JUKI Magazine PageNavigation

JUKI Magazine Contents

REPORT[マザー工場]
量産は中国、固定した生産基地より”調達”で、
課題は独自商品の開発と在庫ロスの解消
㈱ゴールドウインテクニカルセンター 常務取締役 谷田 一郎さん
取締役 生産事業統括部 川端 亀三郎さん
㈱ゴールドウイン 人事総務部・人事総務富山グループ 長谷川 守さん
スポーツウエアの開発で常に先鞭をつけてきたゴールドウインさんが、今年新たな組織改革を導入し、将来を見据えた体制の構築を進めている。中国製品が市場にあふれる中で、目標を「日本で、私たちにしかできない商品をいかに“創る”か」とさだめ取り組んでいる。

メーカーであることを自覚し、新しい価値を生み出すことを目指す
 1999年に同社は組織を改革し、機能別に編成した。開発・設計・調達を担当する会社として㈱ジー・アール・ディを設立し、製造を㈱トヤマゴールドウイン、システムを㈱ゴールドウインシステムサービスが担当。機能ごとに専門化し、独立させることで、業務推進の効率を高めようという狙いであった。

 この改革で実現した各部門の効率化を踏まえ、2003年にはさらに一歩進めて、未来に向けた全社的な組織改革を導入した。

 「いま、私たちに重要なのはコストではなく、私たちが、メーカーであることを自覚し、市場の動きにすばやく対応して、独自の商品を開発することです。そのためには開発スピードは速くなければならない。開発を早くするには、各機能が一体となって作業を展開する必要がある。テクニカルセンターには、素材などの調達・試作設計・QC・生産……とマザー工場として必要な体制があり、企画から商品化までを短期間で進められるように組織を編成しました」と改革のねらいを語る同社常務取締役の谷田一郎さん。

 テクニカルセンターは、同社のマザー工場として、“作る”ではなく“創る=開発”を担当する。時代によって消費者の求める価値は変る。「創るためには、いったいどのような商品が市場で求められているか、常に市場を見ていないと肌で感じることができません。これまで、アパレルは感性だといわれながら、あまりにコストにとらわれすぎました。コストも重要ですが、それ以上に、独自性や楽しさ、新しい価値……を生み出すことが重要なのです。そうしないと、日本のアパレルの先は見えません」と谷田さん。

 同社の改革の話は、そのまま日本のアパレルの将来に通じそうだ。

ゴールドウィンテクニカルセンター01
物づくりを集約した“開発”の拠点となる“マザー工場”、ゴールドウインテクニカルセンター。
  ゴールドウィンテクニカルセンター02
1つのフロアーに全事業部の開発部門と調達部門が机を並べている。事業部間の壁はなく、コミュニケーション優先のレイアウトになっている。稼動するCADは約50台。企画・開発のスピードが身上だ。
 

調達/開発/設計/品質が一体になった組織情報の即時流通で開発スピードが向上
 こうした体制を作るために、同社は思い切って組織改革を行った。新しい組織は、9つの事業部がタテ割りの事業部制になっていると同時に、事業部ごとの調達・試作設計・生産……機能が横に串刺しにされていて、全体がマトリックスのようになっている。

 これまでいわれてきた事業部制の弊害、事業部間のコミュニケーションの悪さが、この横ざしの組織化で解消されているのである。職場も、大きなフロアーに事業部ごとに調達と試作設計が一まとめにされているが、同じフロアーに全事業部が同居しているために、自然に情報が全体に流れるようになっているのだ。たとえば、ある事業部で静電気がテーマになると、それはすぐに他の事業部にも応用されるという具合である。

 「これまではある事業部で新しいことをはじめても、他の事業部にまで知らせるということがなかなかできませんでしたが、これでそれは解消されました」と横串の生産事業を統括する取締役川端亀三郎さん。生産を担当する立場から言えば、作るから創るへ、いわば規格から企画への転換である。頭の切り替えが必要だが、「私たちがメーカーであることを前提に、多品種少量生産の中で、いかに短納期を実現するか、そのシステム作りが求められているのは変らない」と川端さん。

ゴールドウィンテクニカルセンター03
同社の商品を愛用するお客さんは、長年着ていて愛着を覚えると修理を依頼されてくる。7年前の商品が修理で戻ってくる……などは珍しくない。メーカーの高い品質・機能の証明でもある。工場のすぐ横に修理担当がいて情報は生産・開発にフィードバックされる。
  ゴールドウィンテクニカルセンター04
マザー工場で活躍するサイクルマシーンAMS-224
 

中国に求められるのは市場対応型工場。固定的な量産工場はいらない!より創造的な会社こそ、将来の姿!
 同社の改革の合言葉は、独自の企画とスピードである。これはそのまま日本のアパレルにも通じるが、同社は、短納期のためには、中国での固定的な量産工場は必要ないという。生産は中国へ……となびいている日本のアパレルの流れに逆行するような考えだが、同社の主張は、太い一本の線が貫かれている。

 「理由は2つ。ひとつは納期が長くなる分、どうしても在庫が必要になり、リスクが高くなること。二つ目は、繁閑の山谷が生まれ、その管理が必要になる」(谷田さん)。

 そんな弊害があるなら、量産は中国では自社工場でせずに調達に徹し、その分を国内での開発や短納期のシステム作りに力を入れるべきだというのが同社の主張である。

 この考えの基本にあるのは、メーカーとして、作るより“創る”に徹するという強い意志である。「それが、ゴールドウインの企業文化です」と広報担当の長谷川守さん。

 「メーカーである以上、新しい素材を導入し、新しい設計を試み、市場に先駆けて商品を提案する……ことを最優先した仕事の仕方をすることが必要なのです。幸い富山には染色や繊維産業の基盤があるので素材開発の立地もいい。中国との付き合いも、日本から技術を提供するばかりではなく、私たちも中国からもらうものがあってもいい。中国で調達するということは、中国にあるものを私たちがもらうということにもつながります」と谷田さん。

 言い換えれば、中国工場では品質・テイストなど満足できないということかもしれない。

 日本のアパレルは閉塞感を感じているが、谷田さんは、「日本には設計技術、縫製技能、縫製のシステム、QC技術……など優れたものがたくさんあり、それらのどれもが商売になるはず。ただ、服を縫って商売にしようと考えるのがおかしい」という。

 この言葉、日本のアパレルの閉塞感を破る重要なヒントが含まれているのかもしれない。

ゴールドウィンテクニカルセンター05
こうした品質・機能を保証するためには素材や商品の試験、検査は不可欠である。恒温恒湿が保たれた検査室には様々な試験設備が揃えられている。
  ゴールドウィンテクニカルセンター06
糸を使わない溶着技術や、軽量のゴアテックス素材……なども新しく同社が開発した技術だ。マトリックス組織の編成から、こうした新しい技術がどんどん生まれている。
 
谷田一郎さん
「中国に必要なのは市場に対応できる工場。量産だけの固定した工場は在庫リスクが大きい。」常務取締役谷田一郎さんの言葉には熱気がある。

川端亀三郎さん
「私たちがやろうとしているのは、“作る”ことではなく、“創る”ことです。そのためには、考え方を大きく切り替えないと」と語る取締役川端亀三郎さん。

長谷川守さん
「モノづくりはゴールドウインの企業文化でもあります」富山グループで広報を担当する長谷川守さん。










㈱ゴールドウインテクニカルセンター
・資本金:6000万円
・業務内容:スポーツウエア企画・製造・(販売)
・売上高:23億8300万円(計画)

JUKI Magazine PageNavigation