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自立を目指すアパレル生産業の試み
自立を目指すアパレル生産業の試み
 
国内のアパレル工場は生き残れるのか? 
工場が中国に進出し、同時に中国製品が大量に流入を始めた1990年代から、盛んに国内アパレル工場の危機が叫ばれた。
以来十数年。どうやら、国内アパレル工場の生き残りの道は明確になりつつあるようだ。
残った工場の特徴をキーワードで言えば、“経営者の強い意志”だ。
資金や技術・設備・人・アイテムの前に、経営者に意志があるかどうか、それが会社の存続を大きく左右したのではないだろうか。
乱世に生き残る知恵
あなたに意志はありますか?


 戦後しばらくの間、縫製業は輸出産業の花形として日本経済の牽引車であった。待っていれば仕事は来た。それをこなすことが工場の役割だった。
  しかし、アパレル工場を取り巻く環境は、バブルの崩壊によって一転し、失われた10年間を経て、アパレル工場の数は、激減した。しかし、そんな中でも生き残った企業も多くあり、その違いはどこから来るかをキチンと整理する必要があろう。
  バブル時代、将来を見通す目を持った経営者たちは、バブル崩壊後の苦しい時代にも、経営規模の縮小などの戦略をとりながら、経営を続けることが出来た。
  バブル崩壊によって、経営環境は厳しくなり一転して生き残りをかけた乱世に突入した。仕事は“来るもの”から、自から探し“取りに行くもの”に変わった。そうした環境で求められるのは、自社のあり方を冷静に分析する目と、仕事を生み出す経営者の強い意志である。


日本のアパレル生産業の位置を知る
“QCD”に見る産業発達の流れ


 ここで、いま日本のアパレル工場、中国のアパレル工場はどのような位置にあるのか、おさらいをしてみよう。
  工場を管理するに際して、その状態を見る指標として3つの要素が言われる。品質(Q)、コスト(C)、納期(D)である。この3要素で各国の置かれた位置を見ることができる(図1)。

  (1)産業の創生期、最初に問題になるのは品質である。
品質がよくないと商品は売れないし、注文は取れない。
やがて、技術力が向上し品質がよくなると注文が増える。

  (2)そうなると課題は、客先の多様な注文に応じて生産できるかどうかがポイントになる。量産だけでなく、多品種少量生産への移行も重要なポイントである。

  (3)品質が向上し、顧客の多様な注文に応じられるようになる頃には、人件費も高くなり、最後にはコストが大きな課題になる。
  この流れをみれば、中国はまだ(1)品質~納期が課題の段階であり、日本は(3)コストが課題の段階になっていることがわかる。

1.Q(品質)管理の時代 2.D(納期)管理の時代 3.C(コスト)管理の時代
図1 産業の発展は、Q(品質)から始まり→D(納期=生産量)→C(コスト)へと進む。 1.Q(品質)管理の時代 図1 産業の発展は、Q(品質)から始まり→D(納期=生産量)→C(コスト)へと進む。 2.D(納期)管理の時代 図1 産業の発展は、Q(品質)から始まり→D(納期=生産量)→C(コスト)へと進む。 3.C(コスト)管理の時代
図1 産業の発展は、Q(品質)から始まり→D(納期=生産量)→C(コスト)へと進む。
■基盤技術と技能 ■日本と欧米・アジアの比較
図2 基盤技術と技能の三角形
図2 基盤技術と技能の三角形

コストをクリアする2つの方向
コストダウンと付加価値向上


 では、日本がいま直面している課題“コスト”とはいったいどういうことか? 製品を作る原価が課題だということであるが、どのような製品であろうと、コストは安い方がいい。しかし、重要なことはコスト=原価を下げるだけでなく、製品の付加価値を上げることも、相対的にコストを下げることにつながるということである。
  売価10,000円の商品の原価が5,000円とすると、利益は5,000円。原価を1,000円下げると、利益は6,000円になる。
  一方、その製品に1,000円の加工を追加することで、売価15,000円で売れるとすれば、利益は、15,000円-(5,000+1,000))円=9,000円になる。
  付加価値をつける方法は、ブランド力を高める、新素材を開発する、デザインを高める、品質を向上させる、新しい機能を付加する……などさまざまな方法がある。
  これまで多くの企業は、中国製品の台頭に際して、“低価格化”という方向で対応してきた。しかしそれは、人件費の高い日本にとってたくさんあるコスト戦略の中でももっとも困難な方法の一つでもあった。


自社の付加価値を高める
アパレル生産業自立への試み


 生き残ったアパレル生産業がとってきた戦略は、そのほとんどが、付加価値をつける方向に進んでいる。一時期、“日本品質”が叫ばれたが、その日本品質の具体的な姿が、生き残った企業から見えてくるのだ。
  経営者が強い意志を持って、世界のアパレル業や他社との差別化を図るために自社の強みを見つけて伸ばす……そのための具体的な手段がそれぞれの戦略である。
  以下、特集とJUKI PLAZAでご紹介する、アルデックス(株)、オオタニット(株)、加茂繊維(株)、パンドール(株)の4社の自立策を見てみよう。

1.技能者育成:アルデックス(株)
 服作り技能者が高齢化する現状を前に、なんとしてでも技能を残したい……と若手を採用し、ベテランから若手への技能伝承を図る仕組みを作っている。やがて同社は技能という強みを持つことになる。

2.企画開発・販売:オオタニット(株)
 本来、ニット業は企画生産業だったとの思いから、素材の開発から自社独自ブランドの企画・生産を手がけ、カテゴリーキラーを目指して自立を進めている。

3.独自の新素材の開発:加茂繊維(株)
 ブラックシリカという鉱石の効能に着目し、これを練りこんだ繊維を大手の企業との連携で開発し、シャツ、ブリーフ、ソックスなどを企画・製造・販売する。

4.ダンス衣装のオーダー生産:パンドール(株)
 ナイトウエア生産からフラダンス衣装に進出し、体型の合わない中高年を中心に、本場の素材を輸入して豊富なデザインの衣装を企画し、オーダー生産を行う。ニッチに自社の地歩を築いている。

 以下のページの記事からお分かりいただけるように、いずれも経営者の強い意志が改革や自立の原動力になっている。
  意志の強さは生き残る生命力の強さであるということを改めて感じさせられた。

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