手作りワールド

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須川豊澄(すがわとよずみ)/バンディ 先生

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肩書き: Qrinaf(クリナフ)代表 ・レザーバッグ職人・レザークラフト講師
活動拠点: 東京都台東区浅草
活動内容概要:
・Qrinaf(クリナフ)の商品作りと販売
・Bandy's leather craft schoolの講師業
・外部への出張講師業

ブログ:Bandy's diary.
Facebook:Qrinaf
Instagram:qrinaf.bandys_leather_craft
twitter :@Bandy98487981
YouTube:BANDY'S Leather craft School
ホームページ :BANDY'S Leather craft School

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活動・受賞歴など  詳細はこちらをご覧ください。

2010年 オリジナルブランド“Qrinaf”を設立。フルオーダーバッグの製作を中心に活動。
2013年 レザークラフトの本場、東京浅草にアトリエ兼ショップをオープン。
2017年 同アトリエ内にて、BANDY’S Leather craft schoolを開講。
2019年 ミシンメーカーJUKI株式会社にて講師を担当。

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先生の声

「JUKIミシンを使って、家でできるレザークラフトの楽しさを伝えたい…」
いつも、ミシンに助けてもらっています。
ミシンがなかったら、今の仕事は成り立たないので、ミシンがあってくれたからこそ、今の自分の仕事ができています。
だからミシンに優しくなれるのかもしれません。本当にミシンのおかげです。
JUKIさんと知り合えたのもこのミシンのおかげですしね。
ミシンは大切なパートナーです。ミシンも踏んでくれる人がいないと何もできることはないし、僕もミシンがないと何も作品は生まれてこないし、お互いが存在して成り立つ。って感じですかね。

「モノにはデザインとそれを形作る構造がある・・・」

家具販売会社から上京して築地の魚屋へ転身

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地元である三重県では、イタリアから輸入した家具を販売する会社に勤めていました。
その会社へ就職が決まっていて、就職前に「イタリアの本場のパスタが食べたい!」と思い、勢いでイタリアへ旅行し、そこで食とデザインに惹かれ、日本とは違うイタリアの文化に触れて、イタリアが大好きになりました。
当時は、イタリアの革張りのソファを見て、「イタリアの革は綺麗だな。」と思った程度で、今の仕事に就くなんて全く想像もしていませんでしたね。
20代の頃から料理が好きで、イタリア輸入家具会社で扱っていたルクルーゼの鍋と出会い、料理してみたら、すっごくおいしくできて!将来は、地元で調理器具を扱うお店と料理教室を開きたいと思っていました。
その後イタリア輸入家具会社を辞めて、調理器具の勉強をしようと思い、27歳で上京を決めました。
東京の合羽橋にある調理器具の会社へ就職しようと思っていたんですけど、当時は女性しか募集していないので…と言われ、ほとんどの会社から断られてしまい、最後にたどり着いたのが築地でした。
築地で約5年、魚をさばく仕事をしながら、週一で料理教室に通っていましたね。
築地での仕事は、朝4時~昼12時で終わるので、午後は銀座にある和食屋さんで週6でアルバイトしていました。
最初はアジの3枚おろしもできなかったのが、あんこうを解体するまでになっていて、ほとんどの魚はさばけるようになっていました。
あんこうをさばいているときに、ふと「俺、こんなんしに東京来たんとちゃうのにな~」って思って。
築地での仕事は楽しかったんですけど、その瞬間もう辞めよう!と思って、本当にしたいことじゃないなと気づきました。

イタリアに惹かれてバッグ販売に

自分の好きなことを仕事にしたいと思ったときに「イタリアが好き!」ということから、イタリアに関わる仕事がしたいと思い転職を決めました。たまたま知り合いが紹介してくれた会社が、イタリアのバッグを輸入・販売している会社で、そこで雇ってもらえることになり、イタリアは好きでも当時はバッグや革は全く興味がありませんでした。
百貨店の売り場に配属されて、頑張って接客するんですけど、バッグのこと全然わからへんから、接客しても上手く説明できないんですよね。そうしているうちに店長から、「そろそろバッグ売ってくださいよ。」ってプレッシャーをかけられて…
販売していたバッグがレディースバッグだったので、男性目線で女性にどういう風にアプローチしたらいいかなと思った時に「バッグの構造を知りたい!」と思ったんですよ。
僕がお客様に伝えたいことは、デザインの良さだけではなく、デザインの裏に隠された「バッグの構造」だったんです。

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バッグ職人の世界へ

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僕が販売を通して伝えたいと思ったことがきっかけで、バッグのことを勉強してみようと思いました。
なかなか自分に合う学校が見つからず、たまたまたどり着いたところが、バッグ職人養成学校でした。
そこで基礎をしっかりと学んでいたおかげで今があると思います。
20歳くらいのときからずっと自宅でできる仕事がしたいと思っていました。
家族との時間を一番に大切にしたいと思っていたので、自宅兼仕事場になったというのは夢が叶いましたね。
教室では人の役に立てて、自分の生活もできる、それがレザーの世界だったんです。

ミシンとの関わり

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おふくろがドレスの仕立て職人をしていたので、家にはミシンがずっとありました。
ずっと四六時中、洋裁をしていたので、ミシンは身近にある存在でした。
家庭科の授業で雑巾を縫ったくらいで、まさか自分が大人になって、ミシンを使う仕事に就くとは夢にも思わなかったですね。
初めて本格的にミシンに触れたのはバッグ職人養成学校でした。
その時は「まさか俺がミシンを踏む時がくるとは!」って思いましたね。
学校にあったミシンがすべてJUKI工業用ミシンの腕ミシンだったので、そこからJUKIのミシンを使うようになるのは自然な流れでしたね。

「デザインは生徒さん、僕はパターンと作り方の提案を・・・」

洋裁からレザークラフトへのお手伝い

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当初は、バンディ―ズレザークラフトスクールを始めたときは、手縫いからミシンへ移行される方が多いのかな…と思っていたんですけど、そういう方はほとんどいなくて、手縫いでされている方は、手縫いでのこだわりがあって。
ほとんどの生徒さんが洋裁からレザーもやってみたいという方が多かったですね。
洋裁をしている方が布のバッグ作って、持ち手だけ出来合いの革のものをミシンで縫いつけようとしたときに皆さん失敗されているんですよ。その失敗をされたマイナス経験からスタートラインに戻してあげることが大切だなと思いながら、ワークショップをしています。
テクニックは、伝えれば伝わることだと思うんですけど、それ以上に生徒さんの気持ちがフワッと上がるような教室にしたいなと常日頃から思っています。
ここまで生徒さんが増えるとは思っていなくて、現在はおかげさまで満員です。

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希望を叶えるレザー教室

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「こんな教室があったら行きたいな。」と思う教室を作りたくて、バンディ―ズレザークラフトスクールをメインに活動しています。
僕は、生徒さんがこういうバッグを作りたい!と思った物を実現させてあげられる教室にしたいと思っています。
この教室にくると、見たことのない道具がたくさんあるんですよね。
一つの作業に凄く時間がかかっていたことが、道具一つであっという間にきれいにできる体験を積み重ねると、ミシンも今まで縫えなかったのが、良いミシンで縫うと縫えるんだ!と実感してもらえるので、そう意味では、ここは最強の実験場です!

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作りたい!と思うものが作れるサポートを・・・

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生徒さんからの要望を聞いて、デザインもパターンも僕が行います。今までに40~50個の基本のパターンは作りました。1個の型紙からアレンジしたものを入れると相当な数になりますね。
デザインは、バッグによっていろいろ違うんですけど、こんなものを作りたい!と思って、パーンって降ってくると一日で型紙引いて、一日で制作することもあれば、革を見てこんなバッグを作ってみたいと思うこともあって。僕、絵心マイナス2000なんで、一切、絵は描かないんです。笑
ほとんどが妄想で型紙を引いて、まずはサンプルを作ってから、そのサンプルをもとに微調整していく感じですね。
自分が納得いくアイデアが出てくるまでとことん考えています。
生徒さんがこんなデザインで、こんなもの作りたいっていったものを作ります。生徒さん自身の個性を出せるように型紙の元は同じでも、アレンジして作りたいと思えるものを作るほうが楽しいですよね。

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生徒さんのチャレンジ精神に火をつけて・・・

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レザークラフトは特殊な技術が多いので、「生徒さんがしっかり理解するまで堅苦しくなりすぎず、しっかり教える。」をモットーにしています。
この教室は、学校ではなく趣味で通うための教室なので、一番に楽しくないとダメじゃないですか!
神妙な顔して、「なんでこれできへんの?ここ、こうやったらええやん!」じゃなくて、「なんでできやんと思います?」って、生徒さんに考えてもらいながら、その答えを導きだしてもらえるようにサポートしています。
バッグが完成したら、絶対にみんなで拍手して出来上がった喜びを共有しています。
周りの生徒さんも僕も頑張って完成させよう!というモチベーションに繋がるので、その気持ちを大切にしています。
教室の運営も長くなってきて、生徒さんのレベルも徐々に上がってきました。
その方々へ簡単なものばかりだと飽きて面白くなくなってしまうので、生徒さんが何を作りたいか、生徒さんが、ちょっと難しそう!でもちょっとチャレンジしてみようかなぁって思うようなバッグの見本を僕が作ってあげる。今はそこに力を入れています。

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自宅にいながら繋がる教室

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教室で使用するミシンは、工業用ミシンがメインですが、教室の最初の課題で作るバッグや小物なんかは、SL-700EXを使って、自宅で制作されています。
全員LINEでつながっているので、生徒さんが家で制作途中にトラブルがあっても、いつでもLINEでメッセージや写真を送ってもらい、フォローしています。

「ミシンともっと仲良く・・・笑」

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普段、ミシンをしっかり使用されている方でも、もうワンステップ深くミシンと付き合えるようになってほしいなと思います。技術や知識の前にミシンのことをもう少し理解することで解決できることってたくさんあるんじゃないかなと思うんですよね。
せっかく購入したミシンをもうちょっと深く理解してあげて、仲良くなって欲しいなって思います。
僕は、ミシンに振られても機嫌を悪くされても忍耐強く向き合い続けてきました。
趣味でされている方と仕事とでは違うのかもしれませんが、仕事の場合、ミシンの調子が悪くなったら絶対にそこから逃げ出せないんで、どうにかミシンの機嫌を取り戻してもらうために必死になって、僕は何とかがんばるわけです。
趣味だと、あーダメだ!やめよう!って、そこでやる気が失せてしまうと思うんですよね。
でもそこでもう一歩踏みとどまって、なんでミシンの機嫌が悪いのかなって、なんで上手く縫えないのかなって、立ち止まってもらって、ミシンと会話してほしいんですよね。
絶対、ちょっとしたことが原因なんですよ。その原因が見つかったときに、ミシンに更に愛着が沸くと思うんです。
自分のミシンを可愛がってもらって、愛着が沸くようになってもらいたいですね。

「JUKIさんから、ミシンユーザーの可能性を広げたい、という提案に賛同」

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JUKIのTさんが僕のInstagramにDMをくれて、「家でミシンレザークラフトを広めたい!」というメッセージをもらったんです。
SL-700EXというミシンがあるので、一度縫ってみてもらえませんか?って言って、うちに来たんです。
当時は、いやいや~そんな家で使うようなミシンで革なんて縫えるわけないですよ。って話したんです。
SL-700EXが発売されるまではそれが普通で、家でレザークラフトをすること自体、非常に難しかったし、工業用ミシンを使うのが当たり前だと思っていました。
実際に縫ってみたら、ビックリするほどきれいに縫えて、「最新の職業用ミシンってこんなにすごいんや!」ってその時確信に変わって、洋裁からレザークラフトへ、ソーイングの幅を広げたい、というJUKIの想いを聞いて、それに賛同しました。

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工業用ミシンDSU-144N と 職業用ミシンSL-700EX がスゴイ!
十数年DSU-145を使っていたのですが、アタッチメントを変えると送りが弱くなってしまい、誰に聞いても解決できなかったのですが、今年の初めに幸田ミシン商会さんと出会い、話が盛り上がってずっと長年抱えていた悩みをぶつけたら、すぐに解決してくれて、出会って1時間でこのミシンを買う!って決めていました。自分でもびっくり。

SL-700EXのお気に入り機能

半針スイッチ
同じ針穴に入れたいとき、講習会でいつもはずみ車を手回ししてと言っているんですが、この機能があることで、針が自動的に最上点に行く(天秤が一番上にいく)ので、ねらった針穴に必ず入れることができるのが便利ですね。

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太糸テンション
上糸を引っ張る力が強くなるので、この機能があるからこそSL-700EXはスペシャルですよね!。

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オススメの押え・ソーインググッズ

SUISEI SRシリーズ SR70、SR20
この2点はワークショップでも必ず使用しています。

方向チェッカー
SL-700EXの場合は、針が工業用針なので、方向チェッカーで必ず確認しています。

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使い方のコツ・縫い方のコツ

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ミシンと一体になって、ミシンが送りたいときだけ助けてあげることを常に意識しています。
それを意識するだけで、縫いがかなり綺麗になるし段差が超えられるようになります。
ミシンのことが分からない人は、生地が送らないとき生地を引っ張ったりしていますが、ミシンの送りのタイミングで補助してあげることが大事です。それがまさに「シンクロ縫い」です!
ミシンがしたいことを僕がサポートしてあげる。というような感覚ですね!

取材:2021年6月