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創業―アパレルを活性化する新しい風
国内経済の復活によって、史上最高益を更新する企業が増えている。
求人市場もかつてないほど活況を見せている。一方、中国経済は急激な膨張のひずみが
目立つようになり、中国に進出していたアパレル企業も国内回帰を検討し始めている。
そんな中、アパレル業界にちょっとした変化が起きている。アパレルで起業する人が増えているのだ。
国内アパレルの活性化に向けた、“新しい風”が吹き始めている。
変わるアパレル売り場
じわりと押し寄せる変化の予兆


 アパレル売り場に少し活況が見えてきたという。長い間、中国産の低価格製品に押されて縮小一方だった国内のアパレル製品に、生き残りへの光明が見えてきたといってもいいかもしれない。アパレル活性化に向けて“春一番”の到来を予感させる。
 国内繊維工業のデータを見ていただこう(図1)。国内アパレルの統計だが、長く低迷していた生産・出荷額が、昨年暮れから今年にかけてともに上昇に転じ、逆に在庫が減少している。しかも、わずかだが高付加価値商品へとシフトする傾向が見えるという。
 図2は国内で販売された衣料品の輸入比率である。数量ベースで見ると国内で販売される衣料品の輸入比率は90%(金額ベースでは50%)に達しようとしているが、しかしその増加率はここ何年か鈍化し続けて、対前年比で見ると、増加率は1%台にとどまっている。金額ベースで見ても必ずしも中国製品が増大しているというわけではないのだ。
 百貨店の現場でも少しずつだが高級品の比率が増える傾向にあるという。わずかだが衣料品の世界で国内製品が自己主張できる余地が生まれてきている。

図1 平成19年繊維工業の推移(平成12年(2000年)=100)
図1 平成19年繊維工業の推移(平成12年(2000年)=100)
図2 国内で販売されるアパレル製品の輸入比率
図2 国内で販売されるアパレル製品の輸入比率

アニメ顔の新キャラクターマネキン
アパレル活性化への予感


 最近、子供服売り場を覗いたことがありますか?子供消費財は時代を映す鏡でもあり、マーチャンダイザーは、おもちゃなど子供売り場を定期的に視察する習慣をつけているといわれる。
 もう一つの大きな変化は、じつは子供服売り場でおこっている。最近、子供服売り場の雰囲気が、変わり始めているといわれているが、その原因は、子供売り場にアニメ顔のマネキンが立つようになっているのだ。
 作っているのは中堅のマネキンメーカー平和マネキンで、元々はパチンコ店でのイベントやデモ展示用に作られたものだが、改良が加えられて、子供服売り場にも少しずつ使われるようになっているという(写真)。
 アニメのキャラクターは3頭身半などという極端なプロポーションをしているが、洋服売り場のマネキンは、きちんと販売する製品を着せ付ける必要がある。そのために、プロポーションも改良が加えられた。手塚治虫以来の、目のなかに星がキラリと輝くアニメ顔は実際の人間が着る洋服に合うのかという声もあるが、アニメのキャラクターが着ているような服が欲しいと店に駆けつける若いアニメ世代ママもいるといわれるなかで、彼女たちには違和感がないようだ。
 いずれにせよ、こうした新しいマネキンが店頭の雰囲気を変える大きな力になっていることは間違いない。アパレルの売り場にも静かに変化が起こりつつあるのである。


大手が日本国内での生産を見直し
産地との連携強化を目指す


 1960年代から、国内アパレルのモノづくりは、より安価な労働力を求めて中央から地方へ、国内から海外へと移動してきた。この間、IT技術の発達により流通は飛躍的に改善され、中国に代表される海外生産のリードタイムが短縮化されたことで、ものづくりの海外展開は一気に加速した。
 これは、そのまま産地の崩壊を促し、伝統的な産地の持つ情報力や技術の集積……という基盤を失わせる結果となってしまった。
 図3は、中国からの衣料品を世界のどの地域がどのくらい輸入しているかを比べたグラフだが、クオーター制度見直し後のアメリカが増えているが、それでも日本は中国製品をもっとも輸入している国だ。
 こうした状態の中で、最近、大手アパレルが国内回帰を始めている。空洞化した産地との連携を強化し、情報共有や技術指導をベースに、国内生産を見直し始めているのである。
 コスト低減のため、海外生産を拡大した結果、国内産地が空洞化して、国内生産のメリットであったはずの短納期生産や高付加価値製品作りができなくなり始めている……という危機感によるものだ。


平和マネキンのアニメ顔「きゃらもあ2」
平和マネキンのアニメ顔「きゃらもあ2」
図3 中国の地域別アパレル製品輸出比率
図3 中国の地域別アパレル製品輸出比率
アパレルで会社を起こす
新創業を支援する制度も充実


 こうした地滑り的な変化が進む中で、このところ、アパレル業界で新しく創業するケースもまた増えている。
 本号で紹介する八千代銀行の創業支援制度「ドリーム・ナビ」などに代表されるような新たな創業支援の制度が作られていることも一因だが、それ以上に、これまでになかった新しいデザインや企画で、停滞するアパレル業界を変えたいという熱い思いによる創業が増えているのだ。
 中国産の低価格品の購買が一巡して限界も見え、国内の消費者の目は高付加価値商品へシフトし始めている、その結果が新しいアパレルビジネス誕生への要因になっていると思われる。本号では、

・福島で高付加価値のニット製品作りをめざす「リュウ・コンセプション」
・文化服装から新しいコンセプトのデザインで起業を目指すEDING:POST
……の2つと、
・ラフォーレ原宿への出店者を支援する八千代銀行「原宿ドリーム・ナビ」
をご紹介する。

 これ以外にも、「成熟した業界こそ新規参入のチャンスがある」と紳士服のオーダー店舗を創業し、2年目で月商350万円を売り上げた吉田スーツ(国分寺)、浴衣の貸衣装を採用して貸衣装の体験のない若い顧客の囲い込みに成功したレンタル衣装店「藍や」など、新しい視点で創業するケースも多い。
 低価格化の影響をうけて大きく収縮した日本のアパレルに、やっと新たな胎動の予兆が生まれてきたといってもいいだろう。
 かつてわが国アパレル業界が生き残るキーワードとして、「日本品質」ということが言われたが、短納期、高付加価値、こだわりのモノづくり……という日本品質を基本にした新しいアパレルの時代が、いま、来ようとしているのかもしれない。

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