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WAVE - オーガニックコットン
"エシカル(倫理的)な素材"オーガニックコットン
日本の熟達のアパレル技術が素材を生かす
 
株式会社アバンティ 代表取締役 渡邊智恵子さん
 今年26回目を迎えた毎日ファッション大賞、2008年度は日本でオーガニックコットンの普及に取り組んできた草分けの(株)アバンティと大正紡績(株)が受賞された。過去の25回のうち24回はデザイナーが受賞しており、デザイナー以外で受賞するのは画期的なこと。オーガニックコットンの意味をアバンティ社代表取締役の渡邊智恵子さんに伺った。


古くて新しいエシカル(倫理的)素材
オーガニックコットン


 毎日ファッション大賞は、毎日新聞社が主催し経済産業省が後援する1983年に創設された賞で、今年で26回目。
 年間を通じてファッションという文化活動の中で最も優れた成果をあげた人(デザイナー、経営者、コーディネーター等)や企業、団体に大賞が与えられる。
 過去25回のうち、24回までが三宅一生、山本耀司、川久保玲さんなど、ファッションデザイナーに与えられている。その本賞を今年受賞したのが、(株)アバンティと大正紡績(株)の2社である。受賞理由は、日本のオーガニックコットンの草分けとしてオーガニックコットン(有機栽培綿花)素材の普及とファッション性と機能性を兼ね備えた商品で、地球環境に配慮したライフスタイル実現に貢献したこと。
 ファッション大賞の本賞がデザイナーを押しのけて素材会社に授与されるのは、それだけファッション業界にとって有機栽培綿花の意味が大きいことを示している。
 (株)アバンティの代表取締役が渡邊智恵子さん。渡邊さんは1990年頃からオーガニックコットンの生地の輸入を始め、いまでは原綿を輸入し、生地にして販売し、自ら製品も手がける。素材としてのオーガニックコットンを普及させてきたパイオニアである。
 このところ、アパレルの世界では新素材の開発競争が激しいが、その意味で、オーガニックコットンは、新しい素材ではない。ではなぜ、オーガニックコットンがこれほど注目されるのか。キーワードは、環境、健康、ナチュラルである。
 木綿は、貴重な素材として、古くから活用が進んできた。
 需要は多く、生産・加工の過程で効率が優先されるため、例えば、児童労働や、綿花の栽培の過程で使用される薬剤で多くの農民が被害を受けている…などさまざまな弊害が言われてきた。
 (株)アバンティの渡邊智恵子社長は受賞式で「オーガニックコットンはそうした弊害をなくしていく1つの方法です。犠牲の上にファッションビジネスが成り立つのは良くない。その意味で、オーガニックコットンは、エシカル(倫理的)なファッション、エシカルなビジネスを目指すものです」と語っている。
 1人の人間としての原点に帰って生き方を問いかける素材、それがオーガニックコットンと言ってもいいかもしれない。


"目からウロコ"の
オーガニックコットンとの出会い


 そもそも渡邊さんがオーガニックコットンを扱うようになったのは1990年。当時、双眼鏡やライフルスコープなどを手がける会社にいた渡邊さんは、仕事も順調に進み、趣味のゴルフにはまっていた。一時は毎日早朝にゴルフ練習に行き、自宅でも筋力トレーニングを行うほどののめりこみ方だったという。
 仕事でも、マーケティングを手がける子会社(株)アバンティを立ち上げ、事業も順調。そんなある日、知人のイギリス人メアリー平本さんから、「オーガニックコットンの生地があるから輸入してくれない?」と相談を受ける。
 そして、動物愛護家でエコロジーに関心を持っていた平本さんからオーガニックコットンについて説明を受けた。
原綿はテキサスの農場で3年間無農薬の有機栽培されたもので、有機栽培にかける農夫たちの思い、なぜ有機栽培なのか、薬物が身体に入ると外に排出されないからどんどん身体に蓄積されていく…などなど。
 それを聞いていた渡邊さんは、「趣味で利用するゴルフ場は化学肥料や農薬、除草剤を使うのが当たり前、40数年生きてきて、私は何をしてきたのだろうか、知らずにいたことが罪のように感じられた」と当時を述懐する。
 このときに感じたショックの大きさが、渡邊さんをオーガニックコットンにのめりこませる原動力になっているのかもしれない。
 運命的な出会いであった。
 話しを聞いてすぐに渡邊さんはニューヨークに飛び取引相手と面談、有機栽培の木綿生地の輸入を決める。速攻である。
 こうして生地を輸入し、販売をしてみるとどんどん新たな興味が生まれてくる。「ほかに生地はないの?」。
 こうなると、どんな素材なの、どんなところで、どうやって作られているの?と興味は尽きない。こうして渡邊さんは、とうとうテキサスの原産地までたどり着くことになる。


テキサス農場で知った
オーガニックな"生き方"


 オーガニックコットンはどのように作られているのか…気になったらとまらない。さっそくテキサス州農務省に電話すると、出てきた人が同州でオーガニックコットンの基準を作り推進してきたマネジャーのワイズマンさん。
 案内するから是非来てくれとの返事で出かけることに。
 当時テキサスの木綿栽培は、世界的に目安とされている「3年間、農薬や化学肥料を使わないで栽培された農地で農薬や化学肥料を使わないで生産された綿花」というオーガニックコットンの基準も2年前(1989年)に作ったばかり。農場での栽培もやっと軌道に乗り始めたところで、販路開拓がテーマになっていた。そこに理解ある購入者の渡邊さんがきたものだから、期待も大きく、大歓迎を受ける。
 栽培に携わるファーマーたちの「土地は神から借りたもの。それをきれいな状態で返すのが私たちの使命」など、しも聞いた。有機栽培に携わる彼らの思想に触れ、渡邊さんはこの素材の持つ意味を次第に深く受け止めていく。
 同時に、世界の農薬使用量の10%が耕地全体の2%に過ぎないコットン栽培に使われている、綿花栽培が大きな産業であるインドでは農地の5%の綿花栽培に農薬の50%が使用されているといわれている、200gのTシャツを作る過程で、150gの薬剤が使われている…などの情報にも触れ、ますますオーガニックコットンのもつ不思議な魅力のとりこになってゆく。


オーガニック素材を活かす
職人技


 こうして、生地の購入から原綿の輸入へと進み、国内で、糸・織り・編み・染色・デザイン・縫製・販売…の全プロセスに関わるようになっていく。
 原綿を購入し、糸作りから始めることになったが、問題は、原綿を生地にしてくれる紡績、撚り、織り。その会社を探すことが一苦労だったという。
 コットン素材は、農場で種やガク、茎を除いた綿花を大きな束で輸入。紡績工場に運び、そこで太い糸状に伸ばす。これを撚りながら何本かを束ねて細く伸ばし、何度か繰り返して細い糸にする。そしてこの糸を使って布地を織る。
 その後、染色、縫製加工…と進むが、どんなにいい原綿でも、その後の加工の仕方によってまったく違った生地になり、違った製品になる。オーガニックコットンの持つ、色、強さ、輝き、ナチュラルさ…を活かすためには、このプロセスも工夫と技が必要だ。
 国内から繊維の現場がなくなり、技術を持つ職人も少なくなっているが、そんななか、なんとか高度な手技を持つ工場を見つけて、北は山形県の米沢から南は愛媛県の今治まで、渡邊さんは工場を訪ね歩く。こうして、オーガニックコットンの加工をお願いする、職人を捜し当て、渡邊さんの原綿は生地として生まれ変わることになる。
  「日本の繊維産地が消えていくなか、技を持った職人さんたちが、見事な技で、オーガニックコットンを生地に仕上げてくださいます。合成繊維と違って自然素材のコットンは、手の加え方で仕上がりがまったく違ってきます。その微妙な違いをきちんと見分けて、しっかりと手をかけてくださる。その技のすごさに感動します」と渡邊さん。
 渡邊さんのオーガニックコットンは、いわば失われゆこうとしている日本の伝統的な技をよみがえらせる機会を生み出してもいるのだ。


消費者との連携を
目指して


 現在、渡邊さんのアバンティ社は、
  • オーガニックコットンの輸入販売、
  • 糸・生地の企画製造販売、
  • オーガニックコットン製品の企画製造販売
を行っている。独自の製品はPRISTINEのブランドで、新宿区大京町の本社一階の店舗でも販売しているほか、梅田および西宮阪急、恵比寿三越、松屋銀座、新宿伊勢丹、池袋西武などの直営コーナーでも販売しており、アイテムも豊富だ。
 環境にやさしいだけでなく、人の肌にも優しいオーガニック素材ということもあって、肌着やタオルなどの商品のファンも多い。特に赤ちゃん向けの商品は、健康に関心を持つお母さん方に人気だ。
 「オーガニックコットンを手がけて18年、これまでは原綿から生地を作るいわば作り手の輪を広げ、ネットワーク作りに力を入れてきました。今後は、使い手の消費者の方々とのネットワークを作っていきたい」と渡邊さん。
 パリで開催されている世界最高峰の繊維見本市プルミエールビジョンに2003年から選抜されて出展してきたが、今年は多くのバイヤーから「生地だけでなく日本で製品作りまでをやってくれないか」との依頼が相次いだという。
 「footprintという言葉があります。素材の生産から消費まで、ある製品がどのくらいの距離を移動したかを示すものですが、footprintを小さくするためには、日本の素材は日本で製品作りをしてもらう方がいい、ということなのですね。ヨーロッパの素材をアジアに持ってきて加工し、再度ヨーロッパに持ってくるよりも、日本の素材を日本・アジアで加工してもらったほうがいいという考え方です」。
 いま、環境と健康にやさしい素材オーガニックコットンに世界の注目が集まっている。
 日本の技術を活かした素材・製品を世界に届ける…渡邊さんの夢は、実現へと一歩ずつ近づいている。
「有機栽培の農場を見て、ファーマーの話しを聞いて、環境や健康についてまったく考えなかったそれまでの半生を後悔しました。目からウロコの体験でした」と渡邊智恵子社長。
「有機栽培の農場を見て、ファーマーの話しを聞いて、環境や健康についてまったく考えなかったそれまでの半生を後悔しました。目からウロコの体験でした」と渡邊智恵子社長。
テキサスのオーガニックコットン農場「3年以上農薬や化学肥料を使わないで栽培された農地で、農薬や化学肥料を使わないで生産された綿花」という厳しい基準も、このテキサスの農場から生まれた。
テキサスのオーガニックコットン農場「3年以上農薬や化学肥料を使わないで栽培された農地で、農薬や化学肥料を使わないで生産された綿花」という厳しい基準も、このテキサスの農場から生まれた。
摘まれた原綿から実やガクなどが除かれ、糸になり、撚られて次第に強くて細い糸になってゆく。
摘まれた原綿から実やガクなどが除かれ、糸になり、撚られて次第に強くて細い糸になってゆく。
摘まれた原綿から実やガクなどが除かれ、糸になり、撚られて次第に強くて細い糸になってゆく。
摘まれた原綿から実やガクなどが除かれ、糸になり、撚られて次第に強くて細い糸になってゆく。
摘まれた原綿から実やガクなどが除かれ、糸になり、撚られて次第に強くて細い糸になってゆく。
新宿区大京町にあるアバンティのショップ。オリジナルブランドのPRISTINE製品が陳列販売されている。
新宿区大京町にあるアバンティのショップ。オリジナルブランドのPRISTINE製品が陳列販売されている。
新宿区大京町にあるアバンティのショップ。オリジナルブランドのPRISTINE製品が陳列販売されている。
新宿区大京町にあるアバンティのショップ。オリジナルブランドのPRISTINE製品が陳列販売されている。

株式会社アバンティ
業務内容:オーガニックコットンの輸入販売、糸・生地の企画製造販売、オーガニックコットン製品の企画製造販売
所在地:東京都新宿区大京町31 二宮ビル
TEL:03-3226-7789
HP:http://www.avantijapan.co.jp

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