次世代のモノ作りに挑戦 第34回
株式会社モンナトリエ 社長 田中 智恵 氏

ジャパンメイドの技術を世界へ
話題の「DX-01」をいち早く導入
愛知県春日井市にある株式会社モンナトリエ(田中智恵社長)。瀧定名古屋の子会社である瀧定テクニカルサクセサー(TS2)との協業で、2015年に設立した。瀧定との取り引きは2006年からと古く、国内でのモノ作り、特に日本人技術者の育成という共通の目的のために協業の中味を濃くしてきた。「ジャパンメイドの技術を世界に広めていくのが最終目標」と話す田中社長。そのためには人材育成と技術継承が必須だ。「技術に対してちゃんと対価が払えるようにするには、生産性とクオリティーの向上しかない」と方針は明確。同社はこのほど、JUKIの新機種である電子ベルト送り一本針本縫いミシンのDX-01をいち早く導入。その威力に期待を募らせている。
広いスペースで「流し縫い」の縫製現場
若い日本人技術者育つ
TS2(瀧定名古屋関連子会社)との協業で
モンナトリエは延べ床面積13,200㎡のTS2の建物の一角にある。TS2の前身は、1993年に瀧定100%の関連会社で倉庫物流の瀧定中部商品センター。その後TSロジスティクス(TSL)を経て、2023年に現在の社名になった。TS2はそれまでの倉庫物流だけでなく横の多角化を計画。アパレル製造、流通加工(検品、リペア)、物流の3つである。アパレル製造のモンナトリエとの協業は2015年、瀧定名古屋との共同事業としてスタート。約十年経過している。2023年にTS2に社名変更とともに社長に就任したのが堀口剛氏。瀧定名古屋時代から続くモンナトリエとの共同事業の責任者だ。
モンナトリエの前身は1967年に田中社長の父が岐阜で創業した森縫製所。外国人実習生を中心とした個人会社で、2006六年に田中社長が引き継いだ。他にモリトモも関係会社である。
森縫製所と瀧定名古屋は2006年からの付き合いで、瀧定の仕事を100%やっていた典型的な町工場。堀口社長は、「日本製の縫製を謳いながらも、外国人実習生に頼りきりというのが名岐地方を中心にある。そのこと自体もだし、技術がちゃんと残っていくのかという疑問があった。技能実習生を受け入れている工場さんは技能実習生の質次第で品質が変わるなどがあったが、森縫製所さんだけは技能実習生を迎え入れた中でちゃんと人を育てることをしていた。それで技能実習生だけで無く日本人も育てられないかという思いもあって、2015年に森縫製さんに岐阜からこちらに移ってきた頂いた」と話す。当初は外国人実習生が九人とパートだけだったが、一部の日本人スタッフを受け入れてスタートした。あくまでも協業で、瀧定がCAD/CAMなど必要な投資をしながら営業、必要な技術供与などの面で協力してきた。「目的は日本人スタッフの育成をしていくこと。日本人の正規雇用をしていこうと思うと、勤務体系を見直すなどが必要。モンナトリエを設立したのもそのためだった。」(堀口社長)
堀口剛TS2社長
人作りと技術継承
ギャザー縫いでDX-01を
モンナトリエはフランス語の「monatelier(私のアトリエ)」から来ている。 原点として一つのアトリエでありたいというネーミング。一着丸縫いができる人を育成しながら、後世に伝えられる土壌を作っていきたいというのが社名の由来であり理念である。「皆さん、人が集まらないと言われますが、縫製希望の人はたくさんいると実感しています。未来を見せてあげれば、自ずと集まってきます」と田中社長。
従業員は現在、3社合わせて67人(うち外国人実習生21人)。日本人オペレーターの平均年齢は26歳と若い。しかも離職率は極めて低い。TS2の堀口社長は「ここがモンナトリエさんのすごいところで、田中社長の経営方針とやっていることが他の工場さんとわけが違うなと。常日頃モノ作りを含めた人作りと、それを通じて技術の継承をしようとする風土ができている」と話す。
モンナトリエの取引先は、有名な国内のコレクションブランドとドメスティックブランド。アイテムはダウンなどの充填物を除いてフルアイテム。丸縫いが出来るスタッフの存在がそれを可能にしている。このためブランドからは特に短納期でのサンプル制作が評価されているという。
多くのスタッフが丸縫い出来る背景には、裁断から縫製、仕上げ、検品、物流までの一気通貫の体制と「流し縫い」と呼ばれる一着毎にアイテムを仕上げていくシステムが挙げられる。加えて技術の幅を広げているのは瀧定名古屋からの協力。現在、瀧定名古屋からメンズのスーツの技術者とレディスのドレスをメインにした重衣料系の技術者の二人が入っている。メンズのスーツを作るというよりは、メンズのスーティングのノウハウとレディスのカジュアルのノウハウをドッキングした物や、デニムのワークウエアのノウハウとドレスとをドッキングして作るなどいろいろなニーズがある。「それには技術の元としてメンズのテーラリングを持っていないといけない」(堀口社長)というわけだ。
DX―01によるギャザー縫いに見入る田中社長
縫製現場のミシンはほとんどがJUKI
―DX-01ミシンのを導入した理由
ベルトが六つあって全部動きが違う。カーブが違う物を縫い合わせるときに普通のミシンだと人の手で片側をイセながら縫わないといけないのですが、ベルトの送りで調整できるのでどんな不器用な人でもきれいに入っていく。人の手頼みだったところが、商品の顔が均一になる。一番いいのはギャザー。今までは一回捨てミシンを入れてから、ギャザーをわざわざ取ってから縫うからギャザーを取った糸が見えてしまうという問題が多々ありました。それが一発でできる。捨てミシンが見えないし、きれいに入っていく。薄物が多いので、ギャザーを入れる時はどうしても送り歯で生地を傷つけることが多い。それがベルトなので一切傷つかない。試しをする時に針を動かさずに置くだけでギャザーの取り具合が分かる。
薄物が多く、生地を傷つけないのも魅力
―ミシンの情報はどこから
ミシン屋さんです。ちょうどギャザーを縫っていた時だったので一回レンタルして縫ってみてお客さんに写真を送ったらすごくきれいですねと言ってもらえた。
―最後に、会社の課題、展望を
どこまで行っても生産性向上とクオリティーの追求です。これだけ物価高や最低賃金上昇がある中で工賃がなかなか反映されない。それをどう解決していくか。今までは結果でしか分からなかったことが着流しにしたことによって明日の売り上げ予想が見えてくる。届かない分をどう補うかを毎日話し合い、工賃の高いところに人を入れていくなどの手を打つ。そういうのが現場にも馴染んできたので、もっと深掘していけば中小企業並みに賞与も払えるなと。ゆくゆくは自分たちで企画して海外に発信していけるようになればと思っています。
JUKIからのコメント
DX-01は、JUKIの一本針本縫いデジタルミシンに、六本のベルト送り機構を搭載した、次世代の汎用ミシンです。
アパレル生産現場で求められる「いせ込み縫い・カーブ縫い」などの難工程を大幅に効率化。効率化の秘密はオペレーターの“布さばき”をアシストする世界初の技術、JUKI独自の『六本ベルト送りアシスト機構』にあります。
上下に配置された六本のベルトが、事前に設定した最適な送り量に沿って稼動することにより、難工程における高い再現性を実現。従来はオペレーターの技量に大きく依存していた肩や襟のカーブ、ギャザリングなどの立体的な縫製を容易にし、幅広いアパレルアイテムの生産性向上に貢献します。
開発の出発点は、送りにくい素材が増加しベルト送り機構が求められていた中、従来のベルト送りミシンはポストベッドの袖付け専用機で「何とかフラットベッドの汎用機タイプに展開できないか」という技術的な要望と「細腹や袖付けなど難工程ほど人に依存していまう」「人材確保が難しく技術継承が進まない」といった現場の労働環境から来る切実な声でした。
DX-01は2024年JIAM展示会で初披露されるや大きな注目を集め、今年六月に国内発売を開始。導入された企業様からは、高い評価を得ています。
JUKIはこれからもお客さまの声に寄り添いながら、ものづくりを支える革新とサービスで、お客様の持続可能な未来を創ります。



