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アパレル産業と地域おこし
<特集:アパレル産業と地域おこし>

地域社会の中で共生するアパレル会社
地域の環境・風土と「衣」の新しい関係づくりをめざして
アパレル産業と地域おこし   アパレル産業と地域おこし   アパレル産業と地域おこし   アパレル産業と地域おこし


アパレル製造業が、大きな転機に立っている。どうやって生き残るかという営業面での課題の時代から、より深いところでの存在意義の問い直しが求められている。
特集では、アパレル生産工場をめぐるさまざまな動きを探っていきたい。
第一回目は<地域おこし>。ねらいや経緯はさまざまで、「産地形成」だけでなく、風土と【衣】との関係を原点に戻って考える動きも始まっている。



「梅・栗植えてハワイへ行こう!」 めざすは地域と産業の活性化

 「梅・栗植えてハワイへ行こう!」……昭和54年この掛け声から大分県大山町の「一村一品運動」は、始められた。そして、この運動はまたたく間に全国へと広がっていった。産業社会は高度成長の真っただ中にあり、この船に乗ることができなかった農村が、「地域の不利な条件を嘆く前に、自分たちの住む地域をもう一度見直し、地域の誇りとなるものをつくりあげ、地域を活性化する」ことを目的にはじめられたものだ。

 以来20数年がたち、この運動のモデルとのなった2つの町、由布院町と大山町は、現在でも全国から注目される町となっている。湯布院町は年間400万人近い温泉客を呼び、大山町はイスラエルの共同農場キブツに若者を派遣するなどの人材育成の成果が、相互扶助、協業の必要性、個人と地域の結びつきなどの意識の醸成に大きな力となって、バイオ技術によるランやハーブの栽培へと発展している。

 この一村一品運動は、いまや東南アジアの諸国に受け継がれて、各地で活発に活動が展開されている。
 この特集では、アパレル産業がどのように地域おこしと連携することができるか、既に行われているさまざまな地域活性化の活動などを見ながら、アパレル工場としての可能性を探ってみたい。



アパレル産業と地域おこし 積極的に進めたい地域との連携

 本来、衣食住は自然環境を前提として生み出されたものである。国によって民族衣装が異なるように、その地の自然環境に合った「衣」が生まれ、歴史の中で育まれてきた。その意味でアパレル産業は自然環境や地域社会と緊密な関連を持っている。

  しかし、近代化とともに、衣食住は自然と離れ、独自の歩みを展開するようになった。「衣」の地域間の差異もなくなり、世界的に均一化して、パリでも、ニューヨークでも、東京でもナイロビ、ブラジルでも……同じファッションが店頭に並ぶようになっている。

  そのこと自体は悪くないが、問題は、“それだけ”になってしまっていることにある。こうした画一化に対して、小誌でも、2001年10月に発行した「jm215号」で、「衣」が生活と密接な関係を持つものとして、個にあった利用の仕方を見直すことが必要ではないかと「スローファッションの時代」を提案した。

  “たった1つの花”の個性化が叫ばれる今日、地域での生活に根付いたファッションがもっと見直されても良いような気がする。

  地域おこしの運動の基本は、こうした、失ってしまった風土・文化を取り戻し、自分たちの生活の根拠である地域社会を見直そうという運動でもある。



アパレル産業と地域おこし 積極的に進めたい地域との連携

 現在も、全国で地域おこしの活動は展開されているが、アパレル業界が関連した活動となると、数は多くない。

 産業振興で助成金の利用が少ない業種としてアパレル業界が上げられるが、どうやら地域振興……の面でも、助成金の利用が少ないのがアパレル業界のようである。

 後述する「きしわたの会」の発起人の一人である岸和田市の職員木村元広さんには「地場産業が廃れば、助け合いの精神もなくなる」とおっしゃっているが、アパレル業界にかけているのは、もしかするとこうした点かもしれない。

 以下、いくつか国や地方自治体のサポート・助成を受けて町おこしを目指して展開しているアパレル関連の活動をみてみよう。


青森県
ファッション甲子園



3人一組でデザインから縫製まで青森アパレル工業会も支援


 ここ数年、注目を集めているのが、青森県で開催している高校生のためのコンテスト「ファッション甲子園」である。

 これは毎年夏休みを利用して行われるもので、高校生が学校単位に3人一組でチームを作り、デザイン画づくりから衣装の製作までを行い、出来上がった衣装のモデルまで務めて、コンテストで競う。

 デザイン画で第一次審査を行い、選ばれたチームが青森県で行われる最終審査会に出場し、実際に縫い上げた衣装でファッションショー形式の審査に臨む。

 テレビなどでも放映されたことがきっかけとなって、全国的に知名度も上がり、高校生の間で注目を集めている。

 この催しの間、青森アパレル工業会などは近くの会場でアパレル製品の展示会を開くなどPRの機会として活用してきたが、今後、この催しは青森県から民間への移行が計画されており、青森県アパレル工業会が大きな役割を果たすことになる。

ファッション甲子園 ファッション甲子園 ファッション甲子園 ファッション甲子園
青森県が進める全国高校生のファッション・コンテスト「ファッション甲子園」。
青森県アパレル工業会も積極的に参加し独自の活動も展開している。



岐阜県
WFC岐阜国際学生ファッション・コンテスト


ORIBEファッションアカデミー活動にアパレル工業会も参加


大学生を対象にしたファッション・コンテストを行っているのが岐阜県である。岐阜は東京・大阪につぐアパレル産地である。若い才能を発掘し、飛躍をバックアップすることを目指した国際的なコンテストを行うことで、国内だけでなく世界に向けて、産地としての情報を発信しようというねらいだ。

  昨年は、世界29カ国から14,000点もの作品が集まった。一次審査を通過した50作品によるファッションショー形式のコンテストで、優勝者が決められる。

  岐阜県はホリプロと提携して「ORIBEファッションアカデミー」プロジェクトを展開するなど、アパレル産業の発展に積極的だが、アパレル工業界との連携はあまり進んでいなかった。こうした知事に対して、アパレル関連事業者たちがプロジェクトへの参画支援を要請し、共同で情報を発信するために、「ORIBEアパレルプラザ」を設立、共同ブランドなどの構想を練っている。今後の連携が期待されている。


WFC岐阜国際学生ファッション・コンテスト
WFC岐阜国際学生ファッション・コンテスト
岐阜国際学生ファッション・コンテスト。同県で進めている「ORIBEファッション・コンソーシアム」プロジェクトにアパレル関連事業者が参画することになっている。


愛知県一宮市
一宮地場産業ファッションデザインセンター


親子教室などで繊維の楽しさアピール


一宮地場産業ファッションデザインセンター(FDC)は、繊維産業を代表とする尾張西部地域の地場産業振興を図るため、昭和59年2月に開設された法人で、一宮市を始めとする地域24市町村や18業界団体が協力して生まれた。

 開設以来20年の間、情報の収集・提供、新商品開発、人材養成などの振興事業、とりわけファッション情報の収集・提供事業に力を注いできた。

 そんななかで、一般の市民の親子を対象にして行われているのが、繊維工場の見学や繊維を使った野菜作り教室。なかなかの人気で、参加者も制限するほどだとか。

一宮地場産業ファッションデザインセンター
一宮地場産業ファッションデザインセンター
一宮・親子教室

 
大阪府岸和田市
きしわたの会


コットンカーニバルから「木綿物語」へ


「泉州や海の青さと綿の花」(青木月斗)と読まれるほど、泉州では綿花を生産し、綿糸・綿織物に加工して、海路を利用して各地へと販売していた。綿花はなくなったがこの綿産業の伝統は今でも受け継がれ、紡績やニットなどアパレル製品の一大産地となっている。

 その繊維産業が危機的な状況にある中で、綿作りで地域おこしと産業の活性化を進めているのが「きしわたの会」。もともとは市民の有志で「綿づくりで夢を育ててみませんか」と呼びかけてはじめたもので、岸和田市内の神於山(コウノヤマ)の土地改良区内の畑(約1500m2)を借りて、市民の手で綿花の栽培を始めた。

 こうした活動を市の農林水産課が支援、コットンカーニバルを開催するなどでPRを行い、きしわたの会は、綿繰り、糸紡ぎ、機織り、藍染めの実演・体験コーナーを設置。苦労して作った綿の木もラッピングして販売した。こうした催しは大変好評で、用意したものは完売。やがて活動は大阪府岸和田市の「木綿物語」プロジェクトへと発展し、市民、企業に参加を呼びかけるまでに至っている。

 こうした綿花作りには、地元の紡績業者も参加し、製品化を進めている。木下織物工場の木下宗計さんらは同業組合の仲間や地域の人たちと一緒に木綿を素材にした浴衣やのれんなどのオリジナル製品を作っている。

 木下さんが織っている「小幅織物」の生地にデザインした柄を染め、縫製して、完成した浴衣を直接消費者に販売。インターネットも利用して販路を拡大している。

 こうした動きは、大きな地場産業育成というところまで至ってはいない。しかし、泉州織物のルーツを確認したことで、綿織物に対する強い愛着が生まれ、そこから自分たちのアイデンティティを確認することができた。この結果は長い目で大きな力を生むだろう。

大阪府岸和田市きしわたの会
大阪府岸和田市きしわたの会
大阪府岸和田市きしわたの会
棉の花つみ作業
綿が噴出した棉花
花の奥がエンジ色に映える日本在来種の棉
大阪府岸和田市きしわたの会




地域との連動こそ新しい道
強い“思い”が活動を成功へ導く

 アパレル産業に限らず、町おこしで重要なポイントは、結局はその活動に対する、思いである。

 大山町、湯布院町、きしわたの会……いずれも共通しているのは、活動を展開する担当者の強い思いである。活動で何かを実現しようという目的もさることながら、現状を変えたいという強い思いを持った人がリードすることで、活動は活性化する。

 逆に言えば、活動を展開すること自体が「自己表現」となるリーダーの存在があるかどうか……それが、活動が活性化するかどうかの決め手であるようだ。地域が活性化するかどうかは、活動の結果に過ぎないのである。

 木村さんの、「地場産業が廃れば、助け合いの精神もなくなる」の言葉は、産地が崩壊する理由を語っているような気がする。

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