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特集 アパレル工場の技能伝承策
“メードイン東京”は高付加価値商品の代名詞
頑固に品質を守る―それが生きる道
<福新ドレス>
 
中国アパレル製品の品質向上でより強く求められる日本の技術力。高付加価値製品作りでこれまで生き残ってきた東京のアパレル工場が注目されるが、果たして産地“東京”に成算はあるのか? アパレル工場の現状をうかがった。
 
東京婦人子供服縫製工業組合 理事長 - 中村 衛さん
(株)福新ドレス 代表取締役 - 吉田昌二さん
専務取締役 - 吉田 浩さん
福新ドレス
住宅街にある福新ドレス
高い技術力の都内アパレル工場
若い2代目経営者へ代替わり進む

 東京婦人子供服縫製工業組合の前身である 東京洋装工業会が誕生したのが昭和24年、以来歴史は45年を数える。その間に縫製業界は大きく変化した。
 アパレル産業が最盛期だった昭和43、4年頃には同組合の加入会員数は約800社を数えたが、いまやその数149社と20%以下に減った。バブル崩壊後の低成長で多くの会社が工場をたたんだが、改めて都内のアパレル工場の将来を考えたときに、むしろ明るい光明が見える……と同工業組合理事長の中村ドレス社長中村衛さんは言う。
 「組合員の149社のうち、若い2代目社長に代替わりしたのが85社あり、その若手の社長たちがお互いに刺激しあって勉強をしているんです。もともと東京は高い技術力で付加価値の高い仕事をしていましたから、やっとそれが発揮される時代が来たのではないか。2代目の新しい感覚でアパレルに取り組めば、今後は大いに期待できると思っています」と中村理事長。


アパレルに近い立地を
活かす


 かつては、傘下に2つの訓練校を持ち、1000人近い生徒を育成していたが、いまはそれもなくなった。維持するだけの新卒を採用しなくなったからだが、といって人材育成は不可欠。そこで、組合の人材育成部で始めたのが、飯田橋にある職業訓練校を利用した研修であり、年に3回程度の、パターン、接着技術などの勉強会。そうしたものに加えて、個々の企業では自社の実情に合わせてそれぞれ学校への派遣や通信教育などを取り入れている。
 「また、若手のオペレーターを補完するものとして中国からの研修生導入も同工業組合で独自に始めており、各工場への配属前に約1ヶ月の集合研修を実施するなど、産地東京の品質向上を目指して取り組んでいる」と中村理事長。
 「組合では毎年、展示会も続けてきましたし、組合員の高い技術はいまでも変わっていません。東京は、アパレルに近いという立地のメリットがあります。これを生かしてサンプル作りから密度の濃いコミュニケーションをすることで、より付加価値の高い製品をクイックに作ることが可能です。日本製のアパレルは品質が認められていて海外でも人気が高い。産地東京はこれから期待が大きいのです」(同)。


<福新ドレスの人材育成戦略>
通信教育を活用し技術力を高める


 そんな東京で、技術力の高さでつとに知られる福新ドレスさんを訪ねて、どのように技能者育成が行われているか伺ってみた。
 同社の創立は昭和40年、現在、社員は38名。最近、近くで仕上げ・プレスも独自に始めた。縫製工程は、4-5名の編成で5人の班長を中心に丸縫いを行う。高い技術力が求められるが、同社の基盤は社員の育成である。創立以来、毎年のように新卒を採用してきた。多いときで9名、そのために技能教育は不可欠の要素だったのである。
 「特に、手がけている商品の70%が国内の百貨店で販売されているもので、他に台湾やアジアの百貨店など、いずれも日本の緻密なモノづくりと品質が求められる商品ばかりです。新卒を採用しますから、どうしてもキチンと技能者を育成しなければならなのですが、ウチは昔とまるで変わっていません。技能は会社で製図などは学校に通わせて育成するだけです」と代表取締役社長の吉田昌二さん。
 入社する新卒は、高校や専門学校卒業生。かつては東京山手訓練学校を工業組合でやっていたので、そこに通わせたが、それがなくなってしまったので、実技は会社で教えながら、製図などを文化服装学院の通信教育で学ばせていこうと考えている。5年で2級技能士を取得し、1級を目指す社員も多い。社員の技能士免許は事務所の壁に掲げられている。


東京の立地を生かした生産体制
情報公開で自立する班長


 同社の仕事は、まさにアパレルと隣接しているという東京の立地を生かしたものだ。
 サンプルが出来ると、その足で1着をアパレルに持参し確認を取る、OKになれば戻ってすぐに生産に移るし、修正があればすぐに修正して再度確認を取る。サンプルづくりから、時間をおかずに生産できるから、100~200着のロットを週に2点は仕上げられる。この速さが同社の高い技術力を物語っている。
 こうしたことを可能にしているのが、リーダーの存在である。同社の班運営も非常に面白い。加工賃などの情報を公開しており、各班の仕事の負荷を見ながら、吉田専務が受注した仕事を、納期順に割り振る。こうしておくと各班ごとにどのくらいの売上があるかが加工台帳で分かる。
 こうすることで、月の仕事量の目標が決まっているから、各班のリーダーは、納期と加工賃を見て、自分たちの班の仕事の量を管理することになり、各班は自主的な意識が育つ。売り上げが少なければもっと仕事をくださいといってくるし、早く終わればその日は早く仕舞うなどの処理も自主的な判断で行う。
 技術力だけでなく、経営意識も持った社員を育てる……東京の立地を生かした新しいアパレル工場の人材育成の一つの方向といえるかもしれない。

技能士の一覧 仕上げのプレス工場
事務所に掲げられている技能士の一覧
難しい素材……それをこなす
難しい素材……それをこなすのが同社の特徴。技術力を頼りに仕事がくる 近くに仕上げのプレス工場を作った。最終的に製品に責任が持てる…とここから得意先の支店宛に配送できるようになった
中村衛さん
「東京はもともと高い技術力を持った工場が多いところ。この技術力に若手の経営者の新しい感覚が生かされれば、今後は楽しみだ」東京婦人子供服縫製工業組合理事長の中村ドレス社長中村衛さん
吉田昌二さん
「人を育てる……というやり方は昔と変わりません。やはり技術力、いい商品を作ることが大事です」と福新ドレス代表取締役社長吉田昌二さん
集合研修
今年度の中国人研修生。工場への配属の前に、約1ヶ月の集合研修が行われる
1班4-5人による丸縫いの生産体制
工場は中間プレスを多用した1班4-5人による丸縫いの生産体制
1班4-5人による丸縫いの生産体制

株式会社福新ドレス
創業:昭和40年、
所在地:東京都板橋区大谷口上町
社長:代表取締役社長 吉田昌二
社員:38名
生産アイテム:婦人服

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