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アパレル工場のモノづくり改革
高い縫製技術を基盤に高付加価値商品に特化したものづくりへ……
日本のアパレル工場は大きく変わろうとしている。
グローバルな競争力を備えた工場を目指して、
アパレル工場はどのような生産体制を構築しようとしているのだろうか?
今号では、いくつかの生産システムをご紹介したい。
どうなる、
日本のものづくり


 最初に以下の文章を読んで、問に答えていただこう。

●○○の国では発明は巧みに実用化される。外国で発明されたものは、その国で完成され、驚嘆されるほどに応用される。
●職業が喜びを構成し、勤労が楽しみをもたらして いる点で、○○の住民に勝る人々はおそらく世界にいない。
●○○人は生まれついての職人である。その国で機械や道具を一つも考案したことのない働き手はいない。
●○○人は自分の仕事を習ったようにはやらない。常に改良を施す。いつも何か新しい工夫を凝らしているのである

 この文章の○○にはすべて同じある国の名前が入る。
 では、○○の国とは、一体どこの国を指すのか、国名を当てていただきたい……というのが、問題である。
 ここの文章を読んで、「さて、どこの国でしょう?」と、聞かれた人間は、口には出さないが、心の中で、「馬鹿にするな!」とつぶやく。
 それでも、「どこの国ですか?」と聞くと、黙る。分かっているのだが、こんなやさしい問題に得意げに答えては、面子に関わる……そんな気持ちであろう。指名するとやっと口を開き、尻上がりの口調で小声で「日本?!」と答える。
 そこで、「なるほど、ほかに考えられる国はありますか?」と聞くと、みな首をかしげる。それほど、この文章の内容は、日本を指している。
 しかし、答えは「ノン」である。
 そこで、改めで、「ではどこの国でしょう?」と聞くと、ドイツ、中国……と名前が出てくるが、「アメリカ」はない。しかし正解は「アメリカ」である。

技術・技能は、努力をしないと
失われていく


 タネを明かせば、上記の文章が書かれたのは、100年以上前のことなのだ。
 ワットによる蒸気機関の発明をきっかけに1760年頃からヨーロッパで産業革命が起こり、さまざまな技術が発明される。改革のさきがけとなったのはイギリスの紡績会社であるが、こうした新しい技術を身につけた技術者たちが、新天地を求めてアメリカ大陸に移住し、1800年代になって次々と新しい機械や技術を生み出す。
 その結果、1851年に開かれたロンドン万博では、技術に自信を持っていたイギリス、フランスなどを尻目に、アメリカが新しい機械を持込み、人々の度肝をぬく。後進国と思っていたアメリカの驚異的な躍進ぶりに、ヨーロッパでは、「海の向こうで何が起こっているのか?」と強い関心を抱きはじめ、マスコミは次々と特派員を派遣する。
 その特派員たちが母国に打電したレポートが、紹介した文章である。

・1931年(昭和6) エンパイアステートビル(102階)を完成。
・1937年(昭和12年) ゴールデンゲート・ブリッジ完成。全長2,830m、塔間1,280m。

 ……などが当時の技術力を物語っているが、こうした高い技術力は、いまのアメリカにはない。低コストを理由に海外に進出し、国内での技術の高度化を図らなかった結果である。何やら、日本の将来が見えるようではないか。
図1 今後、アパレル工場はグローバルな市場での競争に勝つ必要があるが、そのためのキーとなる要素は、企画・商品開発力(高付加価値化)とモノづくり技術力の高度化の2つ
図1 今後、アパレル工場はグローバルな市場での競争に勝つ必要があるが、そのためのキーとなる要素は、企画・商品開発力(高付加価値化)とモノづくり技術力の高度化の2つ

グローバルに生き残る2つの方策
高付加価値化とモノづくりシステムの高度化


 アメリカのモノづくりが衰退した原因は、国内でのモノづくり高度化、生産性向上を怠ったことによる。わが国のアパレル工場がこのテツを踏まないためには、2つの 方策が必要である。

1. グローバルな市場で優位を保てる付加価値の高い商品を企画・生産すること
2. 一層のモノづくり技術の高度化を図り、柔軟でクイックな生産を実現すること

 日本のアパレル産業には、企画・モノづくりの各部分的な局面で見ると、世界でもトップクラスの高い技術力があり、ポテンシャルの高い工場も数多くある。しかしながら、世界を相手にしたグローバルな競争に勝つための総合的な戦略の設計力が不足しており、そうした人材の育成に遅れているといわざるを得ない。


自在な生産力こそ、
グローバルに生き残る条件


 ここ10年間、アパレルは中国への進出を続け、その結果、国内工場は10年間で3分の1に減少した。こうした中で、大半の中国のアパレル工場は付加価値の低い量産品が中心だが、部分的には急速に高い技術力をつけ、トップクラスの工場では、仕上がり品質だけを見れば、わが国製造業に匹敵する質の高い商品作りを実現している。
 そうした工場では、欧米の一流ブランド品をOEM生産しており、技術を高度化し、高付加価値商品づくりに移行するスピードは、予想以上に速い。
 今後、わが国アパレル工場が生き残るためには、商品・モノづくりの両面で高度化、差異化をさらに進めることが必要で、その基本になるのが、多様な消費者のニーズに迅速に応える自在でクイックな生産体制の確立である。
 本号では、こうした観点からアパレル工場におけるモノづくりの改革ケースを探ってみた。多品種少量のオーダーにクイックで自在に対応するセル生産を実現している

1.セゾン・インターナショナル(株)
2.倉敷スクールタイガー縫製(株)

の2社と、オールアイテム対応の生産体制を構築している

3.(株)司縫製

緻密な時間調整で出来高払い制を導入している

4.(株)サッシュ

 ……の4社ケースをご紹介しよう。
図2 セル生産方式とは、基本的に1人の作業者で1つの製品の組み付け作業などを完結させる生産方式をいう。 図2 セル生産方式とは、基本的に1人の作業者で1つの製品の組み付け作業などを完結させる生産方式をいう。
図2 セル生産方式とは、基本的に1人の作業者で1つの製品の組み付け作業などを完結させる生産方式をいう。1人の作業者を部品や作業台が囲むセル(細胞)状になることからセル生産方式と呼ばれるようになった。複数の作業者で行なうケースもある。
コンベアーに代表される流れ作業と違って、取り置き作業がない、作業者は自分のペースで作業速度を上げることが出来るので、生産性が高い……といわれる。

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