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REPORT[マザー工場]
IT化で、工場間も経営データをフル活用、
下請けに徹し、自社への評価を常に忘れない。
 
㈱トップレディ   代表取締役社長 坂本 郁三さん
  取締役専務 会場 政之さん
  本社工場長 坂本 健二さん
婦人用フォーマルウエアのトップレディさんは、経営管理だけでなく、生産管理・工程分析・社員の技能習得状況など、多くの分野にパソコンを活用して、データに基づく見える経営を進めています。

フォーマル、ベルベットに徹しIT活用で、報告書もメールで提出

  甲府で昭和 25 年( 1950 年)に創業したトップレディさんが、現在本社がある江戸川区南小岩に移転してきたのは昭和 28 年のこと。以来今年で 50 年目を迎えた。アパレル工場としては古株である。

  フォーマルとベルベットを専門に扱い、技術力は定評がある。フォーマルはこの不況でも比較的良いジャンルといわれているが、「そういうことで、他のジャンルからフォーマルに入ってくる工場さんがあって、結構厳しいんです」と同社社長の坂本郁三さん。ベルベットも扱う工場が少なくなり、同社に持ち込まれる話も多いが、量的には一時よりずっと減りました……とのこと。

  「それでも、一度でいいから四輪車に乗ってみたい……と言っていた昔の苦しい時代を考えれば、大変だなんていっていられません」と坂本さん。苦しさを吹き飛ばす元気……これが仕事を呼び込む源かもしれない。お話をうかがっている間中、苦しい、大変だ、仕事がない……といった後ろ向きの言葉がまったく聞かれなかったが、これは苦しくない……というわけでは決してないと思う。社員に対する社長としての矜持だろう。

  同社はまた、早くからデータによる管理を導入し、独自のシステムを作り上げていることでも知られている。それが、ITの導入でさらに高度化し、緻密に行われている。

  同社には、東京本社工場( 15 名)のほかに、岩手工場( 70 名)、矢巾工場( 38 名)、青森工場( 33 名)の4工場がある。全部で 156 名の社員がいて、 17 名の班長がいるが、本社にいる社長から班長さんへの指示や報告はすべてメールで行われる。現場で仕事をしている班長さんが、パソコンを使って進捗管理や在庫管理や工程管理を行い、品番ごとに編成や配置を決めているのである。

  これが出来るのは、製品ごとの必要工数や作業者の能力がきちんと把握されているからで、こうした高いレベルで管理ができるのも、データが緻密に取られているからなのだ。


東京本社ビル 班長さんたちの課題作品  
5階建てと3階建てが隣り合っている東京本社ビル。   会議室に掛けられた17着の上衣。班長さんたちの課題作品である。  



高い技能は明確な評価から一人一人の技能をデータで管理

 取材で東京本社に伺った日、会議室には 17 着のフォーマルの上衣が掛けられていた( 写真参照 )。各工場にいる同社の 17 名の班長さんたちはすべてサンプル縫いが出来る高い技術を持っているが、その班長さんを対象に、年に何度かトップから丸縫いの課題が出される。その提出作品である。

  各班長はそれを自分で裁断・縫製し、サンプルとして完成させて提出する。提出された作品は社長自らが審査員となって綿密にチェックされ、1位~ 17 位までランク付けされる。各作品は改善点があれば正しいやり方が添付され、班長の元へ戻される。班長クラスの技能向上を目指す研修プログラムである。

  こうしたことで、各班長の技能習得状況は手にとるように把握されているが、一般の技能者もこの点は同様である。一人ひとりの技能習得状況が工程ごとに5点法で評価されており、全員に公開されている。チェックポイントは、品質とスピードである。しかも、こうした評価の記録データは蓄積されており、前回の習得状況、1年間の伸びなどが簡単に見られるようになっているのである。

  「社員一人一人の技能習得好況はすべて把握されています。一人一人はいま、どの工程がどのくらい出来て、どの工程が出来ないのか、データが作られていて、全員がそれを知っています。それが分かるから自分で技能を向上させる意欲が生まれるんです」と岩手工場を担当する専務の会場政之さん。


ていねいな指導 技能習得表  
課題作品をチェックし、コメントをつけて班長さんに戻す。ていねいな指導が研修効果をいっそう高める。   一人一人の社員の技能レベルがひと目で分かる技能習得表。  


データ重視で緻密な管理

 トップレディさんが作っているアイテムは、東京本社が布帛・ベルベットのスカート、岩手工場が布帛のスーツ、ジャケット、ベルベットのジャケット、スカート、矢巾工場が布帛のスーツ、ジャケット、ベルベットのワンピースとスカート、青森工場が布帛のスーツとジャケットである。

  基本的に受注は各工場で行い、セット物のボトムは本社で作ることが多い。仕事の平準化は各工場で行い、負荷状態を見て工場間でやりくりをする。そうしたことが出来るのも、ITを利用して、データが管理されているからでもある。

  具体的にいえば、得意先別・班別の売上管理から進捗管理、達成率、工賃票、工程分析表、社員の技能習得表、受注-納品-返品-再出荷といった品番ごとの在庫管理、まで、データがパソコンで管理され、社員にも公開されているのである。データ公開は、給与配分の労働分配率まで及び、「役員報酬もかつては 10 数パーセントだったのですが、いまでは一桁台、賞与もゼロ。社員が信頼してくれないといけませんから、車なども社費ではなく私費で買います」と坂本郁三さん。こうした姿勢は社員にも浸透して、日曜日に工場で服を作るなど研修にも熱心に取り組む。

  文化服装学院でデザインを勉強し、卒業と同時に会社に入った工場長の坂本健二さんは「おかげでいい勉強させてもらっています」という。データ重視と誠実な姿勢は、同社の経営の骨太な柱になっているようだ。

パート図 生産の進捗と流れを記したパート図。
これを見ると全工場の負荷や進捗状態が
明確に把握できる。
通称、”謎の巻物。“

工場内02 工場内03 工場内04
本社工場ではボトムを担当する。岩手工場が受注したスーツのボトムを作ることも多い。裁断後の生地が送られてきて仕上げ、岩手工場に戻してセットにされる。ミシンの横には工程分析表と作業指示書が掲示され、生産数、タクトタイムなどのデータが記されている。

代表取締役社長 坂本郁三さん
代表取締役社長 坂本郁三さん
専務取締役 会場政之さん
専務取締役   会場政之さん

本社工場長 坂本健二さん
本社工場長 坂本健二さん

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