服作り新時代 Vol.4
”セミ・グローバル展開”へ
店頭発信のモノ作りが基本
イトキン株式会社 代表取締役社長 辻村章夫氏

今年の当社は上期(2~7月)から厳しい業績ですが、これは社内改革をやっていましたので、ある程度織り込み済みの部分です。

下期に入る7月1日付で従来の4カンパニーから15のカンパニーとディビジョンに細分化しました。これまでのような大きな組織は合理化を図るという意味ではメリットはありましたが、ブランドによってターゲットも違うし、大きいほど責任の所在が薄れます。細かな組織に分けたのは、責任と権限をより明確にすること、そして権限を持った人をよりマーケットに近づけることでスピーディーなジャッジが出来る体制にしたわけです。

この組織改革も一段落しました。と言っても、ファッション業界というのはマーケットの変化に応じて組織改革は臨機応変にやっていかないと、これで良いというベストの企業体と言ったものはあり得ません。いつでもアメーバのように変化出来るように、随時、マイナーな組織や機構の改革は行っていきますが、大きな変更は一段落つけましたので、今後は現場もある程度落ち着いて安定した業務が出来ると思っています。

この10、11月に入り、気候も昨年に比べ寒くなり、ウール物がコートを中心に好調な動きを見せているので、店頭は上向きに変わってきています。組織の大きな方向性が決まって動き出したのが下期からで、これに天候要因も加わり、いい数字に表れてきた感じですね。

イトキンの企画生産の基本は、「店頭発信のモノ作り」に徹することです。

そのために第一は多様なニーズに対応出来る幅広い生産体制の確立を目指しています。変化の激しい市場のニーズに機敏に対応するためには、企画、生産体制を常に柔軟に保っておくことが大切で、例えばハンドクラフトが流行れば中国やインドの産地の活用が求められます。だから市場のニーズやトレンドに対して何でも出来る生産体制を常時整備しておくことを心がけています。現在、海外生産比率は40%位で、QRやプレタ関係の商品は国内が向いていますが、アジア中心に適地でモノを作るので生産基地も多様化してきます。

二つ目が品質の向上対策。ファッションはトレンドがどんどん変わり、それに対応するスピードが必要ですが、忘れてならないのが消費者に納得して頂ける品質です。大垣に技術研究センターを設けて工業生産の技術開発や技術者を養成をしているのもそのためで、海外を含めた生産基地の技術向上に向けて、常時、技術者を送り込んで技術指導を行っています。

最後が価格の合理化であり、消費者に納得して頂けるリーズナブルプライスの追求です。品質や感性を上げながらも、価格をリーズナブルに抑える企業努力が必要ということ。それにはマンパワーだけでなく、最先端のテクノロジーを有した機械化をしていかないと価格の合理化は追求できません。そのためイトキンは日本及び海外の生産基地に対する設備投資を積極的に行っていきます。

欧米のアパレルは企画は自分の国で行いますが、素材は中国や日本など世界中から調達して、ヨーロッパやアジアなど適地で生産し、グローバルに販売しています。我々も考え方は同じですが、狙っているのは日本で企画したモノを日本、中国で同時展開するというビジネスです。いわばセミ・グローバル化です。

現在、中国では直営の商厦と呼ばれる大型店舗のファッションビルが上海、天津、青島、大連の4カ所にあり、来年秋にはハルピンにもう一つオープンする計画です。これで直営大型店は5店舗になりますが、これ以外に日本と同様に百貨店のインショップを展開していて、今は全中国で200店強持っています。

中国は広く、地域によって気候や体形の違いがあり、ファッション感度も異なります。このため今年二月の組織改編で中国のエリアマーケティングを手がける「CPディビジョン」を新設しました。日本の企画に足りないところをCPディビジョンが日本の企画をボディーにして展開していく。例えばサイズを広げるとか、カラーも日本では2色だが、中国で好まれる色をもう1色追加したり、あるいは北の方ではコートの納期を早めるとか、バリエーションをもう少し増やすとか、地域で微調整をする必要があります。こういうアジャストメントをこの部隊が日本の企画をボディーにして企画・生産してくれます。

日本と中国が主体ですが、将来、イトキンはボーダレスな会社を創ることを目指しています。そのために世界で最も適した素材を、世界で最も適した場所で生産し、それを世界の拠点で販売していきたいと考えています。

イトキン作業場風景

JUKI顧客満足宣言
世界のソーイングクリエーションをサポート
「日本品質」の要求に対応

JUKI販売株式会社 取締役社長 高橋純一

 

JUKI販売㈱はJUKIミシンを柱に、各種縫製機器関連商品をソフト、ハード両面から最新の情報をお客様に紹介し、販売、サービスを行っている会社です。本年6月からは新体制となり、北海道から九州まで全国に展開し、CS体制を敷くことができました。また、12月からは家庭用ミシンも取り扱うことなり、販売店様を通じて一般家庭まで幅広い商品提供とサービスを行ってまいります。

イトキンさんは中国に大型総合ショップを展開し、中国国内に13の工場をお持ちです。そこでは多くのJUKIミシンをご利用いただいていますが、それらの設備は日本からも導入されています。JUKIからイトキンさんの全中国工場を約一ヶ月にわたり訪問したことがあります。その時はJUKI本社の営業技術部と現地担当者が合同で、ミシンの保全、日常の手入れ、定期点検などのチェックと研修を行いました。現在では現地のメカニックの方がこれを継承発展して進めておられますが、私たちのこういった活動が縫製品質向上の一助になっているのはうれしいことです。

イトキンさんも縫製技術や品質の基準は日本がベースにあるということから、技術継承や人材育成のために大垣の技術センターを設立されたと聞いております。日本の市場は新しい流行が次々に現れますが、消費者は品質に厳しく、また、世界最先端の繊維素材もアパレル縫製に利用されます。こういった中でお客様と情報を共有し、サービスを行うことから日本の工業用ミシンは高度に育成され、その結果、世界の信頼を得ていると思われます。イトキンさんがJUKIミシンをお使いになっていることは中国での私どもの販売にも大きな影響力があります。JUKIブランドがトップブランドとして評価されつづけるためにJUKI販売としては新たな商品や技術の紹介とともに、今後ともお客様のジャパン・クォリティーの要求に答えるサービスを提供していくことが大切なのだと思います。

“フラットシーマー”36200のミシン技術講習会風景

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