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自立を目指すアパレル生産業の試み
ベテランの円熟した
“匠”と“技”を若手に伝承
メード・イン・ジャパンの
モノづくりを受け継ぐ
 
服作りの技術者が高齢化する。今のうち若手を育成しておかないと日本から服作りの技術がなくなる……そんな危機意識からアルデックス(株)の山口達三社長は若手を採用し本格的に技術者の育成を始めた。
 
アルデックス株式会社 代表取締役社長 - 山口達三さん
「技能を伝承する期間は5年しかありません」と語る山口達三さん。
「技能を伝承する期間は5年しかありません」と語る山口達三さん。
職人が針を置くまで残る時間は5年
この間にどれだけ技能を伝承できるか


 「現在の日本で、紳士服を丸縫いできる職人の平均年齢をご存知ですか? すでに65歳を超えています。彼らがいなくなったら、日本の洋服職人文化はなくなってしまいます。
  彼らが針を持たなくなるまでの時間は、あと5年くらいしかありません。その間に、いかにベテランの技を若手に伝承するか、それが大きな課題です」とおっしゃるのはオーダーの紳士服を手がけるアルデックス(株)代表取締役社長山口達三さん。
  昭和33年に紳士服作りをはじめ、38年には当時として画期的なシンクロシステムによる紳士服のオーダーメイドの縫製工場を立ち上げるなど、進取の気象にとんだアパレル工場経営者として知られる山口さんにとって、気になるのは、工場の経営だけでなく日本の服作り全体の将来である。
  アパレル工場の自立といっても、基本は製造業である。
モノづくりの技術が無ければ話にならない。日本における服作りの将来を考えたら、失われようとしている匠の技と心を、いま受け継いでおかないと、永遠に失われることになりかねない……そんな危惧が山口さんにはあるのだ。


9名の新卒者を一挙に採用
ベテランの技と若者のやる気を融合させ


 「当社でも一番若い職人は54歳です。彼らが針をもてるのはあと数年。当社でも技を受け継げる期間は5年しかないのです。のんびりしている余裕はない」(山口さん)という危機感から、山口さんは服作りを目指す新卒を思い切って採用することにした。
  ここ2、3年の間に採用した新卒は9名。いずれも、ファッション専門学校の出身者だが、なかには工大出身でコンサルタントの仕事に就きながら、やはり服作りがやりたいとファッション学校に通い直して卒業したものなど、いずれも服作りに夢を持つ若者たちだ。
 「ベテラン職人の技と若者のやる気がうまくミックスされて、技を身に着けるスピードは非常に速い。ベテランも触発されるし、若者が大勢職場の入ったことで雰囲気も前向きになる。予想以上の効果があります」と山口さん。
  若者たちにとっても、同じような思いをもった年齢の仲間がいることで、仲間意識やライバル心のような刺激が生まれるのだろう。経営者の意気込みも伝わって、社内の雰囲気も前向きになり、自然と活性化にもつながっている。


技術を磨いて、
ニッチな5%の市場で生きる


 同社が手がけるのは紳士服のオーダー、パターンオーダー服で、上代も10万円を越える高級品。かつては自社で上下を一貫生産していたが、今は上着のみ。客先は、百貨店やセレクトショップのOEMで、東京と豊橋にある自社ショップでも販売する。社員46名で、一日に40着を仕上げる。
 同社の服は、素材にイタリア製を使用し、「男のおしゃれ」として裏地なども数百色をそろえる。服作りのディテールでは、切羽などでも手抜きをせずに本切羽を守り、本台場、D閂止め……と本格的な服作りを志向している。
  こうした本格的な服作りにあこがれて、やる気のある若者たちが同社に集まる。そうした若者が一人前に育って高い評価を受けるようにならないといけないと山口さんは言う。
 「服作りは産業としては難しい。丸縫いができる職人でも、給料を見ると決してその技術に見合った評価を受けていません。企業の経営と言う観点から見ると、CICに投資したほうがずっといい。アパレル市場の5%かもしれないが、ニッチを自覚して高級紳士服作りの技術を向上させたい」(同)。


トータル・コーディネートを提案

 CICというのは関連企業で、クリーニング・イン・クリーンルーム、つまりクリーンルーム用衣料のクリーニング会社である。
  山口さんは、昭和59年にアパレル初のCADシステムを開発、62年に一着流しシステムを導入、平成5年にレーザー裁断機を導入……とオーダー生産の工業化に取り組んできたが、若い技術者の育成は、工業化ではなく「手作り」にこだわった技の習得で、若者を「工匠」に育てることを目指している。
  そのために、社内のベテランだけでなく、元天神山のプライムイワテ工場長でイタリア人モデリストから直接技術を習得した永井公さんと契約して、週に1回指導に来ていただいている。永井さんも、若いモデリストの育成には乗り気だ。
  こうして若手の育成に取り組む一方、山口さんは、イタリアのシャツメーカーや靴メーカーと協力して、トータルコーディネートを提案し、相互の商品を販売し合う……などの新しい試みも行っている。
  次に目指すのは、レディスの服作り。いま、社内で、5人のプロジェクトチームが作られて研究が進められている。
匠の技能を生かした試みはこれからどんどん出てくるだろう。若い感覚でどんなものが生まれるか、大いに楽しみである。

ベテランの技と若手の感覚がうまくミックスされて、新しいオーダー工場が生まれようとしている。 ベテランの技と若手の感覚がうまくミックスされて、新しいオーダー工場が生まれようとしている。
ベテランの技と若手の感覚がうまくミックスされて、新しいオーダー工場が生まれようとしている。 ベテランの技と若手の感覚がうまくミックスされて、新しいオーダー工場が生まれようとしている。
ベテランの技と若手の感覚がうまくミックスされて、新しいオーダー工場が生まれようとしている。
一品生産のオーダーは裁断がポイントである。裏地用に早くからレーザー裁断機が取り入れられている。
一品生産のオーダーは裁断がポイントである。裏地用に早くからレーザー裁断機が取り入れられている。
素材はすべて縮絨を経て裁断される
素材はすべて縮絨を経て裁断される
アルデックスを中心に、クリーニングのホワイト急便、CIC(クリーニング・イン・クリーンルーム)がある。
アルデックスを中心に、クリーニングのホワイト急便、CIC(クリーニング・イン・クリーンルーム)がある。
併設されているテニススクールのレストルームが、同時に商品のショールームにもなっている。
併設されているテニススクールのレストルームが、同時に商品のショールームにもなっている。
一味違うつくり。そでの切羽は眠り切羽はない、裏地と見返しはエージングを行うという徹底ぶり。デザインによっては、裏地にちょっとした遊びを入れて……男のおしゃれ心をくすぐる。
一味違うつくり。そでの切羽は眠り切羽はない、裏地と見返しはエージングを行うという徹底ぶり。デザインによっては、裏地にちょっとした遊びを入れて……男のおしゃれ心をくすぐる。一味違うつくり。そでの切羽は眠り切羽はない、裏地と見返しはエージングを行うという徹底ぶり。デザインによっては、裏地にちょっとした遊びを入れて……男のおしゃれ心をくすぐる。
一味違うつくり。そでの切羽は眠り切羽はない、裏地と見返しはエージングを行うという徹底ぶり。デザインによっては、裏地にちょっとした遊びを入れて……男のおしゃれ心をくすぐる。
「上質なスーツを作ることが日本の技術を守ることにつながる」という同社の技術力は高い。
「上質なスーツを作ることが日本の技術を守ることにつながる」という同社の技術力は高い。

アルデックス(株)
創業:昭和33年
所在地:愛知県豊橋市菰口町
社長:山口 達三
社員:46名
商品:紳士服オーダー、パターンオーダー

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