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特集:TOPインタビュー

特集:TOPインタビュー
大連は、人材・エネルギーの両面で上海に勝る
若者が求める安価で多彩なファッションを提供したい


遼寧時代集団 営口金海港制衣有限公司
董事長 劉国慶さん

インタビュアー:
重機(中国)投資有限公司
華北・東北地区代表 高木康志
申洲国際集団控股有限公司 陳芝芬 副総経理兼製衣部経理

 1938年に始めた染色工場が98年からアパレル縫製を手がけて急成長、5工場で年間1300万着を生産する集団に成長。今後も、価格競争を先取りして若者に安価で多彩なファッションを提供したいと戦略をねる。
創業は1938年の染色工場
5つの工場で年間1300万着を生産


高木
御社は古い会社と伺いましたが創業はいつ頃でしょうか?
もともと当社は染色工場として1938年に創業しました。
高木
そんなに歴史にある会社とは知りませんでした。失礼しました。それで、アパレル縫製を始められたのはいつ頃ですか?
1998年ですね。縫製加工の仕事はまだ8年くらいです。
高木
どのようなきっかけで縫製業を手がけるようになったのですか?
当時はまだでしたが、いずれ中国がWTOに加入するという動きがあって、そうなったときには、貿易が自由になるということですから、ぜひ輸出入も手がけたい…ということで始めました。染色だけでは製品になりません。縫製加工を自分たちで行なうことで、直接輸出を行なうことが可能になりますから、それが目的でした。
高木
なるほど、それにしても縫製加工業を始めてまだ7、8年にしかなりませんが、既に5つの工場を持ち11,000人の社員がいらっしゃいます。
5つの工場ではどのような仕事をされているのですか?
それぞれ別の会社になっています。一つは金基制衣有限公司で、カジュアルスラックスの専門工場です。年間450万着を生産しています。水洗い、ストーンウォッシュなど特殊加工も行なっており、年間300万着の能力があります。
2つ目は営口金海港制衣有限公司で、スーツの上下を手がけ、年間300万着を生産。
3つ目が時代集団熊岳制衣有限公司でここでは婦人物を手がけて年間生産量は約200万着です。
4つ目は金洋制衣有限公司で、オーバーオール、ジーンズ、カジュアルシャツなど年間200万着を生産しています。
最後の5つ目が金州にある時代集団制衣有限公司で、各種のスーツなどを年間200万着生産しています。この5工場で生産する量は年間1350万着です。アイテムとしては、紳士・婦人のスーツ、ジーンズ、カジュアル、シャツ、パンツ…で織物製品はほとんど手がけていることになりますね。製品は100%輸出で、アメリカ、ヨーロッパ、日本、韓国向けで、アメリカが多いです。
高木
素材はすべて自社で染色されているのですか?
一部外注もありますが、基本的にスーツ、ズボン、カジュアル、デニムなどの素材は自社・合弁工場で染色を行なっています。
高木
WTOで輸出を…という縫製業を始めるきっかけのお話がありましたが、製品の販売先は海外が多いですか?
はい、100%輸出です。現状では、アメリカが50%、ヨーロッパ、日本が20%、韓国が10%です。数量・ロットで見ればアメリカが大きく、日本は小さいですね。今後ということで言えばアメリカを第一に、次にヨーロッパを増やしたいと思っています。
高木
自社で直接輸出をやりたいというお話がありましたが、現在は商社を介して行なっているということですか?
そうです。生産体制が出来ましたので、販売体制もそろそろきちんとやらないといけないと思っています。
高木
国内で販売するという方向はお考えではないのですか?
国内で販売するためには、ブランドが必要ですが、これまで国内でブランドを構築してきたアパレルはほとんど失敗しています。ヤンガー、杉杉…など10年前に立ち上げて成功したブランドはありますが、それ以降たくさんの人がブランドを立ち上げてきましたが、成功したブランドはほとんどない。国内市場で、成功するのはなかなか難しいと思います。
私も、国内で成功させる方法はないか…と2年ほど研究してきましたが、この道は簡単には通じない…ということが分かりました。若者は、いいブランドを少し持つよりも、安い商品をたくさん持って、毎日着替えたいんですね。市場も不安定ですし、若者は国内製よりも、喜んで韓国製を買っています。

これから期待できる大連
オペレーターの採用も比較的楽に


高木
工場を拡張されていますが、そのためにはオペレーターが必要です。人材は集まるのでしょうか?
いまのところ、人材を採用するのはそれほど難しくはありません。全部で11,000人ほどのオペレーターがいると、毎月何人かが退職し、出入りがあります。理由はいろいろですが、近くに電子工業の工場が進出してくると、社員はそちらに行きたがります。しかし、退職したオペレーターの補充は、それほど難しくはありません。募集すれば比較的経験者が見つかります。
高木
上海とか広東は人件費も高騰して大変だと聞きますが、採用や給料という面で大連はどんな状況ですか?
大連地区はこれまで、アパレル業界でみると、上海や広州、北京に比べて遅れているというイメージがありました。しかし、豊富な労働力があり、上海や広州に比べると相対的に賃金も安い、さらにエネルギーの点でも豊富にあり問題がない…というメリットがありますから、大連地区は今後大いに発展する可能性を秘めていると思います。
高木
御社がある営口は、大連から少し離れていて、大連が停電したときでもここは問題がなかったということがありました。そんな事を考えれば、今後も十分に工場を発展させる可能性がありますね。
はい、そうですね。人件費でも、広州や上海は既にかなり高くなっていて、5年間で50%アップしています。今後さらに5年間で同じように50%アップすると考えたら、利益を出すのは難しいでしょう。ここはまだ、人集めも問題はありません。広州・上海で100元するものが、北京-大連-と経由して営口に来ると、10元になる。その分まだ営口には可能性があるということです。

海外の可能性は大きい
将来は北朝鮮進出も視野に入れて


高木
将来的には直接輸出もやりたいというお話もありましたが、最近は中国のアパレル工場も海外進出している会社が増えています。御社は将来的に取引だけでなく、海外に工場を持って生産を行なうといったお考えはないのでしょうか?
それは、ないわけではありません。いま、そうした点であちこちの国を調べているところです。
高木
中国のアパレル工場はベトナムやマレーシアに進出しているケースも多いようですが、進出先の候補はどのあたりですか?
問題は品質に対する信頼性、加工の安定性がどのくらいあるかということです。あちこちに進出している工場から情報も入ってきていますが、品質がもう一つで、ベトナムに出た工場の話しによると、ストライキやサボタージュなどもあるとか…聞いています。納期などを考えると、そういう状態ではなかなか進出することは難しいですね。
それよりも、いま注目しているのは北朝鮮です。縫製加工の面では技術力もかなり高いと聞いていますし、共産主義ですから、トップの威光はきちんと末端まで通じると思います。近々、北朝鮮に視察に行く予定をしています。よければ工場の進出も視野に入れたいと大いに期待しているのですが…

織物専門でニットはやらない
アパレル以外の事業にも関心


高木
御社はすべて織物製品でニット関連の商品は作っていらっしゃらないようですが、今後ニットを手がけられるという予定はないのですか?
はい、ニットはやりません。
高木
今後の事業展開では、輸出を直接手がけたい…とのことでしたが、そのほかにはいかがですか?
アパレルは今後も続けていくつもりですし、今後、アパレル工場が農村地区にも進出することになると思いますが、それをうまく成功させるようなやり方があるかどうか、重要なテーマですね。中国でのアパレル業界を最後まで見届けたいと思っています。
直接輸出を行なうのも、利益もあり、顧客の声が直接聞ける、取引のスピードアップ、短納期化につながる…などの利点がありますからどんどん進めていきますが、反面リスクが伴いますので、販売体制の構築など重要な課題になっています。
また、新しい事業…ということであれば、年末にアフリカに行く予定で、金属素材の輸入なども検討しています。
高木
なるほど、アパレルだけでなく広く事業化することも視野に入れているということですね。ありがとうございました。
「100%輸出企業だと、輸入ミシンを購入しても、投資資金は一部還付されて戻ってきますので、輸入ミシンを購入しやすくなっています」と語る劉国慶総経理。
「100%輸出企業だと、輸入ミシンを購入しても、投資資金は一部還付されて戻ってきますので、輸入ミシンを購入しやすくなっています」と語る劉国慶総経理。
営口金海港制衣有限公司の工場。
営口金海港制衣有限公司の工場。

流れは、大型工場から近郊の農村に分散させた小工場へ
2、3ラインの工場をサテライトのように設置する

送迎用のバス。これでも足りなくて何台かチャーターするという。この費用も大きな負担である。
送迎用のバス。これでも足りなくて何台かチャーターするという。この費用も大きな負担である。
工場内は明るく、ダイレクトドライブ高速本縫い自動糸切りミシンDDL-9000、ダイレクトドライブ高速電子本縫い千鳥縫ミシンLZ-2290など新しい設備がたくさん導入されている。
工場内は明るく、ダイレクトドライブ高速本縫い自動糸切りミシンDDL-9000、ダイレクトドライブ高速電子本縫い千鳥縫ミシンLZ-2290など新しい設備がたくさん導入されている。

全社で30台を導入しているというマルチプログラム装置付きドライヘッド電子本縫い袖付けミシンDP-2100。
全社で30台を導入しているというマルチプログラム装置付きドライヘッド電子本縫い袖付けミシンDP-2100。
高速電子本縫いボタン付けミシンLK-1903。
高速電子本縫いボタン付けミシンLK-1903。

スーツ上着の縫製に不可欠なしつけミシンLT-1040。
スーツ上着の縫製に不可欠なしつけミシンLT-1040。
本縫い自動玉縁縫い機APW-196。
本縫い自動玉縁縫い機APW-196。
仕事は増えるが対策が必要
自宅から通勤の送迎が負担に


 大連から車で1時間、営口にある営口金海港制衣有限公司はスーツ専門工場である。46,620平方メートルの敷地に、33,000平方メートルの建物が建つ。
 明るい縫製現場は1ライン40名編成で、16ライン。スーツを年間300万着生産する同社の主力工場だが、悩みも多い。というのは、仕事はたくさんあり、オーダーに応えることは出来るが、工場が大きくなるに従って、オペレーターが通勤する範囲が広がり、その送迎が大きな課題になっているのだ。
 工場の構内には、大型のバスがたくさん駐車している。オペレーターの送り迎え用のバスで、昼食の時間に家に帰る社員も少なくない。
 ここ数年、大連近郊にはアパレル工場だけでなく電子部品の工場もたくさん作られるようになり、社員が非常に多く動くようになってきた。作業者の需要が増え、そのために採用する社員の家がだんだん遠くなってきたのである。その結果、片道1時間かけて仕事に来るオペレーターも増えて、送り迎えのバスが必要になってきた。もちろん寮に入りたいと希望する社員も多くいるが、同じように自宅から通いたいと希望する社員も多く、自社で所有するバスだけでは足りなくなり、チャーターもしなければならない状態とか。そして「そのバス代が毎月200万元もかかるようになってきた」(劉董事長)という。


小型の工場を近郊に配置

 輸出中心の同社では、仕事はやればいくらでもある…という。どのくらいのオーダーを受けられるか同社自身の問題というが、上記のようにオペレーターの送迎も課題になる。
 そこで、同社がいま、目指しているのは、規模の効率という点でこれまでは大型の工場を作ってきたが、「今後は社員がいる地域にあわせて近郊に小さな工場をたくさん作るほうがいいのではないかと思っています。そのほうがコンパクトで運営しやすいですから」(同)という。
 ラインに最新の設備を導入し、安定した品質と高い生産性を実現している同社としては、今後、欧米の需要とともに、ロットの小さい日本向けなどを生産するためには、小回りの効く工場運営も不可欠で、そのためには、むしろ小型の工場の方がメリットも多いという判断である。
 そのため、工場を拡張するより、近くに分工場を出す…という施策を検討中だ。現在は仕事が多く、日曜日さえ休みにくいという状況で、そうした課題の解決が今後の発展には不可欠になる。
 商社を設立して独自に輸出に取り組みたい…としている同社にとっては供給体制の整備は急務である。農村地帯で同工場を核としたサテライト工場群による生産体制の整備、…新しいアパレル工場の姿を見るようだ。

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