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アパレル工場の“マイスター”たち
事例3
国内工場は売り場のフォロー生産に特化する
短納期・クイック生産にあわせて設備を導入
 
株式会社辻洋装店 アトリエ主任
藤ノ木里美さん
株式会社辻洋装店アトリエ主任藤ノ木里美さん
1着80万円の
カシミヤコート


 「上代で80万円というカシミヤのコートを作らせていただいたことがあります。高価な素材で失敗するわけにはいかないので緊張しました。でも、そういう服を作らせていただけたということがうれしいですね」と言うのは、辻洋装店さんの、縫製部門を支えるアトリエ主任の藤ノ木里美さん。
 このレベルになると、縫製工場とはいえ、ほとんど1点作りのオーダーの世界である。加工を請け負う縫製工場として、これだけの高い技術力を持つ工場はそう多くない。
 上述した80万円のコートのほかにも、数十万円のコートを十数点、20万円~30万円というスーツも日常的に流れるという、高い技術力の工場で、1点先上げサンプル作りと後進の指導を担当するのが藤ノ木さんだ。


all日本人でのモノづくりを、
基本は、“人”としての育成


 同社は、高級プレタを手がける高い技術力とともに、人材育成に真剣に取り組む工場としても知られる。
 辻庸介社長は東京都婦人子供服縫製工業組合の山手地区の幹部として山手服装学院などの運営に力を入れてきたが、その学校も参加者が少なくなったために組合として運営できなくなってしまった。
 そこで、同社が始めたのが社内での勉強会。もちろん日常の仕事を通じてリーダーが後輩を教えるが、そのほかに毎月1日、仕事が終わった後、全社で勉強会を行っている。
 縫製工程は4、5人の班編成で丸縫いが行われており、勉強会では、各班のリーダーがそのときに縫っているアイテムや工程について、基本的な要素など、テーマを選んで行う。
 「社員は各人がノートを1冊持っていて、自分が行った作業の工程や時間……をすべて記入しています。リーダーのコメントも記載されていますから、それを見ると、その社員は何が出来るのか一目瞭然です」と辻社長。


“技”だけでは
リーダーになれない


 「技だけではリーダーになれません。コミュニケーション能力や人間としての器などが必要で、それらを向上させたいという思いが説得力につながるのです」と辻社長。
 藤ノ木さんは、「3人に同じことを伝えても、受け取り方が違う。それを分かったうえで伝えないといけない。それと、教えるときには、自分がやってみないといけませんね。うまくいかないときには、なぜうまくいかないのか、その原因をきちんとわかってからでないと教えられません」と言うが、こうした姿勢が、説得力につながることは言うまでもない。
 技術を教えるまえに、そうしたやり方、更に言えば、生き方を身をもって教える……それが辻社長のいうコミュニケーション能力であり人間の器ということになるのだろう。
 「いまの課題は後輩の育成。でも最近の子は、給料というより洋服が好きで入社していますので覚えるのが早いです」と藤ノ木さん。同社は、新しくオーダーの店も立ち上げた。ますます藤ノ木さんの責任は重大だが、新しい仕事が面白いと前向きである。

株式会社辻洋装店アトリエ主任藤ノ木里美さん
同社 辻庸介社長
同社 辻庸介社長
中野にある「tsuji」ブランドの新しいお店
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マイスターの道具箱

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