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縫製研究所では、工場診断、生産管理セミナー、プラント設計、書籍の販売、アタッチメント教室などの活動を行っています。
今回はお客様の工場を実際に訪問し、問題点から改善活動を行ったN社の事例をご紹介しましょう。
今回はお客様の工場を実際に訪問し、問題点から改善活動を行ったN社の事例をご紹介しましょう。
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<工場診断背景> 目指すは、生産性向上と短納期化 同社は中国系企業で、生産アイテムはスポーツパンツ(図表1)。今回訪問した東南アジアにある工場は稼動し始めたばかりである。進出した理由は人件費の安いこと。1ヶ月の給与が中国の約半分とのことである。同社にはIEが2名おり、加工賃や各ラインの出来高管理を担当していた。前記したように、生産システムはバンドルシステムで、1バンドルは10~15枚。これをヒモで縛って運搬する。 同社はこれまでも、2人のIEが生産性向上の努力をしてきたが、大きな効果が出ないという状況であった。短納期化についても同様で、具体的な改善策が分からず、現在は残業で対応しているとのことだった。 そこで、同社が抱える問題点を改善して欲しいとの依頼を受け、生産性向上と短納期化を目指して、同社にて4日間の工場診断を実施することになった。 <診断結果> (1) 加工時間 2047.6秒 (2) 余裕率 38.7%(日本平均 17.8%) (3) 編成効率 66.6%(目標値 85.0%) 1. 加工時間 - ムダな動作を明確にする 加工時間は、縫製工程(中間アイロン、手作業含む)の初工程から、最終工程までの全工程の時間値を計測する。この時間値で、作業がバランス良く割り振られているかどうかをみる。 また調査中に、オペレーターの取る、縫う、置くという動作にムダがないかも並行して調査する。 調査をしてみると、全てのオペレーターに共通したムダな動作があった。レイアウトはセンターテーブルを利用しており、ほとんどのオペレーターが身頃を右から取って、右に置く動作をしていた(図表2)。身頃を右から取ると、どうしてもミシン頭部が邪魔になり、針落ちまでの距離も長くなってしまう。工程の加工時間は、オペレーターのスキルに大きく左右されるが、実は、スキルの差よりも、オペレーターが行う動作のムダ、例えば取り置きの動作にムダが多い…などが作業時間の差に大きく影響しているのが実情である。 |
N社概要
総設備台数:1,500台 縫直人員数:900名 1ライン人員数:48名 作業時間:10時間(=8時間+残業2時間) 生産アイテム:スポーツパンツ 平均受注ロットサイズ:5,000枚 生産システム:バンドルシステム 給与形態:個人出来高制 平均勤続年数:3年
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2.余裕率 - 稼働分析で正確に把握 ラインの余裕率は"稼働分析"という手法で、仕事の中で付加価値を生む作業をしている時間と、付加価値を生まない作業を行っている時間の比率を把握する。同時に、付加価値を生まない作業を把握し、改善することで、稼働率を向上させる。同社で問題となったのは、製品整理、運搬、移動、作業待ちだった(図表3)。以下に、その原因を記載する。
編成効率とは、オペレーターの作業配分のバランスを指す。これは前記した全工程の加工時間が、オペレーターにバランスよく割り振られているかを示すもので、もし特定のオペレーターに作業が多く割り振られていると、そこが"あいろ工程(もっとも時間の長い工程)"となり、その工程に仕掛品が増えたり、ライン内に作業待ちが発生したりする。またライン全体の生産性は、あいろ工程の生産性に依存するため、あいろ工程がどこなのかを把握し、改善することで生産性向上が望める。同社のデータを見てみると、改善前のピッチダイヤグラム(図表4)の赤丸で記した「ウエストバンドステッチ」の工程があいろ工程になっていた。 |
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<現状の問題点と改善対策> データ把握こそが改善の原点 生産性を阻害している原因は、現状分析結果(加工時間、稼動分析、編成効率)から、以下の4つであることが分かった。 (1) 運搬、移動のムダ (2) 製品整理、作業待ちのムダ (3) 編成効率の低さ (4) 取り置き動作のムダ そこで、以下のような改善策を検討し、実施した。 (1) 運搬、移動のムダ改善策 ねらい:工程分析表を基に、モノをつくる順番に設備を配置し、運搬、移動のムダ削減を図る。 海外工場でレイアウトが工程順に並んでいるケースは少ない。その理由は、「運搬、移動といったムダに気づいてない」「レイアウト変更に時間がかかるためにやっていない」「運搬を専門に行う作業者がいる」という場合が多い。 今回の運搬、移動の比率は8.5%だから、1日(8時間)で運搬、移動に費やす時間は1人約40分になる。ライン全体(48人)では1920分(32時間)になり、これは4人が運搬、移動のみを1日行っているのと同じことになる。運搬、移動は付加価値を生まない作業であり少なくする(製品の運搬距離・人の移動距離を短くする)必要がある。これには工程順に設備を並べるのが効果的であり、改善レイアウト(図表5)では、運搬と移動の比率が8.5%から2.8%(図表6)へと改善できたのである。また、工程順に設備を並べることでどの工程に仕掛りが溜まっているか、どこまで作業が進んでいるかなどの目でみる進捗管理が容易になる。 (2)(3) 製品整理、作業待ちのムダ、編成効率の低さ改善策 ねらい:編成効率85%を目標に作業を再分配し、ムダな仕掛品を削減、作業待ちの減少を図る。 前述したように、編成効率が低ければムダな仕掛品が増加し、作業待ちといったさまざまなムダが発生する。図表7の改善後の作業割り振りは現場のIEや班長を交えて、オペレーターのスキルや設備台数、また工程の入れ替えや変更等の打ち合せを実施しながら作成したものである。この改善により、編成効率が66.6%から85.8%に向上し、作業待ちは5.8%から1.3%に削減することに成功した。 |
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(4) 取り置き動作のムダ改善策 ねらい:オペレーターの取り置き動作のムダをなくし、加工時間の短縮を図る。動作改善によって、加工時間が短縮され生産性が向上する。 改善レイアウト(図表5)を見ても分かるように、設備の向きを現状と逆にした。これによって、オペレーターは左側から身頃を取り、縫い終わったら左側に置くようになる。こうすることで、針落ちまでの距離も短くなり、ハンドリングもしやすくなる。 その他に、まだムダな動作をしている工程がいくつかあった。たとえば、脇アイロン工程(図表8)。最初に左の脇上部(腰脇)にアイロンをした後、身頃をずらし脇下部(脇裾)にアイロンをする。そして、右に返して、右の脇上部をかけ、ずらして下部にかける。1枚のアイロンかけを4回に分けて行っていたのである。 これを、アイロン台上を整理し、身頃をずらさずに左右各1回の計2回でアイロン掛けをできるようにしたところ、効果はすぐ現れた。それまで60秒の加工時間だったのが、改善後は35秒となり、約25秒も短縮された。その他いくつかの工程でも動作改善を行った結果、1着分の加工時間が2047.6秒から1870.7秒まで8.6%も短縮されたのである。 |
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<まとめ> データ把握の重要性 今回の改善活動によって、ライン編成効率は66.6%から85.8%へと改善された。19%ものムダが改善されたのである。その他の改善も合わせて、1時間当たり40枚だった生産量が、最終的には61枚に増大した。改善前後で比較すると、なんと、生産性は52%も向上したことになる(図表9)。 短納期化に関しては、生産量が向上したことに加え、ネック工程を含め作業の配分を変えたことでラインバランスが良くなり仕掛りが減った。また、今回は行っていないが移動ロットを少なくする(理想は組立工程1枚流し)、ライン規模を変更する、特殊ミシン等の特殊工程前の仕掛り管理をするなども計画されている。 このケースを見てお分かりいただけると思うが、上記でご紹介した改善の内容はどれも、どの工場でも当たり前に行われそうな改善である。縫製工場で働くマネジャーならば、データを提示されれば、だれでも問題点を把握し、対策を思いつくし、実施することも可能だろう。 しかし、こうしたムダは、多くの工場で現在もそのまま放置されている。なぜか、理由は簡単、「データで把握されていないから」である。事実を把握すること、現場の状態を目で見て判断できるような数字で把握すること、それが改善を行う基本である。 企業にとって「利益」の確保・増大は経営を継続するための根幹である。多くの工場では、そのために売上増大や生産性向上、コストダウンに努力をしている。 こんな中で、どうしても華やかな売り上げ増大に目が行きがちだが、売上げを増大させても、利益は売上高の中の利益率分しか増えない。改善によってコストダウンが行われると、そのコストダウンされた全体が、企業の利益となって残るのである。 工場経営の基本は事実の把握、そのためのIE手法はきわめて有効な手段である。作業研究、時間研究の活用をお勧めしたい。 また、その改善を恒久的なものにするためにも現場管理者の生産管理知識が必要となる。縫製研究所では、管理者教育のセミナーやプラント設計などの活動も併せて、縫製工場のソフト面でのサポートを実施しているので、是非ご活用いただきたい。 (縫製研究所 飯塚剛史) |
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