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知って得する縫いのヒント
本縫いミシンの基礎知識シリーズ
押え・送り歯・針板の基礎知識

 ミシンの送りにはさまざまな“送り方式”や“送り歯形状”があります。今回は基本的な送り方式と送り歯についてご紹介しましょう。


1.送りの役目

送りの役割は、以下のようなものがあります。

(1)縫製物を1針ごとに移動させる。
(2)1針あたり縫製物を移動させる量が変更でき、縫製物に適した縫い目を形成する。
(3)『送り方法』により伸ばし縫い・縮み縫いが可能であり、パッカリング防止やギャザリング等が出来る。


2.『送り』の種類


(1)下送り
標準的な送り方式で、縫製物を下送り歯(針板下に位置する送り歯)だけで送る(図1)。
例)DDL-9000、5570N、5580N、8700-7タイプ

<特徴>

・送りが下送りのみであり、小回りが可能。一般的な縫製に適している。
・生地の振り回しなど操作性に優れており角部など細かい縫いに適している。
・針元が見やすい。
・地縫い、ステッチ、小物縫いなど用途が幅広い。
・縫いズレ(イサリ)が発生しやすい。

(2)針送り
下送り歯と同調して針棒も動く送り方式(図2)。
例)DLN-9010、5410N-7タイプ

<特徴>

・下送りより正確に生地を送ることができる。
・縫いズレは少なくなるが、糸締めによる縫い縮みが出やすくなる。
・すべりやすい素材の合せ縫い、3枚の合せ縫いなどで縫いズレのない仕上りが得られる。
・送りにくい素材に適している。
・小回り性が若干悪い。

(3)差動送り
下送り歯が針の前後で分かれており、それぞれ個別に送り量が変えられる(図3)。
例)DLD-5430N-7タイプ

<特徴>

・伸縮性のある縫製物への対応力があり、伸ばし縫い・縮み縫いができる。
・アタッチメントを併用する事によりギャザリング機能が生かせる。
・イサリが発生しやすく、下送りと比較して小回り性が若干悪い。

(4)差動上下送り
下送り歯と上送り歯(針板上に位置する送り歯)が付いており、下送り量・上送り量がそれぞれ調節できます(図4)。
例)DLU-5490N-7、5494N-7タイプ

<特徴>

・異素材の組合せでの縫いズレ防止に効果が大きい。
・上布にギャザーが入れられ、ギャザーの入れ具合を見ながら縫製できる。
・イセ込み縫いができます。
・下送りと比較して、小回り性が悪い。


3.送り歯の種類

(1)山形送り
一般的に多く使われている送り歯で、正送りの送り力が強い形状です(図5)。

(2)あやめ送り
横方向の布の固定に優れている。
千鳥ミシン、差動上下ミシンの上送り歯に使用されています(図6)。

(3)斜送り
布地に送り歯のキズが付きにくい形状。
差動上下送りミシン(先引きタイプ)に使用されています(図7)。

(4)ウレタンゴム送り
送りキズが付きやすい縫製素材に有効であり、山形・フラットなどの形状があります。
*ジョーゼット・光沢生地など傷つきやすい素材の縫製に有効です。


4.送り歯の形状

(1)ピッチ(山の間隔)
送り歯の山の間隔(ピッチ)には細かいものから粗いものまで各種があります(図8)。

  細か目(薄物)  標準(中厚物)  粗目(厚物)
   1.15mm   1.50mm    1.80mm

・細か目:薄地で柔らかい生地に適し、厚地に使用すると布への喰い付きが悪くなり、送り力不足となる。
・粗目:厚くてある程度固い縫製物に適し、薄地縫製に使用するとパッカリングの原因となります。

*送り歯の歯と歯の間に布が入り込み、その状態で縫いが形成されるためにパッカリングが発生しやすくなります。

(2)歯枚数(列数)
・歯枚数(列数)が少ない方が小回り性は良い。
・歯枚数(列数)が多い方が直進性・送り力・布地の安定性は良い。

【3枚送り歯の特徴】
小回り性は良いのですが、針落ちの手前に送り歯がないため布の喰い込みが悪く(図9)、段部での送り力が弱く、目詰まりしやすくなります。
*右側から段などの厚い縫製物を入れると、縫い始めると送り力が弱く、目詰まりとなります。

【4枚送り歯の特徴】
針穴手前側に送り歯があるため、送り力が強く、段部へ送り込みや縫い始めの喰いつきが良い(図10)。
小回りがしにくい。特に、縫い始めの段部乗り越え・直進性を要求する長尺物の縫製に適します。一般的に送り歯の『歯』の形状により下記のような問題が発生しやすい。

・送り歯が刃のように尖っている場合:縫製物にキズ・縫糸切り、空環糸切れ等の要因となる。
・上面が均一でない場合:縫製物の直進性が悪くなる。(布が右・左方向へずれる)

こういった場合は、上面を油砥石等で軽く削り、修正します。また、大きく変形し、修正不能の場合には交換をおすすめします。


5.送り歯高さ・傾き

(1)送り歯の高さ
縫製物により標準的な送り歯の高さは下記の通り。

    薄 物→0.5mm~0.6mm
    中厚物→0.7mm~0.8mm
    厚 物→0.9mm~1.2mm

送り歯が高い場合:送り力は良いがパッカリングは発生しやすくなります。送り歯が低い場合:送り力は悪いがパッカリングは発生し難くなります。

(2)送り歯の傾き
針板に対し送り歯は水平になるのが標準です。ただし、送り力や縫製物の特性により送り歯の傾きを変えます(図11)。

・反作業者側下り:ニット地等で、イサリ・ズレの出やすい縫製物に適します。
・反作業者側上り:パッカリングの出易い縫製物に適します。(先引き効果)。

*この調整法に関しては本縫いミシンの取扱い説明書をご参照下さい。


図1 下送り
図2 針送り 図3 差動送り 図4 差動上下送り 図5 山形送り
図1 下送り 図2 針送り 図3 差動送り 図4 差動上下送り 図5 山形送り
図6 あやめ送り 図7 斜め送り 図8 山の送りピッチ
図6 あやめ送り 図7 斜め送り 図8 山の送りピッチ
図9 3枚送り歯 図10 4枚送り歯 図11
図9 3枚送り歯 図10 4枚送り歯 (1)標準(水平) (2)反作業者側下り (3)反作業者側上り
図11 (1)標準(水平) 図11 (2)反作業者側下り 図11 (3)反作業者側上り
        ( 縫製研究所 木村雅彦)

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