JUKI Magazine PageNavigation

JUKI Magazine Contents

スーツの挑戦
素材~縫製まで
一級の商品を生む力が日本にある
素材からの一貫した技術開発と企画力で
新しい方向を生み出す
最近スーツ市場がにぎやかだ。
リクルートから始まった若者向けのスーツが一つの市場を形成し、他方では清涼スーツなど新たな素材開発も活発に行われている。
長い間、海外ブランドに対して劣勢が続いていたスーツの世界で、日本製の付加価値も認められ始めている。
新たなスーツの挑戦が始まっている


マーケット・消費者の変化

 スーツが導入された明治維新以来、スーツに関して、多くの日本人は「仕事着であって、本来の自分が着るものではない」そんな借り物意識を底流で感じてきたのではないか。

欧米産スーツ=本場もので優れていて、
国産スーツ=模倣品

 という思いの底にこうした意識があるような気がする。
 欧米産のスーツは欧米人の体型に合わせて作られているためスーツの袖丈が長い。かつて、舶来品礼賛者たちが、袖丈の長い輸入スーツをありがたがり、さすがに本場のスーツだと喜んでいた…そんなエピソードも、こうした思いを表すものであろう。
 しかし、ここ4,5年の動きを見ると、若者向けの新しいタイプのスーツファッションが育ち始めており、専門店も誕生している。そうした新しい消費者世代は、それまでの世代が感じていた「借り物」の呪縛から解かれて、自らに合った着心地、ラインでスーツ、ジャケットを選択したいという意識を持った、新しいタイプの消費者が生まれてきたと見ることができるのではないか。


若者が生み出す独自の
スーツの世界


スーツの挑戦 リクルート用のスーツを出発点として、最近では若者用のスーツという一つの分野がうまれてきている。マーケットを見ても、中高年用の中心的なマーケットである量販店と別に、若者向けのスーツ、シャツ店が生まれ、しっかりと市場を形成している。
 スーツに対してある種の引け目を感じながら、与えられたものとして選択してきたかつての中高年とは別に、スーツというものを独自の感性で選択しようという新しい世代が誕生してきたということができるのではないか。
 世界が注目する原宿のストリートファッションを生み出した世代の、いわばスーツファッションと言っていいと思う。
 スーツがやっと日本という国土、文化に寄り添って地に足をつけて、日本人用の着衣として歩み始めた…そんな感じがする。
 日本産業界は、後発ながら自動車を開発し、いまや世界一の乗用車販売量を誇るまでに至っている。当初、技術力も劣り、品質的にも安定しなかった日本製の自動車が、改良を重ねるうちにやがて技術力をつけ、いまや日本の自動車がハイブリッドカーなど、基本的なエンジンの分野で欧米をしのぐ付加価値の高い技術開発を実現するようになっている。


使い手と作り手はパートナー
消費者の高い意識が良い商品開発の源


スーツの挑戦 こうした成功の背景を見ると、いくつかの要素があげられる。
 たとえば、
  • ものづくりの分野で常に高品質化を目指して改善を繰り返してきたこと
  • 消費者が商品の価値を理解し、メーカーに付加価値の高い商品を求めてきたこと
  • 技術力のない段階から、各技術レベルで独自機能の開発に努めてきたこと
…などであるが、最大のポイントは、
  • 消費者が自動車を正しく評価し、求める機能を明確に表明してきたこと
である。
 消費者とメーカーの関係は、共通の利益を持つ重要なパートナーである。消費者がスーツを正しく理解し、品質・付加価値・デザインなどの面で厳しい要求をメーカーに突きつけることで、メーカーが発奮し、開発を目指す。消費者が正しい要求をしない限り、メーカーは市場のニーズを誤ったり、間違えた方向に進んでしまう可能性があるのだ。
 メーカーにとっては消費者の教育は、自分たちが成長するためにも不可欠なのである。その意味で、スーツに関する正しい消費者教育がスーツの発展に必要なのかもしれない。


素材からの一貫した
技術開発と提案を


 いま、原宿のストリートファッションが世界の注目を集めている。
 これは日本の若者が生み出すファッション感覚が世界の若者に認められているということでもある。そうした日本の若者が生み出した新しいスーツファッションの先に、世界に向けた日本発の新しいスーツファッションが生み出される…簡単に実現するとは思えないが、将来的に見れば可能性は大いにあるといえよう。
 日本のものづくりの質の高さと緻密さはアパレルの世界でも知られるところであり、課題は素材からの一貫したものづくりの技術開発、デザイン提案であろう。パリで活躍する日本人デザイナーも少なくないことから、新しい日本発のスーツ提案が生まれることを期待したい。

JUKI Magazine PageNavigation