‐ラーニング』、ミシン点検サポートシステム『守破離』を提案してもらい、面白いので鈴木常務が検討中です」
 社長「地元の置賜地区では中学生・高校生向けの職業体験会『ワクワクワーク』を開催しており、当社も3年ほど前から参加し、9000Cなどを持ち込んでポケットティッシュケースを作ってもらっています。立ちミシンに驚きますが、簡単に縫えるというのが分かってみんな楽しそうです」
 常務「高校生たちは、ミシンもタッチパネルで操作できると説明するとすごく興味を持ちますね」
 専務「そんな縁で高校生が当社の企業PR動画も制作してくれました」

立ちミシンのデジタルソーイングシステム「DDL‐9000CF」を採用

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