JUKI Magazine PageNavigation

JUKI Magazine Contents

WAVE
信頼感から生まれる高い技術力と誇り
中国からの研修生・実習生たちが
工場を運営
 
研修生・実習生を中心に5工場を運営。3年生→2年生→1年生…と順繰りに教えて、ほぼ研修生・実習生たちで糸などの発注までも含めて工場を運営するまでになっている。研修生・実習生を活用する同社のノウハウをご紹介しよう。
有限会社高田ソーイング
代表取締役 高田 一さん
専務取締役 高田順子さん
朋工場長 高田怜那さん
2人三脚で会社を運営してきた高田さんご夫婦。代表取締役高田一さん(右)と専務の高田順子さん(左)。
2人三脚で会社を運営してきた高田さんご夫婦。代表取締役高田一さん(右)と専務の高田順子さん(左)。
3人編成1チーム、5工場に45名
実習生を中心に工場を運営


 高田ソーイングのグループは、岐阜市内で5工場(長良、neat、朋、河村、シェルブ)を経営するが、運営の中心は、5工場で45名にのぼる中国からの実習生・研修生である。
  いまや、わが国のアパレル工場は海外からの研修生なしでは回らないといわるほど。そんな状態で、では、研修生がどのくらい活用されているかといえば、単にオペレーターとしてというのがほとんどだ。
  中国のアパレル工場では優れた班長が活躍している。それを考えれば、研修生の中から優れたリーダーが生まれて工場を運営するようになってもいいはずだが、日本ではなかなかそこまで育てられない。どうしてだろうか?
  研修生を採用している工場で、“中国人の研修生は厳しく管理しないといい仕事をしない”という声を聞く。そうした中で、この高田ソーイング高田一社長は、「研修生・実習生たちは技術力もあるし、自分たちで工場を運営できる。任せても大丈夫」という。
  この違いはどこから来るのだろうか?
  1981年に研修制度が生まれて以来、アパレル工場は多くの研修生を採用してきたが、研修生の活用法という面で考えると、ただ1点、“オペレーターとして縫製加工をこなしてもらう”ということでのみ語られてきた。
  研修生を導入して30年弱、そろそろオペレーター一辺倒から脱して、もう少しレベルの高い活用法を考えてもいいのではないか…そんな思いが高田ソーイングのケースを見ると生まれてくる。その意味で、多くの示唆を含んでいるように思う。


3年生→2年生→1年生と教育
活用のコツは研修生への信頼


 もともと高田さんは岐阜市内にあるアパレル工場に勤め、内職の集配業務を担当。3年間の経験を経て奥さん(現専務の順子さん)と結婚して25年前に独立し、オペレーター3人でスタートした。白木ミシンさんとはそれ以来の付き合いである。高田さんはもっぱら外回りで仕事を探す。高田さんご自身は縫製の経験はない。それだけに工場を経営してからの勉強が大変である。幼児用のお絵かき帳を使ったステッチの練習はこのときに生まれた同社オリジナルの研修法である。
 研修生の受入れを始めたのは14,5年前。オペレーターを採用したくても、若い人は集まらない。そこで、いくつかの工場と語り合って組合を設立し、研修生の採用を始める。一緒に仕事をするオペレーターは、自分の目で見て決めたいと、以来年に数回、研修生の採用や出迎えに工場までも行く。そこまで丁寧に対応する高田さんに研修生が信頼を寄せるのは当然かもしれない。
 会社は研修生の活躍で成長し、いまは5工場に45人。奥さんと、朋工場を担当するお嬢さんの怜那さんも加わる。


「一番いい車に乗ってほしい」
信頼から生まれる研修生のプライド


 「研修後に2年間の実習がありますが、ウチでは3年生が班長になり、3人1班で編成。3年生が2年生を教え、2年生が1年生を教えるという具合で、班の運営も中国人たちに任せています」と社長の高田一さん。仕事は高田さんが工場にあわせて振り分ける。問題があれば相談に乗るが、仕事は目標を決めて、基本的には研修生たちに任せる。信頼が、研修生たちの自主性を生んでいるのだろう。
 「あるとき、研修生から、『社長は何の車に乗っていますか』と聞かれたんです。なぜ?と聞くと、『私たち稼ぐから、一番いい車に乗ってほしい』というんですね。
 彼女たちのプライドだろうと思いますが、そういわれたときはうれしかったですね」と高田さん。
 この信頼、ただ、任せるだけで生まれたわけではない。たとえば、オペレーターがメンテナンスをせずに使っていてミシンのモーターを焼きつかせてしまった。補修費用15万円、オペレーターに請求書を出して徴収する。集めた金はしかし、お菓子や洗剤などを購入して戻す。工場が汚れれば掃除を外部に依頼し、班に請求書を出す。
 自然に自分たちできれいにするようになる。工場の整理整頓が行われているのはそうした結果でもある。


残業なし。定時で仕事は終了。
「ニットは手がけない」


 研修生たちは残業をやりたがるという話をどこの工場でも聞く。しかし、ここでは残業はない。仕事は定時で終わる。毎日目標数を決めてそれが終われば終了だ。余った時間、研修生たちは裏の畑で野菜作りに精を出す。
 ご他聞にもれず2月、5月に閑散期がある。対策としてニットを手がけては…という思いで2本針オーバーロックミシンを導入し、ニットへの進出を模索している。が、研修生たちは、「ニットはやめよう」という。自分たちが保有している技術は、布帛製品でいい仕事ができるはずだ…という技術力に対するプライドである。
 「アパレル工場は、少人数では売り上げも少ない。数を増やさないと経営は苦しい」と高田さんはまだ拡張の可能性を考えているが、組合の理事長と社長を兼務する高田さんに代わって、会社の経営や工場管理には専務の順子さんに負担がかかる。
 中国研修生との信頼でつながった新しい工場運営は、今後のあり方を示唆するものといえよう。
お嬢さんの高田怜那さんが朋工場を担当するようになっている。
お嬢さんの高田怜那さんが朋工場を担当するようになっている。
長良工場の裏庭は家庭菜園。高田さんも手がけるが、ほとんど研修生たちが担当。見事な野菜が育っている
長良工場の裏庭は家庭菜園。高田さんも手がけるが、ほとんど研修生たちが担当。見事な野菜が育っている
長良工場の裏庭は家庭菜園。高田さんも手がけるが、ほとんど研修生たちが担当。見事な野菜が育っている
ほぼ実習生・研修生により自主的に運営されている工場だが、糸などもきれいに整理されていて5Sが行き届いて質の高さがよく分かる。
ほぼ実習生・研修生により自主的に運営されている工場だが、糸などもきれいに整理されていて5Sが行き届いて質の高さがよく分かる。
ほぼ実習生・研修生により自主的に運営されている工場だが、糸などもきれいに整理されていて5Sが行き届いて質の高さがよく分かる。
手がけるのはブラウスからコートまで、難しい仕事も来るが、実習生、研修生たちは前向きに取り組み評価も高い。
手がけるのはブラウスからコートまで、難しい仕事も来るが、実習生、研修生たちは前向きに取り組み評価も高い。
白木ミシンの白木勝之さん。「創業時代、資金がない状態で、ずいぶん白木さんにミシンを融通していただきました。今あるのは白木さんのおかげです」と高田社長の信頼も厚い。
白木ミシンの白木勝之さん。「創業時代、資金がない状態で、ずいぶん白木さんにミシンを融通していただきました。今あるのは白木さんのおかげです」と高田社長の信頼も厚い。

有限会社高田ソーイング
創業:平成3年
所在地:岐阜県岐阜市長良
社長:代表取締役 高田 一
生産アイテム:婦人ブラウス、ジャケット、コートなど

JUKI Magazine PageNavigation