生産現場に『JUKI』を探る Vol.4
アパレル生産現場第3回
厚物工業用ミシンの拠点工場
JUKI松江

JUKI松江

JUKIは工業用ミシンの総合メーカーである。アパレルが主力ではあるが、ミシンが使われるのは何もアパレルだけではない。カバン、靴、家具、さらには自動車関係のカーシート、エアバッグなど、一般に厚物と言われる分野がある。このシリーズでは今後、厚物の現場も取り上げる予定だが、それに先立ち「発信元」である島根県松江市宍道町にあるJUKI松江を紹介することにした。

グループの一体運営で

JUKIグループにとってマザー工場は大田原工場だが、厚物ではJUKI松江がマザー工場である。その歴史は古い。

創立は大正12年(1937年)、松江市御手船町において中島ミシン製作所が工業用・家庭用ミシンの各種送り歯、押さえ金の製造を開始した。1944年、株式会社中島製作所に改組。55年、工業用ミシン頭部の生産を開始した。64年、JUKI(当時・東京重機工業)と提携した。90年、工業用ミシンの一貫生産をねらいとして宍道工場(現・本社)を新設。2006年、JUKI松江株式会社に社名変更、名実ともにJUKIの100%グループ会社になった。現在、本社・宍道工場のほか島根県雲南市大東町に大東工場があり、工業用ミシン製品、同部品のほか、ミシンで培った生産技術力を生かして産装関連製品を生産している。

本縫いミシンを中心としたアパレル分野で強いブランド力を持つJUKIにとって、厚物分野はニットとともに重点的に強化を図る戦略業種に位置づけられて来た。今年八月、工業用ミシン事業部の営業本部営業推進部にニットから独立する形で厚物機器課が新 設。一方、JUKI松江の開発部隊を本社の開発部に組み込むなど、販売、開発、管理、製造の一体化が急ピッチで進んでいる。工業用ミシン(工ミ)グループの一体運営の中で、JUKI松江は厚物の拠点としての位置づけがされている。

今年四月、大田原工場から赴任してきた森利則社長は「マザー工場である大田原工場をベースに、まずそれを取り入れ、厚物のオリジナリティーを加えながら、厚物ミシンの拠点として世界で優位に立つ」と構想を話す。

厚物業界を取り巻く環境は大きく変わりつつある。靴、カバンは低価格ミシンが市場に氾濫。「特に靴は安いミシンの領域で、第三国製が圧倒。

カバンは価格、納期対応で勝機はある」(森社長)という状況。カバンは昔から『YAKUMO』ブランドが強かったが、昨今の諸事情で省力化が求められ、JUKIのサイクルミシン「AMS」を使うところが増えてきた。

森利則社長

創業時からの製品である送り歯などを展示

技能レベルの高さを示す技能士ボード

自動車関連でフォローの風

しかし、重点ターゲットとなるとカーシート、家具、テントなどの分野だ。この中で、特に自動車関連分野はJUKIにとって、フォローの風が吹いている。自動車業界の海外生産、産地移動が背景にある。日本や北米から中国や中・南米などでの現地生産が盛んになっているが、自動車シート、エアバッグ、シートベルトなど、現地で十分なサービスが受けられなかったり、部品供給が不十分といった問題が浮上。こうなると世界的な販売・サービスネットワークを持つJUKIへの期待が大きくなる。

重点ターゲットであるカーシート、家具、テントなどは、製造・供給側にとってはアパレルと違う難しさがある。まず縫製物が大物である。このため(1)材料が高い、失敗は許されない(2)大きい品物であるが縫い上がりの誤差は厳しい。さらに、(1)頭部、附帯装置セットでの対応が重要(2)個別用途対応で、価格、納期対応、ゲージを含めミシンまで素早い対応が必要(3)ユーザーとの共同対応で、ともに高い要求レベルをクリアしなければならない―といった課題がある。

JUKI松江では、こうした市場(営業)の要求に対して、重点テーマとして七つのプロジェクトを立ち上げた。第一は人材育成。「会社の優位性は人。機械はお金さえ出せば買える。使う人、使い方が問題だ」(同)。「現代の名工」に表彰された鐘築克己さんのような優秀な技能者もいる。デジタル化との融合も始まっている。第二は未然予防。クレームを未然に防ぐクレーム、トラブルのゼロ化。第三はデジタル組み立て。一人セルからスタート、グループセル、デジタルラインと取り組んでいく。第四は納期改善。週次生産に移行し、納期順守率100%を目指す。第五はMT短縮。設備稼働率向上で24時間30日稼働定義で80%へ。第六はコストダウンで、30%削減(材料20%、加工10%)。第七は部品加工改善で、送り歯、押さえ、針板、針留の四点に特化。「一個でもゲージを作ってミシンに組み入れ、お客様の要求をすぐにクリアする」と森社長は話す。送り歯、押さえなど創業時の生産品目が、時代を超えて蘇ろうとしている。

「現代の名工」鐘築克己さん

ずらりと並んだミシンを試縫い

フレーム加工のNHLライン

一人セルでデジタル組み立て

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