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縫製研究所50周年(1)
<工場支援レポート>
意識改革とラインバランス改善、
ムダ取りで生産性を30%向上
総経理 塚原 淳さん
大同利美特(上海)有限公司
「今後は中国国内での高級スーツ需要増が期待され、馬鞍山工場の役割はますます重要になっていく。課題は生産性の向上」と総経理の塚原淳氏。
「今後は中国国内での高級スーツ需要増が期待され、馬鞍山工場の役割はますます重要になっていく。課題は生産性の向上」と総経理の塚原淳氏。

 1879年創業、130年の歴史をもつ紡績・染色・織布・整理・縫製の一貫製造・販売会社ダイドー・リミテッドさんは、1995年に上海に進出(中国会社名:大同利美特(上海)有限公司)。日本で培った生産技術のすべてを中国に移植して、同工場で"Brooks Brothers"などの自社ブランドの紳士・婦人服を生産してきた。
 そして、2001年には縫製部門の第2工場として安徽省に馬鞍山分公司を稼動させ、紳士スラックス、婦人上衣、紳士オーダメード、紳士上衣の生産を上海から順次移管している。
 今後、労務コストの面で有利な馬鞍山工場を生産拠点にする考えで、そのためにJUKI縫製研究所のノウハウを取り入れ、生産性向上に取り組んでいる。
ねらいは生産性向上で10%の利益増
3日間の診断で問題点が明らかに


 同工場の経営のキーワードは"領域・信用・効率"の3つ。領域は得意な繊維《羊毛》を縦軸とし、"牧場から小売り店頭まで一貫したクォリティメーカー"と定めている。信用は製品の《品質》。中国でのブランド認知度も高まりつつあり、経営をあずかる総経理塚原淳氏にとって、「残る課題は効率」とのこと。
 操業開始から13年を経過する上海工場は日本の技術を継承する段階から独自技術を開発する段階に踏み出している。一方、馬鞍山工場の縫製部門の生産効率はまだまだ。「労務コストが上海より安いが、生産性が低いので優位性が相殺されてしまう」(塚原氏)というのが課題だ。
 紡績や染色、織布、整理は比較的装置産業的な側面があり、労働コストが高い上海でもまだ競争力を発揮することが可能だが、縫製はそうはいかない。しかも同社の製品は熟練した多能工が作り上げるもので、馬鞍山工場の生産性向上は戦略的に重要な課題なのである。
 そこで、日本でも支援を受けていたJUKI縫製研究所のサポートで利益率10%向上を目指して生産性向上にチャレンジすることになった。
 まず始めに、2008年2月、11月に、班長、主任を対象にした研修会とOJTを開催した。大同利美特(上海)の服装生産部長で馬鞍山工場長を兼ねる呂群欣さんは「たいへん勉強になった」と振り返る。そして2009年2月には縫製研究所のスタッフが3日間かけて工場診断を実施。次長の王軍さんは「どこに無駄があり、生産効率を低めているのか具体的に分かった」と語る。
 工場診断の結果、パーツを探す・仕分けをする無駄、パーツの欠品、手待ち、工程間の運搬・移動、縫い直しの手戻り、お茶を飲むための離席…などがあることが分かり、その原因を分析すると、(1)仕掛品が多い、(2)作業バランスが悪い、(3)レイアウトが最適でない、(4)ルール徹底など作業者教育の不徹底…などが浮かび上がった(図表1)。

図表2 改善後のレイアウト。すっきりとラインも整理され効率的な流れができるようになった
図表2 改善後のレイアウト。すっきりとラインも整理され効率的な流れができるようになった
図表1 改善前レイアウト。パーツを探す・仕分けをする無駄、パーツの欠品、手待ち、工程間の運搬・移動、縫い直しの手戻り…などがあった
図表1 改善前レイアウト。パーツを探す・仕分けをする無駄、パーツの欠品、手待ち、工程間の運搬・移動、縫い直しの手戻り…などがあった


工場診断で問題点と
原因を分析


 問題点と原因が分かれば、後は改善に取り組むだけ。馬鞍山工場の最大品種、紳士スラックスのラインで、ラインバランスとレイアウト改善、仕掛品の削減に取り組むことになった。
 アイテムごとの工程分析は手間がかかるため、定番アイテムのみ工程分析を作り、あとは標準的なマスター工程分析を作成した。これで、新しい品番の工程分析作成の工数が大幅に削減できた。
 次に工程編成は、1枚流しとし、工程分析に合せて各パーツ・組立のグループ人員配分を行い、グループ別(後身・前身・前立・ベルトループ・組立)に生産量のバランスを取り、組立については、各人の作業配分を行ってラインバランスを取る。王軍次長が作成した作業配分によって班長が各作業者の担当を決める仕組みができ上がった。
 レイアウトも、受注ロットは平均300枚で、1日に1回は品番切り替えが発生するため、品番を切り替えても効率的に生産できるよう、柔軟なライン設計を行った(図表2)。ポイントは次の通り。
  • ムダな設備を排除→ 20台以上の設備を撤去
  • 設備は一番工数のかかる品番に合わせて決定
  • 各パーツ/ 組立のグループ別のレイアウト
  • 組立投入に近い場所にパーツ完成品をストック
  • 工程順の設備配置
  • スペースを必要最低限にして運搬距離を削減

ラインバランスとレイアウト改善を実施
意識改革で生産性30%向上


 最後に投入量を少なくすることで仕掛品を減らしていった。ポイントとしては、以下である。
  • 仕掛品置き場を決め、パーツ仕掛量を減らす
  • 先入れ先出し→仕掛品の取り置きのムダをなくす
 この結果、モノを探す・分ける作業、運搬・移動、作業待ち時間、応援作業、手直しがそれぞれ減少。作業の進捗管理がやりやすくなり、リードタイムが短縮された。
 紳士スラックスの生産数量は、今年1月~5月までで、20%向上した。さらに年末までにあと10%引き上げる目標を掲げている。
 今後の課題は、この成果を他のラインにも広げ、工場全体の生産性を引き上げることである。そのためには、工程分析から工程編成に至るノウハウ、スキルを班長に継承していくこと、作業員全員の意識改革が重要になる。
 上海と馬鞍山工場を合わせて縫製部門は約800人で、年間約30万点を生産している。製品は、60%弱が日本、40%弱が欧米への輸出である。今後は中国国内での高級スーツ需要増が期待され、その縫製基地として馬鞍山工場の果たす役割はますます重要になっていくだろう。
安徽省にある大同利美特 馬鞍山分公司
安徽省にある大同利美特 馬鞍山分公司

新しい工場内は明るく、整理整頓もしっかりおこなわれている。
新しい工場内は明るく、整理整頓もしっかりおこなわれている。


紳士服の工程に合わせてJUKIの各種ミシンも導入されている。
ベルトループ付けミシン LK-1902ASS
ベルトループ付けミシン LK-1902ASS

一本針本縫自動糸切りミシン DDL-8700-7-0B/CP-160/ターレット押え
一本針本縫自動糸切りミシン DDL-8700-7-0B/CP-160/ターレット押え

上下差動送りオーバーロックミシン MOR-3904-0E4-300/T039
上下差動送りオーバーロックミシン MOR-3904-0E4-300/T039

本縫自動玉縁縫機 APW-196
本縫自動玉縁縫機 APW-196
大同利美特(上海)有限公司
業務内容:紡績・染色・織布・整理・縫製の一貫製造・販売会社
工場:上海、馬鞍山
製品:"Brooks Brothers"などのブランド紳士・婦人服
従業員:縫製部門約800人

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