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特集 : インド/バンガロール,チェンナイ,トップ対談

特集 : インド/バンガロール,チェンナイ,トップ対談
インドを基点にバングラデシュにも工場を展開
成長への鍵はコスト,品質,リードタイムの短縮化

AMBATTUR CLOTHING LTD.
VIJAY MAHTANEY社長

インタビュアー:
JUKI INDIA PVT. LTD.社長
二瓶 勝美
VIJAY MAHTANEY AMBATTUR CLOTHING LTD.社長  二瓶 勝美 JUKI INDIA PVT. LTD.社長
VIJAY MAHTANEY AMBATTUR CLOTHING LTD.社長
二瓶 勝美 JUKI INDIA PVT. LTD.社長

チェンナイ本社工場
チェンナイ本社工場

「インド国内のアパレル産業は、国内市場がこれから有望です」とVIJAY社長。
「インド国内のアパレル産業は、国内市場がこれから有望です」とVIJAY社長。
 21世紀の世界経済をリードする国として注目されているBRICsの一角インド。1947年の独立以来、ネール首相に率いられてソ連を手本に社会主義経済的な制度を採用してきたが、1991年、ナラシマ・ラオが首相に就任して経済自由化の大改革を敢行。効率が悪く瀕死の状態だった国営企業を一掃し、自由競争の原理を導入して私企業の活動を奨励し、破産寸前だった国の経済を世界第5位の経済大国へと押し上げた。
 改革以来、インドは高い経済成長を続け、18年間、GDP成長率を一度もマイナスにすることなく順調な歩みを続けている。インド経済を支える最大の要因は、豊富な労働人口にある。チャイナプラスワンとして多くの国が候補にあげられている中で、専門家の間でも有望視されているのがインドだ。国土面積は、世界第7位、人口11億人は世界第2位の大国であり、少子化対策を進めている中国を抜いてインドが近い将来、世界一の人口を要する国になると予想されている。増大するインドの人口の特徴は、若年層が多いこと。
 インドでは、18歳にならないと働くことができないが、毎年、その18歳になる人口が1200万人もいるのである。上級学校に進む生徒がいるとしても、毎年誕生するフレッシュな労働人口は産業界にとって大きな魅力である。反面、この新しく登場する人たちに労働のチャンスを提供できなければ、それがインド最大のリスクということになる。
 インドといえば最近は世界のIT産業を支える国として知られるが、IT産業が成長を続けても、そこで吸収できる労働力は20万人~30万人。大量の労働力を吸収する、労働集約型の産業が不可欠になっているのである。その意味で、インドのガーメント産業はきわめて重要な役割を果たすと考えられる。
 南アジアの経済を牽引するのはインドである。アパレル工場は技術力も高く評価されており、バングラデシュなど、周辺の国々にも積極的に進出している。豊富な若い労働力とあいまって、インドは、今後のアパレル産業の大きな拠点になる可能性を秘めている。今回は、注目を集める南インドの、バンガロール、チェンナイのガーメント工場をたずねた。


1980年にスタートし、11工場を
チェンナイ, ダッカ, バーレーンに展開


二瓶
御社のスタートは1981年でしたね。もともとは、ご実家のお父様がBombayでアパレル工場をやっていらっしゃった。そこからVIJAYさんがチェンナイに出てこられて、独立してAmbattur Clothing Limitedを設立されたとうかがっています。最初は、50台のミシンで1本のラインから始まったということですが。
VIJAY
そうですね。スタート時は、社員も200人に満たない小さな工場でした。
二瓶
以来、30年近くなりますが、いまでは国内だけでなくバングラデシュなどにも進出されています。伺うたびに工場が増えていて、私の把握するスピードが追いつかないのですが(笑)、現在、工場はいくつになっていますか?
VIJAY
国内はチェンナイに8工場で約8000人、バーレーンと バングラデシュのダッカに工場が1つずつあって、それぞれ1500人、2000人の社員がいます。全部で、約4500台のミシンで、12000人ほどですね。
二瓶
創業時から輸出100%でしたが、それは今でも変わりませんか?
VIJAY
はい、いまも輸出100%ですが、実はこの間、国内ブランドを立ち上げて国内向け商品を作っていました。そのブランドを売ってほしい……というお客さんが現れて、5年ほど前にそれを売ってしまいました。ですので、いまはまた、100%輸出です。
二瓶
そうですか。残念ですが、しかし、"国内マーケットへの関心がなくなった"というわけではないですよね。
VIJAY
インドでは、今後、アパレル製品の国内市場は大きく伸びる可能性があると思います。楽しみなマーケットですので、関心は持っています。
以前のブランドを手放したときに、 "今後、5年間は競合するようなブランドは作らない"と約束をしましたので、国内ブランドを立ち上げることが出来なかったのですが、まもなくその期限がきれますので、新しいブランドの立ち上げを考えているところです。


生き残りへのカギは……
コスト、品質、リードタイムの短縮化


二瓶
創業して間もなく30年になろうとしています。御社は布帛(布)のほぼオールアイテムを手がけていらっしゃいます。この間、インドでもアパレル工場をめぐる環境は大きく変化してきたと思いますが、どんな変化をお感じになっていますか?
VIJAY
特にここ3年間ほどの変化は大きく、以前とはまるで変わりました。まず、お客様のコストに対する要求が厳しくなったこと、そして品質への要求も高くなったことです。リードタイムは3年間で、35%ほど短縮しました。
二瓶
インド国内の人件費は、中国と比べても比較的安いと思います。しかも労働力は豊富です。それでも厳しいですか?
VIJAY
はい、中国に比べると、少し安いのですが、お客様の要求はだんだん厳しくなっています。品質を高めながらいかに低コストを実現するか、それが課題です。
二瓶
その対策としてバングラデシュへの工場進出があるわけですね。バングラデシュはいかがですか?
VIJAY
インド国内の工場は、技術力もあり、ある程度クリエイティブな力もあります。国内のこうした力を活用しながら、低コストでの生産を実現するために、実はバングラデシュに進出する際にベトナム、スリランカ、パキスタンなどの国を調査し、検討しました。技術力、コスト、労働力の点で、バングラデシュがもっともポテンシャルが高いとは判断しました。独立前は1つの国だったので、文化的にもよくわかるという利点もあります。
二瓶
今後はバングラデシュ生産をシフトするということも視野に入れていますか?
VIJAY
はい、将来的にはインドはCreative Management Centerとなり、生産はバングラデシュやパキスタン、ミャンマーでと考えています。バングラデシュの人たちは高い技術力を持っています。何より、技術を習得するのが早い。既にアパレル生産は、金額・数量ともインドを上回り、政府も輸出に力を入れていますので、将来性も高いと見ています。


クリエイティブなデザイン力を高め
お客様への提案力をつけたい


二瓶
インドが生産からはなれて、Creativeな仕事とManagementを担当するようになるためには、マネジャーの育成と企画・デザイン力をつけることが必要になりますね。
VIJAY
マネジャーは問題ありません。当社には現在、10人ほどの役員がいますが、いずれもプロフェッショナルの経営陣です。また、デザインについても、3年ほど前からデザインチームを育て、今では20%ほどの商品をデザインから担当するようになっています。将来的には5年ほどかけて100%提案できるようにしたいと思っています。
二瓶
御社は、素材やボタンなどの副資材の手配なども担当していますから、デザイン力がついてくれば、いい提案ができますね。先ほど、納期がここ3年で35%も短縮したというお話がありましたが、リピートオーダーなどはありますか?
VIJAY
お客さんがリテーラーなので、リピートオーダーはほとんどありません。しかし、ヨーロッパなどは、最初は少し作って、売れればリピートオーダーする方向に進みつつあります。Vender Management Inventory(VMI)といって、在庫をお客さんではなく私たちベンダーが担当するという方式が出始めています。5年前にはなかったのですが、今では20%ほどがVMIで、将来的には50%位になるかもしれません。
二瓶
そうなると工場が一部流通の役割を果たすことになりますが、リピートオーダーを受けるためには素材の確保も必要になる。
VIJAY
ファッション性の高いものは素材の確保はリスクが大きいですから難しいのですが、いわゆる定番商品であれば、可能ですね。


今後の課題は、バングラデシュ工場の拡充と
国内ブランド、ニットの立上げ


二瓶
創立30年弱、南インドを代表するアパレル会社になりました。将来的な計画はいかがですか?
VIJAY
当面計画しているのは、先ほどお話しした国内ブランドの立ち上げですね。それと、バングラデシュに工場をもう一つ計画しています。バングラデシュは、ローコスト、ロークオリティといわれていますが、技術力も向上しています。当社のバングラデシュ工場では、オペレーターの教育を社内で行っていますが、技術を習得するのが非常に早いのです。若いオペレーターも多いし、品質は向上できると思っています。
それともうひとつ、ニットを手がけたいと思っています。これまでは布帛製品ばかりでしたので、新たに、カットソーを始めようと準備しています。
二瓶
それも複雑で高級なレディース用のニット製品を計画されているとうかがっています。新しい挑戦ですね。
VIJAY
しばらく前から計画を立てて準備してきました。計画ではあと半年くらいで量産できるようになります。
二瓶
最後になりましたが、多くのJUKIミシンをお使いいただいています。何かご要望があればおうかがいしたいと思います。
VIJAY
父が工場をやっている時代からJUKI製品を使っています。工場には色々なメーカーさんのミシンが入っていますが、70%がJUKI。何よりも、高い技術力と迅速なサービスがいい。信頼しています。ミシンメーカーさんで私が直接お目にかかっているのはJUKIの二瓶さんだけです。他の会社の人は知りません。
二瓶
ありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願い申しあげます。
明るく5Sが行き届いた清潔な工場
設備管理も万全で高い技術力と高品質を実現
「インドのオペレーターは非常に習熟が早い。品質も安定している」とMR.I Golhan Iscen。トルコ「MINTAY」社の社長の評価は高い。
「インドのオペレーターは非常に習熟が早い。品質も安定している」とMR.I Golhan Iscen。トルコ「MINTAY」社の社長の評価は高い。

明るい工場で設備の手入れもしっかりされている。
明るい工場で設備の手入れもしっかりされている。

電子眠り穴かがりミシンLBH-1790を2台持ちで使う。
電子眠り穴かがりミシンLBH-1790を2台持ちで使う。

生産ラインの主体はDDL9000シリーズ
生産ラインの主体はDDL9000シリーズ
技術力を物語る--高い5Sレベル

 同社が手がけるのは布帛のオールアイテムで、ブランドは、Ann Taylor、Armani Jeans、Banana Republic、Bass pro、Croft & barrow、Diesel、Dockers、Eddie Bauer、Esprit、Gap、J Jill、Kohls、Levis、Mexx、s.Oliver、Talbots……など。ボトムが65%、トップが35%。年間ほぼ4シーズンを生産する。平均ロットは約8000枚。
 チェンナイの2工場がフレキシブルでオールアイテムを生産するが、残りの工場はそれぞれ、メンズ、レディース、フォーマル、カジュアルのボトムやトップに特化して生産を行う。
 拝見したのは、製造パートナーである高品質のトルコの「MINTAY」のMENS/LADIESシャツを手がける工場。
 工場内は明るく清潔で整理整頓が行き届いており、写真からも分かるように、5Sのレベルの高さがうかがえる。この辺りが欧米のブランドから信頼を得ている証だろう。


マネジャーの教育が技術力の秘訣

 同社は、ここで、年間約30万枚のシャツを生産する。使われているミシンは、基本が1本針本縫ミシンDDL-9000。MINTAY社の社長 MR.I Golhan Iscenは「インドのオペレーターは技術の習得が早く、作業が安定していて品質は高い。私たちはここでの生産に満足しています」と語る。
 管理レベルの高さが工場を見ても分かるが、そのベースに、毎週、月曜日7:00 SUPERVISORS Training Program、火曜日7:00 LINE CHIEF、金曜日7:00 SUPERVISORS WEEKLY MEETING……などの、密度の濃いコミュニケーション、教育が行われているのだ。
 インドのアパレル工場は、成長のスピードは中国には及ばないが、潜在力は中国にも劣らない。「中国は急いで成長しているが、インドはゆっくり成長する」……とVIJAY社長の弁だが、インドのアパレル工場の技術力を改めて実感した。

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