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vol.215特集1
<JIAM2002-JUKIのめざすもの>
 
新世代のニーズに合わせたハード/ソフトを提供
お客様の悩みを解決する“鍵”があります。
 
JUKI株式会社 専務取締役,工業用ミシン事業部長 杉原 靖男
杉原 靖男
ケルン展の再現を目指して 注目されるクォーター制度の廃止後 JIAM2002開催の背景
JUKIのJIAM展のねらい ネットワーキング 中国で万全のサポート体制を確立
消費市場としても魅力的な中国    

ケルン展の再現を目指して

 展示会もいろいろとありますが、タイミングや場所、その時のビジネス環境などで、展示会が成功するかしないかが決まります。 前回のJIAM展が1999年に東京で行なわれまして、その時は、中国、東南アジア、台湾、韓国からお客様が多くお見えになったと記憶しています。その中で台湾、韓国のお客様が中米・東南アジア・中国へ進出するといった案件があったように記憶しています。当時、もう産地移動で空洞化が始まっていたアメリカ、北米、ヨーロッパからも大手の縫製工場のお客様がかなりお見えになっていました。日本の縫製工場も空洞化が進んでいましたが、今みたいに代理店が倒産しているということもなく、まだ健全な経営をされていたのが、ちょうど3年前の1999年のJIAM展ではないでしょうか。

 翌年2000年の5月にドイツのケルンでケルン展がありました。IMBという展示会です。このとき、ほぼ全世界からきましたが、もちろん地元ヨーロッパのお客様の他に目立ったのは中国、東南アジア。東南アジアの中でもインド、バングラディッシュ、パキスタンとインド圏でした。もちろんマレーシア、インドネシア、タイなどもですが。その時はJUKIでは新商品を多く展示しました。展示した60数機種の内の65%が新商品で今回のJIAMショーとだいたい同じ規模。ショーとしては大成功で、2000年から2001年にかけての工業用ミシンのブームに上手くつながり、近年にない大成功でした。

注目されるクォーター制度の廃止後

 2000年、2001年のブームは東南アジアが中心でした。JUKIでいうと60万台弱売れた販売の記録を作った年です。JUKだけではなく、全世界のミシン屋が多く販売した年で、ちょうどタイミングがあって、ケルン展は大成功しました。ですから2002年のJIAMショーも2000年のケルンショーにあやかりたいと思っています。

 昨年8月のアメリカ・フロリダ州オーランドでのボビンワールドは、逆に散々でした。お客様が入らなかった。

 アメリカが景気後退し、お客が移った中米・南米からお客様が来るだろうと思われたが、そこからもお客が来ない。8月のオーランドというのは異常に暑くて、タイミングが悪かった。タイミング、ビジネス環境としては最悪でした。

 このボビンショーの3カ月あと、2001年11月に、中国の上海で上海展がありました。これはボビンワールドとは対照的に、お客様が溢れるくらい来られた。中国の縫製産業の絶好調を象徴するような展示会でした。中国はWTOに加盟して縫製工業がどんどん発展するだろうと予測してどんどんお客さんが入った。WTOに加盟すると投資環境がよくなる。いろんなところから投資が促進される。それを見込んで投資をした。中国が大市場だという事は皆さんご存知で、2004年にアメリカが全世界にひいているクォーター制度(輸入割当制度)を撤廃すると宣言している。そうなると縫製業はどこで作ってもアメリカに自由に輸出できるという環境に変ってくる。
 アメリカサイドから見たら、どこから輸入するかによって、関税が0から最高の30%~40%という違いがある。どこで物を作り、どこから輸出するのがいいのか。賃金とか商品の品質とかから考えると中国が一番いいのではないかという意見がある。中国は最恵国待遇があり、関税はミニマムで品質賃金等のバランスが一番よい、クォーター制度(輸入規制)が廃止されれば、中国に集中するだろう。

 同時に中国は大きな国で13億の人間がいるので、輸出だけでなく、国内需要を対象にした縫製業も発展するだろうということで、中国の縫製業は今後も期待できる。それが2001年の上海展でわかった。ただ、上海展では、お客さんのほとんどがミシン代理店さんで、縫製工場の人が少なかった。そういう点で私たちとしてはちょっと物足りなさを感じた。今後、中国でのミシンの展示会は年々拡大していくだろうが、お客さんの質が変らない限り、物足りなさは継続するのではないか。それがケルン展、日本のJIAM展との違いかもしれない。

 それと、上海展で感じたのは、中国ミシンメーカーの発展で、今後の脅威ですね。展示しているミシンメーカーが多い。しかし、模倣ミシンが多く、特許とか意匠登録の問題が今度出てくる。

JIAM2002開催の背景

JIAM2002

 3年前のJIAM99と比べると環境が大きく変った。どんな背景でJIAM2002年が行なわれるかというと、

世界最大の衣料品の消費市場のアメリカの景気回復が定かでない。まだ不景気から脱却していない。これは縫製業界、ミシンの販売動向を左右する要因。同じく開催国の日本の消費市場も相変わらず冷え込んだ状態でお客さんの購買力を発揮する状況ではない。
他方 "品質はある程度のもので値段は極端に安い"そういう衣料品がかなり国内で大きなシェアをもってきてしまった。スーパーも同じようなコンセプトで商品を投入しており、低価格商品がかなり浸透している。
衣料品の消費市場で見ると中国ですね。13億人の個人個人の生活レベルは裕福な生活水準ではないけれど、ポテンシャルが非常に大きなものがある。現にお金を持っている人は、高価格の衣料品を買える状況になっている。上海辺りでマンション、アパートを買うのがブームになっている。車も安い車でなく、高級車を買う需要が出てきている。そうなると衣料品も安いものではなく、質のいい・高いものを販売できるのではないか。背広だとか、女性の下着だとかワイシャツだとかが中国の中での消費市場を対象にしたものとして出てくるのではないか。
生産基地として中国は世界最大の縫製品の市場には変わりない。それが急速に拡大している。中国の縫製人口というのは、500万人といわれている。5年後には、ちょうど5割増の750万人まで成長するだろう。私共のミシン市場も5割強が、中国。作るほうも、売るほうも5割強。縫製基地としても世界最大の産地となると思います。
他の縫製産地の状況としては、縫製企業はいろいろな形で移動する。最初は安価な賃金を求めてアメリカから香港・韓国・台湾へ、さらにインド・フィリピン・ベトナムに移動した。そして、さらに賃金プラスアメリカの向けのクォーターがあるかないか。最初はクォーターのないところへと縫製工場が動いている。クォーターが割り当てられると、クォーターに余裕のあるところへ行く。それが第2次の縫製企業の産地移動。最近はクォーターがなくなった2004年以降に何を理由に産地移動が行なわれるか。もちろん低賃金は一つの要素であることは違いないのですが、もう一つはアメリカ向けの関税がポイントになる。関税がどのくらい掛けられるかによって産地移動が起こっている。

 私たちのミシンがたくさん出ているインド・バングラディッシュ、タイは、アメリカサイドで関税をフルに掛けられていて、高いものでは40%になる。今後クォーターが撤廃されてどこからアメリカに輸出できるようになっても、インドから輸出すると30%~40%関税がかかってしまう。バイヤーは徹底的にコストダウンを要求するが、製造工程でのコストダウンには限界があり、関税を含めた流通コストをミニマムにしようと
関税のかからないところから輸入する道を選択するようになる。

 関税のかからないところは、中米でいうとNAFTAのメキシコ、そしてカリブ海諸国ホンジュラス、サルバドス、ニカラグア、グアテマラ、ドミニカに対してはアメリカの一種の経済援助で関税が0。中近東で唯一アメリカ・イスラエルと国交を持っているヨルダンからアメリカ向けに輸出した商品については、関税を掛けないという措置が取られている。コストにめざとい香港と台湾は関税0%で、人口400万人、500万人の所に縫製工場が集中する。アフリカに最近アフリカの貧しい国を救済するために一定の条件を満たせばそのアフリカの国から輸出したら関税は0%というAGOA諸国があり、マダガスカルやケニアとかアフリカの小さな国に縫製工場が進出していく。 

 アフリカでも動きが活発で、従来スリランカにあった縫製工場がマダガスカルに行き、ドバイにあった縫製工場がケニアに動くとか敏感です。最恵国待遇でいうと、去年の年末にベトナムをアメリカが最恵国待遇に許可した。ベトナムで作ったものをアメリカに対して輸出すると関税は最低の関税率になる。ベトナムは賃金が安い。今のところクォーターがない。関税もないということで縫製工場が集中する動きがある。従来の賃金に代わって今後は、クォーター+関税によって、動きが激しくなる。このことも2002年JIAM展の背景の一つとなっています。

JUKIのJIAM展のねらい----Find Your Best Solution

 工業用ミシンのメーカーサイドからいうと工業ミシンの生産が中国に大分シフトしている。これはJUKIだけでなく日本のメーカー、韓国・台湾メーカーを含めて全部そうです。特に本縫ミシン、オーバーロックミシンなどベーシックなミシンは、できるだけコストを安く作りたいということから中国に移っている。

 私共のミシンの流通についても、動きが始まっています。ミシンディーラーさんを通しての販売が過去何年も続いてきましたが、アメリカや日本で縫製業が衰退するとミシンディーラーさんが持ちこたえられなくなり、廃業するという状況が出てくる。しかし、エンドユーザーさんはサポートが必要ですから、必然的に工業用ミシンのメーカーとしては、エンドユーザーさんとの接触を強めざえるをえない。好むと好まざるとメーカーと縫製工場、メーカーとお客さんとのつながりが緊密にならざるをえない。

 今度のJIAM展にどういうお客様が来るか、一つのポイントになると思います。消費市場や生産基地の環境が変化するなかで今回のJIAM展が行なわれる。エンドユーザープラス元気な代理店さんは、メーカーに何を望んでいるか。お客さんの問いに答えるのが、メーカーの責任ではないでしょうか。 杉原:今回のJIAM展に英語でキャッチフレーズをFind Your Best Solutionと入れているのですが、皆さんのお困りの事について解決の糸口を差し上げたいと思います……ということです。ドライヘッド・エンド・インテリジェント・ダイレクト-ドライブ・イノベーション。お客さんが何を困っているか。お客さんが困っていることの解決するようなミシンを提供しましょう。その流れがドライヘッドのミシンであり、ダイレクトドライブのミシンである。〔ドライヘッド・ダイレクトドライブミシン〕

 今の縫製品はある程度の品質を維持して安いという流れと高品質を追求するという二極化している。最近中国、香港に出張した際に、アメリカのKマートが会社更生で潰れたという点について縫製業界に大きな影響があるのではないか、ということを大手のアパレル工場に聞いてみた。答えは、"たしかに縫製業界には大きなニュースだが、自分達の商売にはほとんど無関係である。というのはKマートで扱っている商品と自分達が作ってアメリカのバイヤーに売っている商品とは品質の格差がある」ということだった。

 その辺から話を類推していくといい商品を作って、いいお客さんを捉えている所は、アメリカが不景気だといっても商売をこなしているのではないかということです。とはいえ、共通していう事は、商品の値段を徹底的に削減することが求められているということでした。コストの削減も色々とあって流通のコスト、素材のコスト、加工費の削減、生産性の向上あるいは、不良品を出さないで歩留まりを向上させてコスト低減を図る……などをやっている。そんな中で、縫製の現場では、油汚れが悩みの種になっている。これを解決する策として油を使わないドライヘッドミシンが有効ではないでしょうか。

 また、生産性向上には注文を受けてから出荷するまでのリードタイムの短縮が重要です。機械でいうならばミシンのダウンタイム、止まっている時間をなくす。つまりは壊れないミシンをお客さんが欲している。

 さらに縫製だけでコストダウンをしようとすると難しい。いきつくところまでいってしまった。そこで勝者になるためには、紡績(スピリング)、紡織(ウイビング)、染色(ダイイング)から縫製まで一貫してやろうという発想が出てくる。そうしなければコストダウンにつながらない。こういう発想なんですね。そうすると小さな所が淘汰されて大きい所に吸収される。大きい流れはそういうものもあるのかも知れない。中国では紡績以前の綿花栽培から自分達の企業でやってしまう。そこで取れた綿花を紡いで糸にして布にしていく。一貫作業というのは、そういうところまでやるという事なのですね。

ネットワーキング

ネットワーキング

 今まで綿花とか紡績、紡織をしていたところが、縫製工場にでていくとか。今まで縫製工場をやっていたところが、行き詰まって上流までさかのぼるとか。そんな傾向も表れてきているのではないか。

 お客さんの状況にすると、お客さんの製造基地が複数化してきている。例えばその一つを日本だけでなく、中国とインドネシア、ベトナムでやります。中国も上海だけでなく、奥地でも作るし、北のほうでも作ると、国をまたいで縫製工場がある。これにはいろんな条件があると思います。一つには、リスクの分散化というのがお客さんサイドにはある。万一中国で何か発生したら、ベトナムでカバーする。ベトナムに部品工場を確保していて、そうするとアパレルが日本に本社を持っていて、作るのは中国・ベトナムとその他の国という具合で国、地域をまたがるという流れがある。そうすると情報の伝達を迅速するた為には、縫製工場間をむすぶネットが必要ではないか。一言で言えばネットワークでITを活用した情報伝達の必要性が高まる。そして、それを応用したミシンの必要性が出てくるのではないか。電話回線を使った情報伝達がJIAM2002年につながるのではないかと思う。

 これまでは、単に1台のミシンで縫製という事を効率化するかということがテーマだったのですが、縫製化をめぐるいろんな状況を広く捉えて、縫製の作業と経営のレベルに役立つ情報を提供しようというのがネットワークの発想です。一つにはJIAM展の中にネット、ITコーナーというのがある。情報の流れをいかにミシンに応用するか。情報をいかに的確に縫製工場間で伝えるかという事が、新しい知識技術ということにつながるのではないか。リードタイムを短縮するとか、在庫を少なくするとかそういう面で川上から川下とそういうつながりは重要になっていくと思う。

中国で万全のサポート体制を確立

 環境としてはあまりいい環境ではない。ただ、ここ2002年に入ってからの動きを見ていると中国のビジネスが急速に拡大している。中国のビジネスが悪くなったのではなくて、非常に安定していたものが一段と飛躍するだろう。そういう兆候が見られる。東南アジアが多少良くなっていますね。あとヨーロッパが堅調ですからアメリカの景気が本格的にここ1・2年で回復するとなるとそれがすべてプラスに転じますのでかなり期待してもいいのではないかと。

 今後、JUKIが進出することで、東南アジアを含めて中国の市場で、サポート、サービスが重要になってきますが、中国や台湾、韓国、日本を含めてミシンメーカの中でJUKIは最大のサービス網、販売サービス網を持っていると自負しています。中国の中に日本人のいる駐在拠点が、10箇所あります。その10箇所に5、6店サテライトの店で、サービスセンターと呼んでいるもの。それを構築しつつあります。そうするとそれが完成すると全中国でサービスセンターと呼ばれるものが40~50カ所できるようになる。サービスセンターには、現地人のサービス要員を置くわけです。それだけやっても広い中国ですから、サービスを徹底するのは難しいのですが。

 今後、販売は中国サイドにシフトしていく。製造も半分以上は中国生産。将来を考えると、開発も必ずしも日本でなくてもいい。特に中国で作ったミシンのメンテナンス、開発上のメンテナンスは中国でやって充分でしょう。その意味では中国での開発については、かなり力を入れています。

消費市場としても魅力的な中国

 JIAM展では、Find Your Best Solutionということで、お客様に対するカスタマーサービスをおこなうコーナーを設けて、お客様のいろいろな要望や疑問をお受けして、その場で相談に応じようと考えています。

 正月休みに日本の大手の企業さんをお訪ねしたのですが、日本のアパレル・縫製業者が、元気がないというのではないのですね。元気はあるのです。問題は、どこで作っているのかということなんです。産地を日本と限定すると力強さがない。お客様の90数%までが海外生産と何か結びついている。  

 アパレルさんにとっては日本で作るか、中国で作るか全くお構いなし。伺っていると、ほとんどが中国で製造を展開していると言う話です。パーセンテージの高いところから低いところまでいろいろです。そして、今後は日本のアパレルが中国で作って中国で売るという傾向が出てきている。中国市場は、魅力なんですよね。中国でも、流通に対する規制がよくなってくる。将来は自分達だけでも流通できるようになるかもしれない。中国人は良い物とブランド物は好きですから、高級品も中国市場で売れるようになります。

 中国は生産基地としてだけでなく、消費市場としても非常に楽しみな地域になりますね。そのスタートがこのJIAM展ということにあるのではないでしょうか。

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