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アパレル工場のモノづくり改革
“楽な仕事では技術は向上しない”
一人ひとりが独立事業者として
仕事を請け負う
 
時間管理を基本とした奨励給システムで知られたアンデス縫製㈱の社員たちが出資して、同社を引き継ぐ形で㈱サッシュを創業。一人ひとりは社員ではなく独立した個人事業者として会社から仕事を請け負う……独特のシステムを作り上げている
 
株式会社サッシュ 代表取締役 - 柳沢正志さん
「オペレータは社員ではなく、全員、個人事業主で、会社から仕事を請け負っている形です」と語る柳沢正志社長。
「オペレータは社員ではなく、全員、個人事業主で、会社から仕事を請け負っている形です」と語る柳沢正志社長。
社員はわずか26名、
作業者は出来高払いの請負契約


 同社は元々アンデス縫製として知られていた婦人物パンツ工場で、綿密な時間研究・作業研究をもとに奨励給の出来高払い制度を採用している工場であった。同社の社長であった桜井さんが亡くなった後、そのアンデス縫製で仕事をしていた社員たちが出資して同社を買い取り、社名を変えて引継いだのが「株式会社サッシュ」である。
 独特の緻密に練られた時間管理の仕組みはそのまま生かされており、新会社の発足に当たっては、さらに会社の仕組みまでも新しいものに進化させた。それが、個人請負システムである。
 従来は、一般的な会社-社員の関係で社員は会社から採用されて仕事をしていた。給料は出来高払いが基本で、パンツ工程それぞれに標準時間が設定されており、作業者は自分が担当した工程と作業数を計算することで、給料が算定されていた。
 これが新しい会社に生まれ変わる際に、社員の一人ひとりは社員としてではなく個人事業主として会社から仕事を請け負う……という形に変えたのである。
 個人事業主となったことで、一人ひとりは支払いの対象になる縫製作業を行なうことになり、一般の総務や経理の管理業務や時間管理、さらに生産準備作業を行なう人間が必要になってくる。そうした業務を行なう担当者26名が同社の社員……ということになる。


緻密な時間管理が可能にする、
“工程”単位の作業請負


 サッシュさんの特徴は、請負といってもロットで請け負うのではなく、通常の工場でオペレータが仕事を行なうように、工程単位の仕事をしているところにある。そのためには、工程ごとの請負単価が決まっていないとできないが、同社にはそうした仕組みが作られているのである。
 オーダーが入ると、ベテランの社員がサンプルを作りながら標準時間を設定する。多くの場合、過去の類似品を参考に出来るので、新たに時間設定する部分はわずか。生産に入ると、縫製工程ごとに品番と時間がかかれたチケットが部品と一緒に供給され、作業者は必要な工程を担当。作業が終わるとチケットを切り取り、部品に添付する。これらのチケットが回収され、作業者ごとに集計されて、過去の作業量と受取額の明細をパソコンで自由に確認できる(写真参照)というシステムである。
 「作業に当たって、ミシンの故障や、管理のミスで手待ちや整理など縫製作業以外の作業が生じた場合、その分の時間は会社が負担する。つまり支払いを補償します」(柳沢正志さん)。
 作業者は、余計な神経を使わずに、安心して縫製作業に専念できるようになっているのである。


楽な仕事をすると技術が向上せずに、
市場から取り残される


 このシステムが可能なのは、長年の経験で標準時間が明確に設定されており、仕事の進捗を管理するベテラン班長がいるからで、支払額は作業量=時間で自動的にきまる。作業工程ごとに難易度は、標準時間に反映されているので、難しい作業は単価が高くなる。
 「楽な仕事がありますが、決してそれはありがたくないんですね。楽な仕事をしていると技術力は向上しません。これでは取り残されてしまいます。技術力のある、付加価値の高い商品を扱っているメーカーさんとお仕事をすると、たとえば1万着に1、2着のボタン間違えでも、クレームがきます。わずかな不良でも当たったお客さんにとっては100%ですから、メーカーから私のところに厳しい要求が来ますが、それが会社の技術力を上げるきっかけにもなりますから」と柳沢さん。
 お客さんの要求は年々、短納期化しており、工程管理のやりくりが重要になるが、そのためにも多能工化が不可欠です……とおっしゃる。同社の作業者はいずれも長い経験を持ったベテランばかり。さらに、かつては特殊工程は外の内職に依頼していたが、現在では特殊ミシンを購入し、内部で処理するようにしたことで、短納期化も進められている。
 「いま、携帯電話で、作業の進捗管理が出来ないかと検討中」とのことで、チケットに代わる新しい電子チケット開発も視野に入れている。


1人で行う2工程持ち作業。マシンタイムと人間の作業時間がしっかりと把握されているからできる技である。電子鳩目穴かがりミシンMEB-3200と、閂止ミシンLK-282。 1人で行う2工程持ち作業。マシンタイムと人間の作業時間がしっかりと把握されているからできる技である。電子鳩目穴かがりミシンMEB-3200と、閂止ミシンLK-282。
同社は作業枚数で給与が決まるために、明確な仕組みをつくっている。アイテムごとに工程表が作られ、標準時間が設定されている。
作業者は、部品につけられたチケットの該当する作業の部分を切り取っておく。 同社は作業枚数で給与が決まるために、明確な仕組みをつくっている。アイテムごとに工程表が作られ、標準時間が設定されている。
作業者は、部品につけられたチケットの該当する作業の部分を切り取っておく。
それを元に、支払額が集計される。各人は、いつでも自分の仕事量=給料がどのくらいかをパソコンで確かめることができる。 それを元に、支払額が集計される。各人は、いつでも自分の仕事量=給料がどのくらいかをパソコンで確かめることができる。
新しく移転した八幡平の工場
新しく移転した八幡平の工場
作業者は、基本的には縫製作業を請け負う個人事業主である。そのため、パーツの分類やチケット作り、照合などの作業は同社の社員(管理部門)が行う。
作業者は、基本的には縫製作業を請け負う個人事業主である。そのため、パーツの分類やチケット作り、照合などの作業は同社の社員(管理部門)が行う。
セミドライ2本針オーバーロックミシンMO-6714Dミシンを大事に使う。DDL-555-2など、30年前のミシンもまだ健在。もちろん新しいミシンもたくさんある。
セミドライ2本針オーバーロックミシンMO-6714Dミシンを大事に使う。DDL-555-2など、30年前のミシンもまだ健在。もちろん新しいミシンもたくさんある。
高速電子単環根巻きボタン付けミシンAMB-289
高速電子単環根巻きボタン付けミシンAMB-289
ミシンの修理は、近辺のミシン屋さん3社が交代で出張して請け負う。
ミシンの修理は、近辺のミシン屋さん3社が交代で出張して請け負う。
修理“前”と“後”を区別するために、赤と青のプレートを用意してある。青のプレートが付いていれば、そのミシンは修理済み。
修理“前”と“後”を区別するために、赤と青のプレートを用意してある。青のプレートが付いていれば、そのミシンは修理済み。

株式会社 サッシュ
創業:昭和30年
所在地:秋田県鹿角市八幡平字大里下モ川原
社長:代表取締役社長 柳沢正志
社員:26名(パートナー120名)
関連工場:弘前工場(110名)
生産アイテム:婦人パンツ、スカート専門工場

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