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特集:不況下でも元気な企業/安徽省 中国服装産業状況 トップインタビュー1

特集:不況下でも元気な企業/安徽省 中国服装産業状況 トップインタビュー1
安徽馬鞍山分公司の生産性向上へ
重機(中国)縫製研究中心のサポートで改善(KAIZEN)活動

大同利美特(上海)有限公司
総経理 塚原 淳
大同利美特(上海)有限公司 総経理 塚原 淳
大同利美特(上海)有限公司 総経理 塚原 淳

 日本ダイドーリミテッド公司は1879年創業、130年の歴史をもつ紡績・染色・織布・整理・縫製の一貫製造・販売会社である。自社ブランドの紳士・婦人服の小売りも日本と中国で行っている。1979年には美国のトラディショナルスーツ品牌"BrooksBrothers"と合弁で同品牌品の日本販売会社を設立した。1995年には大同利美特(上海)を設立し、日本で培った生産技術のすべてを中国に移植した。2001年には縫製部門の第2工場として安徽省に馬鞍山分公司を稼動させ、紳士スラックス、婦人上衣、紳士オーダメード、紳士上衣の生産を上海から順次移管している。今では日本国内に工場はない。今後、縫製事業では労務コストが上海より有利な馬鞍山分公司を生産拠点にする考え。そのために重機(中国)縫製研究中心のサポートを受け、生産性向上に取り組んでいる。
安徽省にある大同利美特 馬鞍山分公司
安徽省にある大同利美特 馬鞍山分公司

効率アップチーム
効率アップチーム

高速電子閂止めミシン(鳩目穴閂止め) LK-1901ASS
高速電子閂止めミシン(鳩目穴閂止め) LK-1901ASS

ベルトループ付けミシン LK-1902ASS
ベルトループ付けミシン LK-1902ASS

本縫自動玉縁縫機 APW-196
本縫自動玉縁縫機 APW-196

上下差動送りオーバーロックミシン MOR-3904
上下差動送りオーバーロックミシン MOR-3904

一本針本縫自動糸切りミシン DDL-8700-7
一本針本縫自動糸切りミシン DDL-8700-7

工場風景
工場風景


大同利美特(上海)有限公司
住所:上海市松江区方塔北路618号
電話:021-5774-0088
傳真:021-5774-3573
【馬鞍山分公司】
住所:安徽省馬鞍山市紅旗南路8号
電話:0555-221-8050
傳真:0555-221-8229
"領域""信用"に加え"効率"を徹底追求

 ダイドーリミテッドの経営のキーワードは"領域""信用""効率"の3つである。まず企業領域は得意な繊維《羊毛》を縦軸とし、"牧場から小売り店頭まで一貫したクォリティメーカー"と定めた。信用はメーカーである以上、製品の《品質》に対するものが基本である。中国の生産において、"今まで品質を最重要視して取り組んできたこと結果、ブランドの認知度も高まってきており、一定の成果を得ることができたと判断している。今後の課題は効率だ"と塚原淳総経理は指摘する。
 操業開始から13年経過した上海の第一工場は日本の技術を継承する段階を超え、独自技術を開発する段階に踏み出している。しかし馬鞍山分公司の縫製部門の生産効率は上海に及ばないのが実情だ。"労務コストは上海より馬鞍山に優位性がある。しかし生産性が低いまま生産を移管したら優位性が相殺されてしまう"。
 一貫工程のなかで、紡績や染色、織布、整理は比較的装置産業的な側面があり、労働コストが高い上海でもまだ競争力を発揮することが可能だ。しかし労働集約産業の象徴である縫製はそうはいかない。しかも大同利美特の製品は単品大量生産型ではない、熟練した多能工が手作業も多用して作り上げていく。馬鞍山分公司の生産性を上海の第一工場以上に引き上げることは戦略的に重要な課題である。


生産性向上で10%の利益増を

 ダイドーリミテッドが日本で縫製事業に進出したのは1964年である。それ以来、縫製工場の主力設備はJUKIを使っている。JUKI縫製能率研究所(現縫製研究所)の力を借りて社内に縫製工場管理のプロフェッショナルを育成し、国内6工場の生産性向上を進めたという。塚原総経理も以前、JUKIの那須研修センター(栃木県)にて2ヶ月の研修を受け、各種設備の技術と生産管理を勉強されている。その経験もあり、馬鞍山分公司の生産性向上にも重機(中国)縫製研究中心のサポートを受けることにした。目標は生産性向上により利益を10%引き上げることである。
 2008年2月には3日間、同11月には2日間、班長、組長を対象にした研修会と現場でのOJTを実施した。大同利美特(上海)の服装生産部長で馬鞍山分公司長を兼ねる呂群欣さんは「たいへん勉強になった」と振り返る。そして2009年2月~5月にて、毎月工場診断を実施、生産管理面の仕組み作り、レイアウト変更等の改善活動を実施している。馬鞍山分公司王軍次長は「どこに無駄があり、生産効率を低めているのかが具体的に見えてきて、何をするべきかがよくわかった」と語る。
 工場診断の結果、明らかになった問題点は次の諸点である。

  • パーツを探す、仕分けをする無駄
  • パーツが足りなかったり、前工程から半製品が流れてこないための時間待ち
  • 連続する工程間が離れているための運搬、移動
  • 縫い直しの多発
  • お茶を飲むための離席
 その原因を分析すると、(1)仕掛品が多い(2)作業バランスが悪い(3)レイアウトが最適でない(4)ルール徹底など作業者教育の不徹底--などが浮かび上がった。


改善活動1 ~工程分析作成からラインバランスの最適化~

 生産性向上の障害となっている問題点と原因が分かれば、後は改善(KAIZEN)に取り組むだけである。実際の作業は馬鞍山分公司の最大品種、紳士スラックスの生産ラインから始まった。具体課題は、ラインバランスとレイアウトの最適化と仕掛品を減らすことである。
 ラインバランス最適化のためには、事前に工程分析を作成の上、作業分配を決定しておく必要がある。アイテム毎に工程分析を作るのは非常に手間のかかる作業であるため、バリエーション、柄を含めたマスター工程分析を作成した。また、定番アイテムについて工程分析を作り置きするようにした。これによって、新しい品番の工程分析作成に必要な工数は大幅に短縮することができた。
 次に工程編成について、工程分析に合せてまず各パーツ・組立のグループ人員配分を行い、グループ別(後身・前身・前立・ベルトループ・組立の5つ)に生産量のバランスを取り、さらに組立については一枚流しのため、各人の作業配分を行いラインバランスを取る。この作業についても、フォーマット作成により短時間でできるようになった。
 王次長が作成した作業分配によって班長は各作業者の担当を決め、作業を実施する仕組みが出来上がった。


改善活動2 ~どのような品番でも生産できる柔軟なレイアウト~

 レイアウト最適化も、品番によって作業方法が異なるため、それぞれに合わせた設備を決め、それを工程順に並べる必要がある。しかし、受注ロットは平均300枚と小さく、1日に1回は品番切り替えが発生する状況のため、1品番に対して設備選定・配置を考えるのは、実際に運用する上で現実的ではない。そのため、どのような品番でも生産できるライン設計を3月下旬に行った。ポイントは次の通り。
  • 必要最低限の設備(ムダな設備を排除)→20台以上の設備を撤去
  • 使用する設備は一番工数のかかる品番に合わせて決定
  • 各パーツ(後身・前身・ベルトループ・前立)・組立のグループ別のレイアウト
  • 組立投入に近い場所に完成品パーツをストック
  • 工程順の設備配置
  • スペースを必要最低限にして運搬距離を短縮する
  • 予備ミシンスペースに使用頻度の低い設備を配置
改善後のレイアウト
改善後のレイアウト
改善前レイアウト
改善前のレイアウト



仕掛品数量の削減によるリードタイム短縮と効率アップ

 最後に投入量を少なくし、完成品を出していくことによって仕掛品を減らしていった。ポイントとしては、(1)置き台を減らす→工程間(組立・パーツ)の仕掛量を減らす(2)仕掛の配置場所を決定(それ以外の物を置かない)して完成品パーツ仕掛量を管理しやすくして少ない状態に保つ(3)先入れ先出し→ものを探す・仕掛を分類するムダをなくす--が挙げられる。
 それにより、リードタイムが5日から2日半に短縮された。また、ものを探す・分ける作業、運搬・移動、作業待ち時間、応援作業、手直しがそれぞれ減少、作業の進捗管理もやりやすくなった
 紳士スラックスの生産数量は、今年1月から5月までで、20%向上した。さら年末までにあと10%引き上げる目標を掲げている。また、この今年後半からこの新しい生産の仕組みを紳士服上衣、婦人服などの他のアイテムにも展開していく。


作業員全員の意識改革を

 今後の課題は、紳士スラックスのラインで実証した生産性向上の経験を他のラインにも広げ、工場全体の生産性を引き上げることである。そのためには、工程分析から工程編成に至るノウハウ、スキルを班長に継承していくこと、作業員全員の意識改革が重要になる。
 上海の第一工場と馬鞍山分公司とを合わせ、縫製部門には約800人が従事し、年間約30万点を生産している。製品は自社ブランドが70%を占め、残りは他社へのOEMである。その製品は現状、60%弱が日本、40%弱が欧米へ輸出されている。今後は中国での高級スーツ需要の増加に伴い、国内向けの伸長が期待される。鉄鋼の都市として有名な馬鞍山だが、高級スーツの縫製基地も着実に大きくなっていくだろう。

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