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本格化してきた中国アパレルの内陸部への移動
注目集める安徽省・四川省のアパレル工場
中国を訪れるたびに、「沿岸部の人件費が上がってアパレル工場の経営は苦しい」「沿岸部と内陸部の格差是正には内陸部への工場移転が必要だ」……そんな声を聞いてきた。これまで余り進まなかったそうした動きが、ここに来て急激に顕在化している。
いよいよアパレルの安徽省・四川省など中西部への大移動が始まるのか?
安徽省と四川省、アパレルの中心が動きつつある。
安徽省と四川省、
アパレルの中心が動きつつある。
安徽省に流れ込む沿岸部の資本
地元就職を目指す安徽省の技能者


 安徽省はここ10年ほど、上海や浙江省(杭州・寧波・温州など)・江蘇省(南京・南通・無錫・蘇州・常州など)や広東省、上海など沿岸部のアパレル工場に、大量のオペレーターを供給してきた。沿岸部のアパレル工場にとっては、重要な人材の供給源であり、同地区のアパレル業界の発展を裏で支えてきたのが安徽省だといっても過言ではない。
 安徽省には、省都である合肥を始め、多くの都市に縫製技能訓練学校がある。なぜ、沿岸部に卒業生たちを出してきたかといえば、地元に就職先がほとんどなかったからである。
 より正確にいえば、アパレル工場はあったが、ほとんどが国営企業の名残があるような古い体質の工場であった。沿岸部のアパレル工場に比べて技術レベルも低く、国内向けの製品が中心で、アパレル業界の発展に取り残されていたのである。
 しかし今回、安徽省を訪れて、目の当たりにした様相は大きく変わっていた。
 地元の資本の工場と思っていたアパレル工場に、いつの間にか沿岸部の資本が入って、最新の設備が入れられ、ラインが拡張され、近代的な工場に変身しているのである。


安徽省-上海へは数時間の好立地
中西部への進出2つのタイプ


 代表的な移動先の一つ、安徽省を見ると総面積は139,600km2(日本の37%)、人口が63,280,000人(日本の50%)あり、労働力は豊富だ。産業としては、銅陵など銅山があって素材の生産は盛んだが、主流は農業。紡績業も少しあるがアパレル生産業は少なく、省政府が外に向かう産業を奨励していることもあって、輸出を目指すアパレル工場にとっては、非常に魅力のある進出地となっている。
 流通面では、省都である合肥から上海まで高速道路が整備されていて約500km、数時間の距離であり、夜に工場を出発すれば朝には上海港に到着するという好立地でもある。
 沿岸部からの安徽省への進出の形態は(1)地元の資本の工場を買収、あるいは提携して資本を投入し、ラインを増設し、設備を新設して拡張するケースと、(2)新しく工場を建設するケース……の2つがある。


安徽省・四川省の魅力
安価で豊富な労働力と自宅通勤


 今のところは、前者のケースが多いようだが、各地で、誘致を目指して工場団地の建設が進められているので、1、2年すれば新工場の進出ラッシュが見られるのではないか。
 安徽省だけでなく、アパレル工場にとっては、中西部へ進出するのは、豊富な労働力と安価な人件費、さらに電力……などの面でメリットも多い。今回訪問した企業で聞く限り、オペレーターの人件費は、安徽省では1,200元、上海では1,500元……ということだった。四川省に行くとこれがもう少し安くなる。
 それと、何よりも自宅から通えるので、オペレーターも喜び、工場は従業員の管理が楽で、この点で神経を使わなくて済むことが大きいと言う。もちろん、宿舎の設備も不要である。
 以上の理由から安徽省、四川省のアパレル工場は活性化しているが、以下、安徽省、四川省の2つの工場をご紹介してみよう。
安徽省銅陵にある銅陵東隆華東服装有限公司
安徽省銅陵にある銅陵東隆華東服装有限公司
高速電子閂止めミシンLK-1900
高速電子閂止めミシンLK-1900


安徽省 銅陵東隆華東服装有限公司
年々30~50パーセントの成長

 元々地元の国営工場だったが、現在の総経理、副総経理が引き受けて工場を運営していたところ、02 年に貿易を手がけている上海の会社が傘下に納め、以来その工場としてスポーツウエアやニット、シャツ、ダウンなどの生産を手がけている。
 総経理ら2人がそのまま新会社に採用され、工場を運営している。
 当初は、仕事は上海の会社を経由して受けていたが、ここ2、3年は独自の顧客開拓も行っており、日本のメーカーからの受注も受けて、年々30~50%の成長を見せている。
 現在1500人規模の工場だが、2007年中には1800人に拡大、同時に山東省への工場進出も決まっている。
 輸出を手がけるだけに、設備は、本縫いミシンはDDL-8700-7 が951台、ロックミシンも、MO-6714Dが112台、MO-6716Sが60台、LK-1900シリーズが15台、2本針のMF-7823シリーズが72台……と最新のものを導入している。
 付加価値を高めながら量的にも拡大を目指すという。成長は加速している。


四川省 四川徳者商貿有限公司
「Q’S」ブランドを全国400 店で販売
日本へのOEM販売先を探索中


 上海紡織大学の大学院でデザインを学んでいた劉剛さんが国営のアパレル工場、百貨店と経験を積んで、1999年に創業したのが四川徳者商貿有限公司。
 自らデザインする婦人用のシャツ、パンツ、コート、ジャケット、ダウン……など、オールアイテムをニット、布帛で展開する。
 独自のブランド「Q’S」を立ち上げて、10人のデザイナーを抱え、国内の400箇所の販売店をネットワーク化している。自社ブランドで、すべての衣料を提供できるようにしたい……と開発を精力的に進めている。
 「今後も中国の消費者の個性化が進み、国内市場はますます活性化する。気に入った感性のブランドですべてをそろえたいと思う消費者のために、独自のブランドでオールアイテムの開発を進めていきたい」と総経理の劉さんは自ら陣頭に立って指揮をとる。
 目指すは150アイテムで、現在でも、毎月50アイテムで新しいデザインを提案しているという。訪れたときには、夏物の展示会を行っていた。詰め掛けたマーチャンダイザーは全国から約100人、真剣なまなざしで新作を評価していた。
 「市場がさらに大きくなると生産枚数も増えますが、課題は品質向上と生産性の向上。日本の市場の勉強に、毎年社員を原宿などに行かせてデザインや縫製技術を研究させている。
 日本の情報もよく把握しているので、今後は日本のOEM生産などの仕事も広げたい」と劉総経理は意欲的である。
 伸び盛りの若い感性が、大きく羽ばたこうとしている姿に、中国アパレルの成長の勢いを感じた。
四川徳者商貿有限公司総経理の劉剛さん。
四川徳者商貿有限公司総経理の劉剛さん。
同社の07年夏物展示会。全国から100人のバイヤーが集まっている。
同社の07年夏物展示会。全国から100人のバイヤーが集まっている。
同社の若いデザイナーたち。旺盛な創作意欲で斬新な服を生み出す。
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