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プロジェクトストーリー PROJECT STORY

PROJECT.01

AMS-251の開発

高級車の内装を彩るステッチの美しさは、その品質を大きく左右する。
JUKIが3月に発売した工業用ミシン「AMS-251」は、より美しいステッチを描けるように開発された最新鋭の工業用ミシンだ。
直線と曲線を滑らかに縫い上げる新機種の開発はどのように行われたのだろうか。

H.S イノベーション推進室所属 開発期間:約1年半

1機種立ち上げまでの全工程に携わりました。

開発の背景に、カーシート・エアーバッグ・高級カバンの業種において、縫い方向によっては縫い目が均一にならず、バラツキがあることが品質問題として懸念されているという現状がありました。
特に高級カーシートでは、まっすぐに揃った縫い目が、高級カバンでは、針で空いた穴を隠すミの字の縫い目が要求されます。ただJUKIの従来機では、全周ミの字縫いは実現できず、高級カバン業界全体には入り込めていませんでした。
そのため、更なる顧客ニーズへの対応と高額商品での利益を確保するために、頭部回動式の機種開発を進めることになりました。
私は仕様決めから、設計、組付け、評価、量産における1機種立ち上げまでの全工程に携わりました。メカ設計としては、主に旋回する頭部の設計と釜部の給油機構を担当しました。

度重なる試験を繰り返し、問題解決を行う。

AMS-251は、これまでのJUKI汎用機種にないノウハウが必要になったため、他社と技術協力を行いました。バラック機(試作機)の組み立て時には、JUKIに専用の生産設備がなかったため、2ヵ月間先方の工場をお借りしました。JUKIの設計者・JUKI製造担当者・先方設計者が一体となって、調整値の取決めや組立方法、問題点の対策を1つ1つ潰しこんだことが印象的でした。技術の習得にもなりました。
また、自社とは異なる開発プロセスを経験する中で、今後の開発でも多くを活かせることに気づきました。
その過程で大変だったのは、油の給油・排油の制御です。
従来のミシンは、釜土台が動かないため油の飛散方向が決まっているのですが、AMS-251は釜土台が旋回するため、釜からの飛散油や、給油タンク内の油が遠心力によって四方に飛散する問題がありました。
油の経路確認や、度重なる対策部品での試験を繰り返し、問題解決を行いました。

針の部分が左右に回転する機構が特徴。直線も曲線も美しく描く。

機械が指示した動作を実現した時は、何ものにも代えがたい感動があります。

バラック機(試作機)に火が入ったときは達成感を感じました。
メカ、エレキ、ソフトがそれぞれ作り込んだものを一体化し、機械が指示した動作を実現した時は何ものにも代えがたい感動があります。
実際に販売開始された時は、展示会や量産設置立ち合いで「これはいいミシンだ!」「こういったミシンが欲しかった!」といった、嬉しいお客様の声を聴くことができました。険しい開発過程だったことを忘れ、「この機種に携われて良かった!」と強く思いました。

業界の先駆けとなる製品を提案していきたい。

今まで私はミシンの中のあるユニットの開発という形で業務に関わっていましたが、「AMS-251」は機械全体を通して携わった初めてのミシン開発でした。協力会社をはじめ、社内製造や他部門との連携により、たくさんの人と関わったという意味でもとても勉強になりました。この開発も、メカ・エレキ・ソフトそれぞれのメンバーが協力してできた賜物で、決して一人でできたことではありません。

今後の目標は、「JUKIだからできる」業界の先駆けとなる付加価値をもった製品を提案していくことです。例えばガラケーからスマホに移り変わった時に、技術の分岐が起きます。今は直接開発に携わる部署ではありませんが、どの職場にいても、そのような先駆けだったり「まだこの世にないもの」や先端技術に関わっていきたいですね。そのために、今回の機種開発で知ったお客様のニーズを正確に受け止めたいと思っています。

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