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スーツの挑戦
クラシコイタリアのテーストを生み出す
中間プレスを多用した縫製技術で、
着やすく丸みのある服作り
AOKIのファーストブランド「ベルモーレ」を手がける荘内スーツさん。風合いと着心地を優先した、工程数をかけたていねいな服づくりの高い技術力で知られる。
荘内スーツ株式会社 常務取締役企画部長
山根義人さん
「私たちは自社の技術と品質を保つため、国内生産を続けてきました。長く着るほど感じられる上質感や着心地が私たちの服作りの狙いです」荘内スーツ株式会社常務取締役 山根義人さん
「私たちは自社の技術と品質を保つため、国内生産を続けてきました。長く着るほど感じられる上質感や着心地が私たちの服作りの狙いです」荘内スーツ株式会社常務取締役 山根義人さん
昔ながらの作り方を継承する
マシンメード紳士スーツの先駆者


 日本の縫製技術の高さはつとに知られ、多くの世界のブランドが日本で作られているが、どういうわけかスーツに関しては日本の技術力があまり評価されていない。技術力がないのかといえば決してそうではない。日本に指導に来た一流のイタリア人モデリストたちが指導し、結果として技術力に太鼓判を押す工場もいくつかあるのだ。技術がないのではない。評価されていないに過ぎないのだ。
 国内で高く評価されているスーツメーカーの一つがこの荘内スーツ株式会社である。
設立は1973年(昭和48年)。スーツメーカーとして知られる三東グループの8社11工場の最後の工場として設立された。
  設立に当たっての狙いは、“紳士服をマシンメードで作る”であり、同グループとしてメンズスーツをマシンメードで手がけた最初の工場である。きわめて実験的な試みとしてスタートし
たため、イタリアンクラシコの風合い、着心地を実現するために研究を重ね、中間プレスを多用した手のかかるスーツ作りのプロセスを完成した。
「工程数は250 ~ 300、自然な風合いとラインを作り出すために、10回以上の中間プレス工程を入れています。昔の作り方をそのまま踏襲しています。なので、手がかかります」と同社常務取締役企画部長の山根義人さん。
  高い技術力をうわさに聞いて多くの人が見学に来るそうだが、皆さんその作り方に驚くという。特に昔を知っている人は、こうした丁寧なつくりがいいことは分かっていても生産性を優先すると、こうしたものづくりはできないことを知っている。それだけにこの工場のすごさを改めて知ることになる。


独自に販促を開拓
AOKIとの付き合いが始まる


設立以来、ロッキンガムグループで販売を行っていたために、販売の経験は全くなかったが、昭和59 年頃にロッキンガムグループを離れて独自に販売を任されるようになり、いわば独立。
仕事が薄い時期もあったが技術力に定評があるだけに、仕事は途切れずに続く。「御付き合いするアパレルが、技術力のある工場……と宣伝してくれるために、お客さんからお客さんへとつながり、最盛期は従業員500 人で年間22 万着を手がける有数の工場になっていました」(山根さん)。
  そして昭和61 年、ある御世話になった方からの紹介で、AOKIからの依頼が舞い込む。同社としては、すでにデパートなどの仕事が十分にある。だから余り増やしたくない。「最初は端境期にでも入れようと思って、年産3000 着でお受けしました。すると、AOKIの社長さんが長野からすぐに工場にやってこられた。それまでの御付き合いをしていたところで社長さんがわざわざ工場を見に来るということがなかったので驚きました」と山根さん。
  そんな調子で、はじまった仕事は2年目になると1万着に増える。AOKIとしても拡大するために信頼できる工場を求めていたところ技術力のある同社を知り、これこそパートナー…と思ったのだろう。同社としては、ちょっと待ってください、忙しくて1万着は入りません…と言いたいところだが、相手の真剣さに断れない。こうして同社とAOKIの連携が始まることになる。


時代に流されないものづくり
違いが分かる大人のスーツ


AOKIが同社に見たのは、海外・国内の一流ブランドを一手に扱う縫製会社として創業当時から「品質第一」をポリシーに揚げてきたそのガンコさと技術への信頼である。結局、同社はAOKIのファーストブランド「ベルモーレ」を一手に任されることになるが、山根さんはこれについて、「近年はコスト削減のために他社が次々と海外へ業務委託をしていますが、私たちは自社の技術と品質を保つため、国内生産を続けてきました。そのスタンスが日本でのモノづくりを大切にしたい、というAOKIさんの考え方と合致し、現在ではファーストブランド「ベルモーレ」の生産をほぼ100%任されています。AOKIさんが私たちに自社ブランドの最高峰を預ける理由は、やはり仕事の丁寧さ、技術の高さ、そこから生まれる品質の高さにあるのでしょう。
  生きている原反を一本ずつ丸筒に入れて寝かせること、縫製の難しいフル毛芯で強くしなやかに仕立てること、縫い目に絶妙な緩急を加えて美しく成型すること、体になじむ丸みを作るため中間プレスを10 回以上もかけること、いくつもの手間の積み重ねで、200 ~ 250 の工程で終えるところを私たちは約250 ~ 300 工程をかけ、型くずれせず着用感のよいスーツを
作り上げています。ハンガーにかかっている時には分からない、長く着るほど感じられる上質感や着心地のために…という私たちとAOKIさんの共通の信念が、最高のスーツを誕生させる原動力になっています。」と語っている。


ベトナムへコストより技術伝承で進出
大きいAOKIとの連携


日産400 ~ 500 着になったあたりで、AOKIから、そろそろ海外に進出しないか…との話が来る。できれば量やコスト確保ではなく技術移転をしたい、検討を加えた結果、中国ではなくベトナムを選択、2001 年に工場を建設し、2002 年から稼動する。
  技術移転が狙いなので、量もセーブし、余り増やさないとの方針を守り、7年目の現在も、400 人で日産350 着を作る。
当初から、研修生を日本に派遣して技術を学ばせており、すでに70名が日本での服作り技術を学んだ。技術移転は見事に成功し、いま、第2工場が稼動する。
  酒田にしても、ベトナムにしても、こうした落ち着いたペースで工場を育てることが出来るのは、アパレルとの連携という環境があるからだ。アパレルとしてはよい服作りを実現する高い技術力を求め、工場としては高い技術が発揮される仕事を求める、お互いの思いが1 つのベクトルになって、良い商品が生まれ、さらに技術力が上昇していく…。
  ベトナムで技術が根付けばやがてグローバルな展開も視野に見えてくるはず…そんな期待を抱かせる見事な連携である。
酒田にある本社
酒田にある本社
工程のあちこちにアイロンがあり、使用頻度は高い。
工程のあちこちにアイロンがあり、使用頻度は高い。
原反は1本ずつ丸筒に入れて保管する。余分なストレスをかけない…気遣いが最終的に製品に生きる。
原反は1本ずつ丸筒に入れて保管する。余分なストレスをかけない…気遣いが最終的に製品に生きる。
うつくしい丸みを帯びたライン。中間でのアイロンが見事に生かされた風合いの仕上がりである
うつくしい丸みを帯びたライン。中間でのアイロンが見事に生かされた風合いの仕上がりである
CAD、パターン室。
CAD、パターン室。

荘内スーツ株式会社
創業:1973年(昭和48年)
所在地:山形県酒田市市条
社員:230名
生産アイテム:紳士スーツ

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