JUKI Magazine PageNavigation

JUKI Magazine Contents

vol.216特集1
スローファッションのすすめ
 
翻訳家・コラムニスト 実川 元子さん
実川 元子さん
 私は下北沢という街で暮らしているのだが、ここは小劇場やライブハウスがたくさんある関係上、役者やミュージシャン(とその卵たち)が大勢生息している。また賑やかな繁華街の周囲には、何世代にもわたって住んでいる人たちの古い家が並び、商店街の昔ながらの小さな店では主婦たち(含:私)が買い物をしている。文字どおり老弱男女が混じりあっている街である。
***
 下北沢が特殊かというと、実はいまの日本にはこんな街が増加しているのではないか。「今年のパリでは、ミラノでは、ロンドンでは○色の××が注目されています!」とマスコミが伝えるファッション情報にはまったく無関心で無関係な人たちが、それでも自分たちなりのおしゃれをゆったりと楽しんでいる小さな街である。ファッション雑誌にはまちがっても掲載されないが、その街なりの「流行」というのもきっとある。だが流行のスパンは五年くらいと長く、三年も四年も同じものを着続けてもまったくおかしくない。
      
 海外高級ブランドを目の玉が飛び出そうな大金を払って買うOLばかりが「ファッションに関心のある人たち」として雑誌などで紹介されているが、そんな欧米発信ファッションにとらわれた人間はこれからごく少数派になっていくだろう。海外コレクションで発表された服を、毎シーズン買うなんて人もこれから減り続けるにちがいない。それでは服がまったく売れなくなるかというとそれは大マチガイで、むしろ着るものの消費は着実に増加すると私は予想している。ただし、それは流行服ではない。
***
 むしろ人は人、私は私で着たいものを着るという、よく言えば成熟した個性重視のファッション精神、悪く言えばやりたい放題の自己中心的服装が幅を利かせる時代がすぐそこに迫っているような気がする。つまり日本全国に下北沢的ファッションが蔓延する状態になりかねない。そうなると多品種少ロットとはいえ、めまぐるしく流行を変えて量的な消費を促すいまのファッション業界のやり方では、当然通用しなくなってくるわけだ。
      
 それぞれの地域で生産される素材を使った郷土食を見直し、ゆっくり食事を楽しもうというスローフード運動はイタリアに始まり、いまでは世界中に会員がいるそうだ。ファッションの世界にもスローフードの考え方が浸透していくのではないか。世界中どこにいっても、欧米の大都市から発信された流行情報に乗っ取って、毎シーズンごとに新しい服に着替える人が「おしゃれ!」「ファッショナブル!」と賞賛されることに違和感を感じている人たちは多いはずだ。私が考えるスローファッションとは、めまぐるしい流行を追いかけることにではなく、自分が暮らしている環境と個人的な嗜好に一番しっくりくる服装を選ぶことのほうに、時間とエネルギーとお金を使う、ということだ。
***
 私はどんな服を着たいのか? 着ていて楽な服? 目立つ服? 気分を高揚させてくれる服? その服を着て誰とどこを歩くのか? 何をするのか?――そんなことをもう一度見直して、装うことの楽しさをちがう観点から探ってみる。スローファッションの第一歩はそこから始る気がする。
~詳しくは本誌をご覧ください~

実川 元子さんの
コラム“極私的流行コラム”や
日記“二人でお酒を・・・”などが掲載されています

実川 元子さんの魅力満載のホームページを
ぜひご覧ください

URL:http://www.motoko3.com/
実川 元子さんのホームページ
イラスト:桜井 ユカ(http://www.art-will.com/) 実川 元子さんのホームページ

JUKI Magazine PageNavigation