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次世代のモノ作りに挑戦 第11回

株式会社TSIソーイング 「米沢工場」 代表取締役社長 西内 渉氏
株式会社TSIソーイング
「米沢工場」
代表取締役社長 西内 渉氏
株式会社TSIソーイング
「米沢工場」

代表取締役社長 西内 渉氏


人とデジタル融合のスマートファクトリー

 TSIホールディングスグループの婦人服生産工場であるTSIソーイング米沢工場(山形県米沢市)は、IoT(モノのインターネット)による最新デジタルミシンなどを活用したスマートファクトリーとして昨年11月にスタートした。本格稼働以来、官公庁、業界関係などの見学者が相次いでいるという。同じ米沢市内から市の工業団地に移転・新築した工場で、JUKIや島精機製作所と協業し、フルデジタル仕様・ダイレクトドライブ高速本縫い自動糸切りソーイングシステム「DDL-9000C-FMS」を34台導入したのをはじめ、最先端の生産管理やカッティングのシステムなどを取り入れている。縮小が続く国内生産の中で今後の方向を示す取り組みとして注目されている。


若手技術者を養成する後押しも

若手を中心にデジタルミシンを使った1枚流しの「スマートライン」若手を中心にデジタルミシンを使った1枚流しの「スマートライン」
―稼働して以来、見学者が後を絶たないそうですね。
 経産省の方々にはじまり、商社、アパレル、小売り、縫製工場、教育機関、関連業界など様々なところから問い合わせを頂き、5月連休前までほぼ毎週のように見学に来られました。IoTやスマートファクトリーへの関心が高まっている中、ほとんどの方々が実際に最新の機器・システムを導入している現場感を確認しようというものですね。見学に来た専門学校の学生の中にはインターンシップをさせて欲しいという依頼もありましたので、受け入れていこうと思っています。
 --国内生産が縮小する中で自社の縫製工場に投資した狙いはなんでしょうか。
 国内は大量生産・大量消費はもう望めません。マーケット環境の変化に合わせたモノ作りができる国内生産の体制を作っておかないと供給できなくなります。そのために「ミライファクトリー」というコンセプトを打ち出し、まだ世の中にないような最新のデジタル技術と設備を導入し、技術、対応力、コストの競争力を高めていこうと考えたわけです。マスカスタマイゼーションという新たなアパレルビジネスを実現するのにも、国内にモノ作りの場所がないとできませんから。
 もう一つは、米沢工場は40数年経っていますが、今春も3人入ったように毎年高校新卒者が3~5人入社、平均年齢が30代半ばと若い社員が多いのが特徴で、20代前半くらいの人たちがけっこういます。デジタルの最新鋭設備はそういう若手の技術習得の後押しという目的があります。実際に旧工場でJUKIさんと一緒にスマートラインを立ち上げ、二十歳そこそこのメンバーでTSIの百貨店系ブラウスで損益分岐点を優にクリアするレベルまで達した実績があります。

―現状は。
 現在、従業員は91人で、地元米沢を中心にすべて日本人です。米沢工場はもともとジャケット、コートなどの重衣料生産がメインでしたが、受注環境の変化に対応するために中軽衣料まで幅を広げることが課題になり、その対応もスマートラインで進めていこうと考えました。すでに重衣料は4割を切り、ブラウス、ワンピース、スカート、カットソーなどが6割以上になっています。またTSIグループ以外の生産も受けています。他社からの生産を受けることで工場の課題が分かり、それをクリアすることで品質や技術が高まり、TSIグループのモノ作りに貢献できると考えています。


3ラインにデジタルミシン

タブレットを接続し、Wi-Fi経由でデータ収集する「JaNets」ラインタブレットを接続し、Wi-Fi経由でデータ収集する「JaNets」ライン

アイロンとアイロン台を合体した「9000CFMS」のデジタルミシンも設置アイロンとアイロン台を合体した「9000CFMS」のデジタルミシンも設置
―縫製ラインではJUKIと協業したデジタルミシンが稼働しています。
 縫製ラインは5班編成で、このうち3ラインでデジタルミシンを使っています。一つはJUKIのスマートファクトリーネットワークシステム「JaNets」を採用し、8人編成でジャケットを生産しています。8台のデジタルミシンにタブレットを接続し、Wi‐Fi経由で出来高、稼働データなどを自動収集し、モニターに各ミシンの進捗を表示。遅れている工程やトラブルの発生した工程を即座に把握し、オペレーターの応受援に生かして生産性を上げるのが目的です。
 2つのラインが「スマートライン」と呼んでいる、クイックデリバリーを目指した立ちミシンラインです。1枚流しによりライン内の仕掛かりを削減するのが狙いで、若手を主体にした8人と9人の編成でスカート、ブラウス、ワンピースなどを生産しています。工場の課題は人材育成、技術指導で、デジタルミシンは新人でもミシン調整が簡単になるので、このスマートラインで縫製に慣れてもらう。人とデジタルの融合を進め、人材育成の入り口にしたいと考えています。
 デジタルミシンは調整値を数値で管理し、パネル操作で簡単に調整ができます。サンプル班にもデジタルミシンを2台入れており、とりあえずピンポイントでもいいから、サンプル班で難工程と思う部分のデータを量産ラインと共有していくことを検討しています。JUKIさんもしょっちゅう工場に来ていただき、データの活用方法、JaNetsの検証、ミシンの改良などのサポートをしていただいていますし、我々も現場の声はすべてお伝えするようにしています。

―島精機さんとも協業しています。
 カッティングエリアの3ラインの1つに島精機製作所の導入第1号という「カッティングソリューション」を取り入れています。CADで作成した裁断データをもとに延反、CAMによるカッティング、ラベリングまで自動で行い、これまで三人が携わっていた裁断を一人でできるようになりました。また新設したニットラボにはデザインシステム「SDS-ONE APEX3」二台とホールガーメント横編み機「MACH2XS」三台を設置し、ニットと布帛の合体したような高付加価値の製品を開発していきます。現在、TSI・プロダクション・ネットワークのニットデザイナー、パタンナーとニットラボのメンバーでサンプル作りを進めており、年内にグループに提案したいと思っています。

―産地とのコラボも行っています。
 米沢産地には長い歴史を持つ「米沢織」を手掛ける米沢繊維協議会があります。TSIグループや他社を含め、米沢工場の年間生産量10万着のうちすでに約3万着は米沢織を使った商品です。米沢には海外のラグジュアリーブランドが採用する生地があり、TSIグループの素材開発メンバーも産地と一緒に「TEPPEN(てっぺん)」プロジェクトとして開発、その試縫いを米沢工場でやっています。すぐにビジネスにつなげるというよりは、産地のみなさんとどういうモノ作りができるかを探っています。こういうプロジェクトについて工場で話をすると、若いみなさんも目の色が変わってきますね。

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