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FBの活性化へ本格化する総合的な人材育成
モノづくりから事業戦略まで、生きたビジネスを体験
大学“経営学部”が始めた新たな実践的人材育成
少子化の時代になって、大学は生徒の確保にさまざまな新しい試みを始めている。その一つが大阪産業大学経営学部が創設した「アパレル産業コース」だ。同コース本部長の重里俊行教授に女子限定の新しいコースのねらいを伺った。
 
大阪産業大学 理事・経営学部長 重里俊行
「服の製作から販売までを体験することで、アパレルのプロセスを熟知したゼネラリストを育成したい」と経営学部にアパレル産業コースを設置した同学部長でアパレル産業コース本部長の重里俊行教授。
「服の製作から販売までを体験することで、アパレルのプロセスを熟知したゼネラリストを育成したい」と経営学部にアパレル産業コースを設置した同学部長でアパレル産業コース本部長の重里俊行教授。
現場密着の実践的な教育をめざす
実学重視で資格取得も強力に支援


 「これまでの大学の教育は、黒板とチョークで、過去に蓄積された先人の遺産を机の上で教えている、いわば“いま”を反映していない形骸化されたところがありました。しかし、いまはそんな時代ではありません。実践の伴わない“お勉強”は通用しません。
 このアパレル産業コースは、これまで必要性が喧伝されながらどこにもなかったファッション業界の実践的な人材の育成を目的に開設しました。若い人たちの感性を実際の業務の具体的な場面で生かせるように、設備も一流のものを集めモノづくりをベースにした経営学を学んでもらうものです」とおっしゃるのはこのコースの発案者で開設準備から運営を一手に引き受けて進めている同大学理事で経営学部長の重里俊行教授。
 1965年設立の実学重視で知られる同大学が経営学部に、入学は女子限定、アパレル産業の実践的な専門家を育成するとして創設した「アパレル産業コース」は新しい試みとして業界に大きな話題を呼んでいる。高校生たちからの人気も高く、募集した25名を大きく上回る40名が入学した。
 かつて狭き門といわれた大学も、少子化が進み、逆に学部さえ選ばなければ希望者は全員が入学できる状態になった。
 それだけに大学にとって生徒が集まるかどうかは経営を直接左右する大きな課題であり、各大学は生徒集めにしのぎを削っている。そんな中で、大阪産業大学が行った一つの試みがこのアパレル産業コースの新設である。


実践が基本という常識からスタートし
モノづくりから事業戦略までを学ぶ


 女子学生限定…としたのは、もともと男子学生が多い同大学に、女子を招くことで男子をもっと呼び寄せようという狙いもある。
 そうした戦略的な遠謀はともかくとして、学問的な研究より実践が重視される経営学の分野で、実際にアパレル製品のモノづくりをはじめとして事業戦略・企業戦略まで生きたビジネスを学ばせようという同校の狙いは、まさに革新的といってよい。
 「服装専門学校やドレメと違って、育成するのはアパレルの専門職ではありません。卒業後は、アパレルやファッション業界で、ブランドクリエイターやセールスマネジャー、ブティックの経営者、ファッションコーディネーター、バイヤー、マーチャンダイザー、スタイリスト、ファッションディレクター、プロモーターなど、モノづくりの現場を知る人材育成です」(同)。
 そのために「生徒たちには、実際にアパレル製品をデザインし、縫製して作り上げ、販売まで体験してもらいます。1年目で、既にジーンズを作り上げ、さらに付加価値を高めるために刺繍を入れよう…というアイデアまで出ています」と予想外の学生たちの積極的な学びに、重里先生も確かな手ごたえを感じているようだ。


実習スペース「アパレル・ルーム」に
CADから各種ミシンまでを完備。


 ものづくりの作業自習が重要なカリキュラムを占めるアパレル産業コース用の実習スペースとして、重里先生が用意したのが、経営学部がある本校14号館10階のアパレル・ルーム。デザインパターンセクション、サンプル縫製セクション、刺繍セクション、ジーンズセクション、インストアセクション…と5つのコーナーのほかに、撮影用のスタジオも用意されている。作成したサンプルをいかに“商品”として仕上げ、アピールするか、そこまで生徒のファッションビジネス展開のセンスを育成しようというのが、このコースの特徴でもある。“できるプロ” …それが卒業生のイメージである。
 上記各セクションに置かれた設備はいずれも一流。例えば、ミシンでいえば本格的な工業用のミシンで、本縫自動糸切りミシンDDL-9000をはじめ、電子閂止めミシン、2本針本縫ミシン、4本針環縫ミシン、ユニオンスペシャルダブルラップシーマーのほかに、刺繍機、CAD、プロッター…などを用意し、生徒たちにこれを自由にいつでも使えるように提供する。生徒たちがのぞめば、授業の中だけでなく、自由意志でファッションアイテム作りを行うことができるようにしている。
 しかしながら、このコースの狙いは、服作りのプロを育成することではない。あくまでも、アパレル製品を扱うビジネスのプロを育成することにある。それが経営学部にあることの意味である。


社会に送り出す前の“訓練場”
マナー、リーダーシップを育てる


 「1年生では縫製の基本を教えます。製作物としてはタイトスカートやシャツブラウス、ワンピース、後半にジーンズ、スカート、ズボン…などがプログラムに入っています。こうしたものを作りながら服作りの基本を知ってもらおう…という狙いですが、生徒たちは、学校に入学して勉強をしているというよりも、仕事の現場に入ったという気分になるのではないかと思います」と重里さん。
 というのは、教えるというプロセスの中に、さまざまな工夫がされている。例えば、製作物によっては、一般のアパレル工場での生産ラインのように10人ぐらいのグループで1着を仕上げるという仕組みになっていて、グループ作業を進める過程で、リーダーシップやチームワーク、コミュニケーション…などをたっぷり経験し、学べるようになっているのである。
 こうしたユニークで新鮮な趣旨に共鳴して、多くの企業も積極的に協力を申し出てくれる。「ジーンズの素材メーカーに、サンプルを教材として欲しい、と申し出たら、即座に実物見本のセットを作って送ってくれた」そんな話もある。
 中国や海外アパレルに押され気味で、出口の見えないアパレル業界に突破口を開くのはこうした新しい試みからかもしれない。期待したい。
大東市にある大阪産業大学。
大東市にある大阪産業大学。
新設のコースだけあって、設備も充実。工業用ミシンが各種そろっている。
新設のコースだけあって、設備も充実。工業用ミシンが各種そろっている。
ジーンズ製作用にユニオンスペシャルのタコ巻きダブルラップシーマー135800がある。
ジーンズ製作用にユニオンスペシャルのタコ巻きダブルラップシーマー135800がある。
CADと液晶画面、プロッターがある。
CADと液晶画面、プロッターがある。
撮影スタジオも完備。
撮影スタジオも完備。
アパレル・ルームでは常に誰かが製作をしている。アパレルのサンプルづくりのような雰囲気である。
アパレル・ルームでは常に誰かが製作をしている。アパレルのサンプルづくりのような雰囲気である。
生徒たちの製作のために集められたシマウマの一枚皮革。衣料にバッグに……さまざまな利用法がある。
生徒たちの製作のために集められたシマウマの一枚皮革。衣料にバッグに……さまざまな利用法がある。

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