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特集 マスカスタマイゼーション
ユニバーサルファッションで
工場直結の店舗を開設
品質はプレタ――
独自ブランドINOUIでパターンオーダーを展開
 
ユニバーサルデザインの考え方を導入し、障害者や高齢者のニーズにこたえる服作りをしたい……と川中支援事業に応募して工場直結の店舗を開設した井上服装さん。技術をベースにカスタマイゼーションで改革を目指す。
 
井上服装株式会社 代表取締役 - 井上正人さん
工場直結の店舗「しえん」工場直結の店舗「しえん」
住宅街にある工場直結の店舗「しえん」。23平方米の店舗にはINOUIブランド製品が展示されている。右側で採寸が行われる。
自立への道を探って
ユニバーサルファッションへ

 「縫製工場は下請けです。いいときは仕事がたくさんありますが、いまは海外の残りや難しい仕事だけが来る。閑散期がだんだん長くなり、自立できるようにしなければ工場はつぶれてしまう……そう思って行き着いたのが、パターンオーダーでした」と井上服装社長井上正人さん。自立への道を探って研究を始めたのは4年前のことである。
  「下請けではなく、自分で作るというのが一番の方法ですが、販路がないので難しい。オーダーならできると組合の学校に通ってパターンを勉強しましたが、一から自分でパターンをひくのは至難の業です。そこで、パターンオーダーを導入し、パタンナーが作ったというCAD(JCシステム)をレンタルで採用した」(同)。
  試行錯誤を重ねているときに、雑誌で目にしたのがユニバーサルファッションの記事。井上さんは“これだ”と思い、NPOユニバーサルファッション協会の研究会に参加し、2003年には、経済産業省の川中自立支援事業に応募し採用される。これで店舗開設の計画が現実のモノとなってきた。そして、2004年には“UNIFA”マーク使用権も取得する。


ターゲットは60-70代女性
プレタの技術でデザインを用意


 当初の予定では梅田大丸に出店する計画だったが、大丸の都合でそれがキャンセルになり、川中自立支援事業の予算を大丸開店以外に使用することの許可を取って、工場に隣接した店舗「しえん」を開設した。店舗の広さは23平方米。ミセスをターゲットにしたサイズオーダーと、ユニバーサルファッションのオーダーが営業品目である。
  ユニバーサルと言うことになると、対象は高齢者・障害者にも広がる。単に採寸してグレーディングするだけではすまなくなる。根本的な体型から変わってくるからである。そこで、HQL(人間生活工学研究センター)の体型データや“高齢者女子衣料開発用人台”なども導入し、体型の研究や高齢者用衣料の開発にも取り組んだ。採寸をサポートするシステムとして、サンリット産業が開発した電子採寸システム「SUBO(スーボ)」も採用した。
  もともと同社が手がけていたのは、イトキンの「クリスチャンオジャール」など40~50代用のプレタ。その技術をベースに開店したが、店で待っているだけでは商売にならない。そこで、呉服の見本市などに参加してバッグやアクセサリー等と一緒にオーダーの展示もしてみたが、「無地の素材や地味なデザインを持っていったために反響はいまひとつ。有料老人ホームでも展示販売を試みたがどちらも大きな商売にはならない」(同)。
  しかしそこで教えられることも多かった。それは、高齢者向けの衣類は、普通の衣類と違って上着はお尻が隠れるくらいに長いほうがよい、エリの開きも小さく、ボタンはかけやすく外しやすいものが不可欠と知ったという。これらがやがて、井上さんの服作りのベースになっていく。


さまざまなデザインを開発
一級技能士の技術で自在に縫製


 結局、独自のブランドとしてミセスのパターンオーダー“INOUI”を立ち上げ、季節ごとに70-80種類のデザインを用意。
  店舗では、展示されている衣料やカタログから好みのデザインと素材を選択してもらい、その後採寸し、同時に電子採寸システムを利用して写真撮影を行う。このデータを基にして裏の工場でパターンに起こし、縫製加工して約2週間後に完成・引渡しである。
  デザインは外部のデザイナーに依頼しているが、受注に当たってはデザインや細部の変更も自在に対応する。必要ならば、裏の工場からパタンナーも参加して一緒に検討できるので、お客様の信頼も高い。そして、縫製加工は生え抜きの一級技能士・岩本数生さんが担当。ユニバーサルファッションとはいえ、仕上がりはプレタのオーダーである。


ユニバーサルファッションの限界
広げたい“サイズオーダー”のイメージ


 「ユニバーサルファッションと言うのは、高齢者や障害を持つ方のためのファッションということではなく、どなたでも体型に合わせた洋服をおつくりしますということです。ところがユニバーサルファッションというと、どうしても障害者のためのファッションというイメージが強く出てしまい、一般の中高年層の方があまりご利用くださらない。それが大きな課題です」と井上さん。
  店舗の業務は、高齢者・障害者用の衣料の製作とサイズオーダーの衣料品の製作である。後者の、サイズオーダーの事業は、ジャケットで38,000~72,000円、パンツが23,000~42,000円、スカートで21,000~46,000円と“プレタ”クラスとは思えないリーズナブルな価格だが、ユニバーサルファッションのイメージに押されてお客さんはもう一つ。
  閑散期にINOUIの既製品を作りこむことで、受注の隙間を埋める仕組みは出来上がったが、サイズオーダーの部分をいかにPRできるか? ユニバーサルファッションで注目を集めた同社の、今後の大きな課題でもある。

質の高い作業が行われている MO-6100Dドライヘッドロックミシン 前あきを大きくとったパンツ
工場で生産するのはプレタの服。質の高い作業が行われている。 MO-6100Dドライヘッドロックミシンも導入されている。 前あきを大きくとったパンツ。ファスナーはタック線に隠れるので外から見えない。
井上正人さん
「縫製工場は下請け。中国で出来ない難しい仕事だけしかこなくなると厳しい。それを克服するのは自分で始めるしかない」井上服装㈱代表取締役社長井上正人さん。
電子採寸システム
電子採寸システム。手前のケースにカメラが隠されていて、奥に立って撮影する。立ち位置に足型が付けられている。
高齢者用の人台
(株)アップルが開発した高齢者用の人台。基本的な体型が分かる。
パターン作りのノウハウ
一般的なグレーディングとは違う独特のパターン作りのノウハウがたくさんある

井上服装株式会社
創業:昭和35年
会社設立:昭和45年
社長:代表取締役 井上正人
社員:17名
生産アイテム:婦人服
所在地:大阪市東住吉区田辺町4-14-25

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