服作り新時代 Vol.3
国産プレタの復権へ
株式会社ラピーヌ 代表取締役社長 松田 雍晴 氏

日本のプレタは、会社をやめられたり、倒産という形を余儀なくされたりで、数が減ってきています。高級品を作る企業が減ってくると、私どものところにもモロにしわ寄せがくる。一つは工場です。以前、L研と呼んでいたラピーヌ研究会は三十社くらいあり、私どもはL研に対するウエートが非常に高かった。しかし、私どもの売り上げも全盛期から比べると減ってきた。三十数年培ってきてラピーヌのノウハウをもってやってきた工場だが、全面的に維持するのは難しいということで、L研をやめました。私どもの商品は五〇、六〇%やり、あとはどこかさんとやって頂きたいが、プレタの売り場がなくなってくると、埋め合わせするところがなくなる。

ポップインターナショナルの田中健社長から協力要請のご相談を受けたとき、まず考えたことは、「ジョコンダ」さんのように三十三億円の売り上げをやっているところがやめてしまわれたら、またまた困るなと。一社だけではなく何社かがあって日本の工場を育成していける。日本のアパレルが何とか頑張って、私どもと共に工場さんとモノ作りをしていく。日本の工場で日本のプレタを作るという発想でしたから、ジョコンダさんの話が出たときに、私どもがジョコンダさんをお借りして、スケールが大きくなれば、私どもを取り巻く工場さんも喜んでくださると考えました。

工場さんともよく話をしますが、技術的な輸出はある程度できるかも知れないが、日本の匠の心、モノ作りの心の輸出はできない。当社の創業オーナーは『日本の女性を美しくする服、日本のプレタは日本で作る。日本一の富士を見ながら、日本一の服を作るのだ』と十三年前に富士山のふもとに工場を造りました。今はちょっと趣旨がはずれたところもありますが、工場さんのための工場として造った。新素材の試作や、新しい機械が出れば導入して稼働させていく。厚かましいですが、指導できればという考えも持っていた。

 

産地も取り引きのグロスが増えると研究開発、商品開発ができます。日本のアパレルで今、一㍍五千円、七千円とまでは行かなくても、三千円、五千円くらいの生地を使うところは少ない。国産の商品は三千円前後の生地をどんどん使えるようにやらないといいものはできません。我々がある程度のグロスをやり、産地・川上が生地の開発をどんどんしてもらう。日本の素材は非常に良いものがある。しかし一旦、パリ、ミラノなど海外に行き、製品になって帰ってくる。メード・イン・ジャパンで作られた素材が、パリやミラノの高級な製品になってしまう。ちょっと違うのではないか、という思いですね。

日本に少し欠けているのは、感覚的な面、感性の面ではないでしょうか。極論を言ったら、日本で原料を調達し、向こうで生まれて向こうの空気を吸って育った感覚のいいデザイナーに少し応援してもらう。素材は日本で、生産国は日本で日本の技術で作るというのが一番いいのでは。日本には、いいものを縫う技術がある。JUKIさんのように機械もいい。職人もいる。

外国からどんどん新しいものが入ってきて、百貨店でもインポートが増えて悔しい。インポートものはいいけれど高い。あの値段で消費者に売らなくても、日本製の感覚のいいものを作って売る。アクセッシブルラグジュアリー―手の届く高級品ということが言われています。ラピーヌはまさにそれをやっていきたい。

工場、産地といったモノ作りと、実際にお買いいただく消費者の方たちへの対応は同じように真摯でなければなりません。私が社長になった時、衣料品にも保証をと提案し、お客様安心サービス(ハイタッチカード)をつけるようにしました。当社は販路が高級百貨店、高級ブティックで、皆いいお客様ばかり。反応が良くて、ずいぶんフィードバックして頂いている。お客様からのクレームは真摯に受け止めます。染めが悪かった、色が良くなかった、縫いが良くなかった、と我々が反省すべき商品ばかりです。私どもの工場さんも真剣になってくるし、MDも物性的に難しいものは絶対出しません。ひとつの商品価値を上げることに非常に役立っている。百貨店さんに置く商品は、それだけメーカーが保証している商品ですよ、と堂々と言い切れるものを置けと。デザインも見てくれもいいけれど、やはり品質、上質をとらえないといけない。消費者を裏切らない。それが生命線になるでしょう。

もう一つは、富士の工場の活用です。工場としてはコストが高く、なかなか採算が合わないのですが、販売促進として役立っている。伊勢丹さんは、三百人を超える人に来て頂いており、伊勢丹さんの教育の一環としてご利用されている。また、某百貨店さんが、パターンオーダーのお客様をバスで二十五名ほどお連れして、現地で採寸をし、素材を選び、パターンオーダーを作っていただいた。非常に大好評です。百貨店さんからのご要望があれば大いに今後使っていったらいいなと。日本のプレタ復権に今後も全力をあげて行きたいと思っています。

JUKI顧客満足宣言
技術サービスで「CS」提供

JUKI(株) 工業用ミシン事業部営業技術部部長 浜 学洋

 

JUKIの営業技術部は1969年に開発部門である技術研究所から分離し、お客様へのサービス部門として設立された組織です。工業用ミシンは代理店を通じて販売していますが、営業技術部は当初より直接お客様を訪問し、ミシンの修理、技術セミナーを開催するなどのサービスにより『CS』すなわち、お客様の満足を追求する活動を続けてまいりました。

活動の中心である「技術サービス」は縫いに関する技術的問題を解決するとともに縫製に対するニーズや技術情報を汲み取ることが主な役割となっています。活動地域は本年1月1日の繊維規制枠撤廃により、縫製産業が活況を呈している中国市場のほか、東南アジア、東ヨーロッパなどが主体となっています。縫製機械技術者育成のため、これらの国のミシン技術セミナーには講師を派遣しています。

縫製に関する相談窓口も開設しており、問題解決の内容はJUKIマガジンの「知って得する縫いのヒント」にも掲載し、縫製品質改善のヒントを提供しています。また、本社(東京調布)の「ソーイングセンター」には50機種のミシンを展示していますが、縫いテストやデモンストレーション、さらには素材にあったミシンのご提案なども行なっています。

こういった実際に利用されるお客様の声や市場の経験を生かして、営業技術部では新商品の企画・開発にも参画し、機能・性能の向上や環境に優しいミシンの提案などを行なっています。また、JUKIミシンが工場から出荷される前に、お客様側に立った目で定期的にチェックをし、品質に万全を期しています。

現在、日本をはじめ、ドイツ、ポーランド、トルコ、インド、シンガポール、中国、アメリカ、香港などに営業技術部の出身者が駐在し、同様のサービスを行なっています。今後とも営業技術部では縫製現場の問題をお客様とともに解決し、ご満足を得られるように活動を進めていきます。

ソーイングセンターで学生に指導する風景

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