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独自の市場を開拓する
閉塞状況にあるアパレル生産工場を生き返らせるためには、受注加工からの脱出、
独自の市場づくりが求められている。独自のブランド、市場は
どのようにして生み出されるのか。今号では、いくつかの事例をご紹介したい。
過去の資産を受け継ぎながら
独自の新しい世界を構築する


 企業の寿命30年説……というのがひところはやった。
 多くの企業が30年持たずに経営を断念している反面、たくさんの企業が40年、50年と継続して成長を続けている。
 短命な企業と長く続く企業の“差”はどこにあるのか?
 今回の特集の取材を通じて感じるのは生き残る企業の経営者に共通の要素があるということである。
 それは、経営者のモノづくりと商品、経営への思いであり、そしてそれを支えるための経営感覚である。
 今回特集でご紹介するのは3社。特徴はなによりも、経営・モノづくりへの熱い思いである。この熱さはいったいどこから来るのだろうか?
 モノづくりへの思い、工場の経営に対する思い、市場の変化を感じるとる感性、そして、ぶれずに信念を持続する力……そうしたものがあいまって独自の市場の開拓が可能になったと思われる。
 過去のしがらみにとらわれずに新しさを持ち込むことは珍しいことではないが、過去のしがらみをきちんと受け継ぎながら、それにとらわれるのではなく独自の新しい世界をめざして進む……新しい改革者の姿が見えるようである。

生産と流通のギャップ
“スキ間”にある大きな商機


 取り巻く環境は大きく変化しながら、アパレル生産業は、これまで余り変化せずに続いてきた。それだけに、現実の社会との接点で、大きなギャップが生じている。それが、アパレル産業が苦しんでいる理由だ。
 一例が、依然として未解決なまま残されている在庫品のデッドストックによるコスト高である。アパレル生産は中国に移ったが、生産が遠隔地に移ったために、流通在庫も増え、負担はより大きくなっている。つまり、生産と消費者の間のギャップは、さらに広がってしまったのだ。
 消費社会という観点で見れば、生産と流通は一体のものとして考えるのが自然だ。自動車業界は、トヨタ自動車が協力工場を巻き込んだ、JIT(ジャスト・イン・タイム)と呼ばれる多品種少量生産方式を生み出したことで、工場と流通を一体化し一気通貫の管理を実現した。

 これにより、個々の消費者のニーズに合わせた車を短期間に生産することが可能になり、在庫リスクが解消された。

図1 工場での開発・生産を市場のニーズに合わせた仕組みに変えることが 在庫リスクが解消された。
図1 工場での開発・生産を市場のニーズに合わせた仕組みに変えることができるかどうか、その成否が市場開拓の可能性を決める。

商品・市場開発のポイント

 生産をいかにスムーズに流通につなげるか……それが最大のポイントであるが、クリアすべき課題は2つある。

1.消費者が求める商品を提供する。
2.質の高い技術・商品の生産と流通を結ぶ新しい市場を開拓する。

ということである。
 最初の消費者が求める商品を開発する……というのは言わずもがなである。ただ、 “いいものを作れば売れる”という誤解が中小企業の経営者には多い。売れるのは“いいもの”ではなく、消費者が求めているもの……ということを肝に銘じたい。
 さらに、新しい商品や新しい技術には、そのものにあった売り方がある。売り方とは、店頭に商品を並べる並べ方ではない。並べるまでのプロセス全体を通じての商品政策、イメージ作り、商品コンセプト作り……そうしたものが総合された市場戦略である。ここをクリアする方
法は一つ、基本に返って一体どのような商品なのかを徹底的に突き詰めることである。中途半端な発想で売れるほどマーケットは甘くないのだ。

死の谷、ダーウィンの海を越えるバネは、
売りたい、着せたいという“思い”


 商品開発は常に市場開拓を伴う。新しい市場を開拓することで商品は生かされる。そのプロセスには、超えなければならないいくつかの谷がある。
 開発段階で技術を商品にするための最初の谷が通称“死の谷”と呼ばれるものだ。そして、商品ができた後、実際にどのように販売して事業化するか、この谷を“ダーウィンの海”という。

・死の谷を越える
 たとえば、犬用の服を作るとすれば、一体どのような服を作るか、デザインをどうするか、デザインから生産に結び付けるにはどうするか……などの解決しなければならない課題がこれである。

・ダーウィンの海を渡る
 これは販売を成功させるための鍵である流通戦略、市場開拓の壁である。いい商品ができても市場開拓がうまくいかないと、事業として成功させることは難しい。犬用の服で言えば、インターネット、楽天……という仕組みをうまく活用したことが成功への秘訣であったといえる。

  本特集でご紹介するのは、それぞれ個性的な、以下の3社のケースである。

1.(株)ジャパンルック
 シャツのモノづくりにこだわり独自のZUNBANAブランドのシャツをネットで販売。低価格・量産というシャツの常識をくつがえし、オーダーシャツで販売実績を上げている。

2.勝田被服株式会社/M2 PLANT
 WEBのホームページでオーダースーツを受注する独特のシステムを開発し、同時に代理店を全国展開。“中国に負けない”モノづくりの仕組みを完成している。

3.株式会社ゼフィール
 犬に着せる服がブームになっているが、その火点け役となったのが同社。自社のホームページhttp://www.idog.jpのほかに、楽天でも屈指の人気ページに成長している。
商品開発の初期は技術力が、
事業化には経営の判断力がポイントになる
図2 商品開発・市場開拓を成功させるためには、越えなければならないいくつかの壁がある。
図2 商品開発・市場開拓を成功させるためには、越えなければならないいくつかの壁がある。

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