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WAVE - ポリ乳酸繊維
自然と心と身体にやさしい新素材・デザインで
サスティナブル社会を目指す
株式会社エコマコ代表取締役
ナチュラルライフコーディネーター
OKA学園トータルデザインアカデミー校長
岡 正子さん
 自然の中で分解する生分解性のポリ乳酸繊維を素材に使ったデザイナーで世界的にも知られる岡正子さんは、長野にあるOKA学園の校長でもある。
 エコフレンドリーなアパレル素材の開発とデザインに情熱を注ぐ岡さんにお話しを伺った。
<長野発>自然・環境・人にやさしい
繊維・デザインの提案


 地球温暖化の問題を契機に、産業界では環境に負荷をかけないエネルギーや技術の開発、素材の開発が盛んに行われている。アパレルの分野では、繊維のリサイクル等が知られているが、同じように石油系繊維に代わる新しい資材として、環境に負荷をかけない繊維の開発が進められている。
 アパレルの特徴は、単に素材が環境に優しいだけでなく、ユーザーの感性にフレンドリーな商品に仕上げるためのデザインが重要なポイントになっている点である。
 そして、ポリ乳酸繊維というエコフレンドリーな素材を生かしたデザインで、いま世界的に注目を集めているのが、㈱エコマコ代表取締役でデザイナーの岡正子さんである。
 岡さんは、長野市にあるOKA学園トータルデザインアカデミーの校長を務めながら、ご自身もデザイナーとして、数々のデザインコンクールで賞を獲得し、最近ではエコフレンドリーな素材を生かしたデザイナーとして、自然・環境・人にやさしいアパレルを提案している。


ポリ乳酸繊維-
自然・環境対応型の繊維


 人間はもともと、天然素材を利用し、環境に負荷をかけない方法で道具や商品を作ってきた。しかし、20世紀に入って、人口が増加し、需要が膨らむと、天然素材だけでは対応できなくなり、石油に由来する合成繊維が開発され、科学的な処理を施す量産の技術が導入された。素材・処理技術の両面で環境に大きな負荷をかけるようになってきたのである。これが環境問題の発火点である。
 その後、自然環境の破壊、温暖化などが進むにつれて、環境に負荷をかけない素材や生産技術が求められてきたが、10年ほど前から開発が進められてきたのが、トウモロコシを原料とするポリ乳酸繊維である。
 トウモロコシからデンプンなどを取り出し、発酵・乳酸化して繊維として活用するもので、製品寿命を終えた後、焼却しても有害ガスが発生せず、自然界に放置しても分解するため、環境にやさしい素材とされている。
 岡さんがなぜ、こうした素材を使うようになったのか。きっかけは、偶然参加したゴミ焼却場の見学会だという。
 「何も意識せずに参加したのですが、そこで見た光景はショックでした」と岡さんはそのときの印象を語る。


洋服大好き少女が…
清掃工場でのファッションショー


 長野出身で、母親が始めた洋裁学校の隣で成長した岡さんは、物心ついたら自然に服づくりと親しんでいた。「学校から帰って、洋服の絵などを描いていると、朝になるとそれが服になって出来上がっていました。母が、夜の間に作ってくれたんですね」。
 中学になると、見よう見まねで自分でも服を作るようになり、「修学旅行では、その自慢の服を"みんなに見せなきゃ…"と、1泊2日の旅行にバッグいっぱいに詰め込んで持参し、3回も着替えて、先生に叱られました(笑)」。子供の頃は、そんなエピソードもある洋服大好き少女だった。
 そんな岡さんが、母親の後を追って杉野ドレメに入学し、服づくりを学んで学校に戻る。学校で教えながら、生徒たちにデザインを教えたいと思うようになりロサンゼルスや東京のヘレン・ヒンギスなどでデザインを学び、再び戻って学校の教壇に立つ。
 自身もデザイナーとして作品を発表しながら生徒たちに教えて10数年、全日本ファッション大賞などを受賞し作品作りも順調だったが、「新しいデザインを求め、今年の流行色は…と追いかけて生地を買っては捨て、買っては捨てを繰り返している毎日。が、一方ではアフリカの子どもたちは口に入れるものもなくて飢餓で苦しんでいる。そんな現実を前にして、服作りとは一体なんだろうと行き詰まりを感じて立ち止まっていたときでした。
 参加している青年会議所の仲間たちとゴミ焼却場を訪問し、大量の衣料が捨てられているのを目の当たりにした。えっ、これが私のしている仕事の最終工程!?と思って、愕然としたんです」。
 そこで、華やかなファッションとゴミは"表裏一体"と感じた岡さんは、1994年ごみ焼却場でファッションショーを行う。なんと2000名もの観客を動員し、話題になった。


長野五輪の文化プログラムで
「Fashion for the Earth」ショー


 環境への関心が強まるなかで、新聞でポリ乳酸繊維の記事を読む。"こんな素材があるのか!"とさっそく記者を訪ねて生分解する繊維があると知る。「これを使えば、環境にやさしい服が作れるかも…」、岡さんのデザイナーとしての感性が反射的に反応する。
 とはいえ、それからが大変だった。紡績メーカーさんにお願いして糸から繊維を織るという難しい作業をやっていただき、何とか服がつくれるようになった。そして1998年、長野オリンピックの文化プログラム"Fashion for the Earth"のプロデュースを担当し、世界で始めて、ポリ乳酸繊維を使った洋服を発表する。
 「ポリ乳酸繊維は素材として欠点も持っています。融点が130℃と低いので、アイロンがけができない。しかしこの点を逆に活かせば商品化ができるはず…と失敗を繰り返す中で、苦難の末に見つけ出したのがシワ加工」。
 絞りのように自在に模様を生み出す方法を発見して、作品が日の目を見る。
 これが世界初、ポリ乳酸繊維を利用した㈱エコマコのブランドである。2003年、「Ingeoインジオ」と名づけられた、このポリ乳酸繊維を使い、ニューヨークでファッションショーをおこなう。今では、岡さんのコンセプトに賛同するファンも多く、日本橋三越新館などでも扱われるまでに成長した。


地産地消のカジュアルシルクブランド
「Japonica」


 デザイナーとして活躍する一方で、長野県内でブランドの立ち上げや、活性化などのコーディネーターとしても活躍する岡さんがもう一つ、素材として手がけるのがシルクだ。
 もともと長野は養蚕業の盛んなシルクの産地でもあったが、今では見る影もない。「産地がまったくなくなっているのですが、着物で培った高いデザインや加工の技術がある。全国の産地を回り、高い技術をもった職人さんがいることを知ったのも驚きでした。」
 シルクは、手入れが簡単で、しかも肌に優しい。何とかカジュアルに着られないかと岡さんが生み出したのが、30代以上の購買層を対象にしたジャポニカ(Japonica)ブランド。海外展開も意識しての名づけだ。
 こうして生まれた2つのブランドで作品を発表しながら、岡さんはOKA学園の校長として、後進の指導にも力を入れる。


「自らの人生をデザインする」をモットーに
コンテスト受賞者を輩出


 かつて長野県内に10数校あった洋裁学校もいまや2校。松本市内の1校とともに唯一長野市内に残っているのが、岡正子さんが校長を務めるこのOKA学園トータルデザインアカデミーである。生き残った理由は、「自らの人生をデザインする」をモットーに、単なる洋裁学校ではなく、デザインを教え、実務経験を豊富に体験させるインターンシップの機会を設け、生き方の指導もしているためだ。コースは以下の3つがあり、2年制の、
  • ファッション科(各15名)
    (1)ファッションクリエイターコース
    (2)ファッションスタイリングコース
  • デザインビジネス科(15名)
 があり、この上に、1年間の、
  • ビジネス専攻科(10名)
 がある。

 生徒指導には定評があり、ほとんどの生徒が各種のコンテストに応募し、全国ファッションデザイン大賞でグランプリを獲得する生徒も生まれている。
 校長としてだけでなく、自社ブランドを持った現役デザイナーが直接指導するという刺激もある。そんな岡さんの夢は「エコマコ、ジャポニカのブランドと学生たちを結び付けること」という。
 環境に焦点をあててデザイナーとして先端を走る岡さんを身近に見ながら、デザインを学ぶことができる学生たちはそれだけで得難い貴重な体験をしているはずだ。
 クリエイターと教育者という2足のわらじに時には悩みながら、どちらも100%の力を発揮しようと全力で疾走を続ける岡さん。そうした姿を近くで見ながら学ぶことができる学生は幸せかもしれない。


OKA学園トータルアカデミー
すぐ入ったところには、生徒のコンテスト入選作品などがたくさん飾られている。少人数での質の高い授業が伺える。 すぐ入ったところには、生徒のコンテスト入選作品などがたくさん飾られている。少人数での質の高い授業が伺える。
授業風景。立体裁断がおこなわれている。 すぐ入ったところには、生徒のコンテスト入選作品などがたくさん飾られている。少人数での質の高い授業が伺える。
 
授業風景。立体裁断がおこなわれている。
「最新の色、新しい感性…そんなものを必死で追っているときに、その横で大量の衣料品が捨てられている。私はいったい何をしているのだろうか…と疑問を持ちました」とエコデザインを手がけるきっかけを語る岡正子さん。
「最新の色、新しい感性…そんなものを必死で追っているときに、その横で大量の衣料品が捨てられている。私はいったい何をしているのだろうか…と疑問を持ちました」とエコデザインを手がけるきっかけを語る岡正子さん。
長野県庁の近く、街中とは思えない静かな環境にあるオフィス。
長野県庁の近く、街中とは思えない静かな環境にあるオフィス。
中庭は、忙しい仕事の合間を縫って手を入れるガーデニングが趣味の岡さんのもう一つの作品でもある。一角には染色の際の水洗いなどができるような水場が設けられている。
中庭は、忙しい仕事の合間を縫って手を入れるガーデニングが趣味の岡さんのもう一つの作品でもある。一角には染色の際の水洗いなどができるような水場が設けられている。
ポリ乳酸繊維の特長を生かしたecomacoブランドの商品。
ポリ乳酸繊維の特長を生かしたecomacoブランドの商品。
ポリ乳酸繊維の特長を生かしたecomacoブランドの商品。
デザイン室。ここでecomaco、Japonicaなどのブランドが作られるデザイン工房である。本縫ミシンのほかにダイレクトドライブ高速電子本縫千鳥縫自動糸切りミシンLZ-2290A-SSも使われている。
デザイン室。ここでecomaco、Japonicaなどのブランドが作られるデザイン工房である。本縫ミシンのほかにダイレクトドライブ高速電子本縫千鳥縫自動糸切りミシンLZ-2290A-SSも使われている。
デザイン室。ここでecomaco、Japonicaなどのブランドが作られるデザイン工房である。本縫ミシンのほかにダイレクトドライブ高速電子本縫千鳥縫自動糸切りミシンLZ-2290A-SSも使われている。
1998年長野オリンピック文化プログラム「Fashion for the Earth」。岡さんが世界に向けてエコフレンドリーなデザイナーとして名乗りを上げたファッションショーである。
1998年長野オリンピック文化プログラム「Fashion for the Earth」。岡さんが世界に向けてエコフレンドリーなデザイナーとして名乗りを上げたファッションショーである。

株式会社 エコマコ
業務内容:ポリ乳酸繊維を素材とした衣服ブランド「ecomaco」やシルクを使用したカジュアルファッション・ブランド「Japonica」などの企画・開発・生産
所在地:長野県長野市岡田町
TEL:026-224-5165
HP:http://www.ecomaco.com

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