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生産現場に『JUKI』を探る Vol.8

アパレル生産現場第7回
青森エリート
青森エリート 服部泰成社長
青森エリート 服部泰成社長
 青森エリート(青森県平川市松崎亀井五、服部泰成社長)は、婦人ボトムスで量販店向けから百貨店向けへの転換を図り、国内での生き残りを実現している工場である。高級品を扱う小規模工場は国内でもそこそこ存在するが、同社のように国内で約120人(グループ約160人)の規模があり、グレードの高い商品を生産できる工場は今の時期、発注側にとっても実は重宝なのである。「『国内回帰』の実感はまだない」(服部社長)ものの、基本に忠実で真面目なモノ作りの姿勢が取引先の信頼を得ている。


百貨店向けに転換し生き残り

 青森エリートは1983年、岐阜に本社がある服部縫製が青森県の誘致により創業。当初から婦人のスカート、パンツの専門工場として量販店向けの商品を作っていたが、今から8年ほど前から量販店向けの商品はほとんどが海外に移転。コスト的に全く合わなくなった。企業存亡の危機に当たって、同社が選択したのは百貨店向け商品へ転換することだった。
 その当時について服部社長は、「ずいぶん東京を回ったが、全部門前払い。非常に辛い時期だった」と振り返る。そうした時、力になってくれたのが青森県アパレル工業会に加盟している地元企業。「いろいろ胸を借りながら、百貨店向けのモノ作りについて勉強させてもらった」という。
 「百貨店向けとなると、ネームをつける位置を始め各商品毎に企画が違う。それに対する従業員への指示、徹底が非常に難しかった。素材に対する対応、事前準備の方法も、生地の検査、収縮試験を行い、その結果を必ず確認してから本生産に移る。その辺のところが全く違った」。企画前段取りの人員が、以前に比べ倍くらいになった。また、「品質が悪ければ、次の仕事が来ない」という現実的な問題もあり、検査部門を大幅に強化した。
 本生産自体は、特徴をつかみ機械を調整して、アタッチメントを作って、そこに今までの技術を生かしてオペレーターを投入することでクリアした。
 様々な努力の結果、今から5年ほど前に百貨店向け100%になった。「高級品とはいえ1000本、2000本という1つのまとまりものを、今は短サイクルでモノを回さないといけない。1週間か2週間であげられる工場が求められたということかもしれない。その部分では、それまで量販で培ってきた、大量のものを画一の品質で市場に提供することが評価されたと思っている」と服部社長は自己分析する。しかし、それを可能にしたのは自助努力以外の何物でもない。
 「そこまでやらなきゃいけないのかという人間のつぶやきがある。それを変えるのは難しい。痛みがあるから変えるだけのこと。痛みというのは、不良品だとか大きな失敗。要はそういうことの繰り返し。その中でお客さんに鍛えられたということもあるし、その現実を見て我々の方もこれではいけない、次はこうしようと改善につなげていった。そういう積み重ねがないと良い会社にはなれないと思う。そこであきらめたか、あきらめなかったかです」。
 取引先は現在、オンワード樫山、イトキン、山脇、三菱商事、豊島ファッションエキスプレスなど。商社経由ではフランドルなどもその1社だ。


基本に忠実なモノ作り

 生産量はスカート、パンツ合わせて日産800本前後。裁断から仕上げ、まとめまで社内で一貫生産する。受注してから裁断までで20人。縫い上がったものをまとめ、検査、プレスまでで約20人。ロットは平均的には600~800だが、大きいのは5000本というのもあり、小さいのは20、30からある。
 準備段階では、取引先から来る仕様書をもとに詳細な作業指示書の作成など社内での共有情報資料の整備を進めたほか、大きく変わったのはサンプルだ。サンプル専門に4人。サンプルも本生産と同じ仕様で作ることを徹底している。「サンプル段階でいちばん注意しているのは、本当に量産が可能なのか。サンプルは現場サイドとアパレルとで確認しながらやっている。当たり前のことだが、それが意外に出来ない。理論的にもそうなっていないといけないと思う。本生産のアタッチメントを準備し、この機械で、このアタッチメントをつけて、こういうふうに縫ったら、基本はそうなると理屈通りにやる。いかに後がやりやすいかを考える。うちの基準はサンプル。お客さんがOKしているものだし、サンプル通り作ろうと。そういう意識がわが社には強いと思う」。
 準備段階で徹底的に問題点をつぶし、CAD、延反、CAMによる裁断のあと、縫製ラインに投入。縫製は70人で6ライン。1ラインが10人から12名。約20から30のバンドルで流している。縫製現場は圧倒的にJUKIのミシンが多い。ドライのロックは昨年暮れMO-6704Dを4台入れた。油汚れ対策の一環である。
 オンワード樫山が半年に1回行う品質評価で、同社は現状で約4%の不良率。因みにこの数字、不良率の低さでは上位から三番目という。同社がオンワードと直の口座でやり出して4年目。「いちばん多い時で8%くらいあった。3%くらいにはしたいと思っている」と服部社長。現状4%のうち半分以上がシミ汚れ。残りはプレス不良などだ。元の原反の汚れもあるが、油汚れは大きな問題。同社はシミ汚れを毎日100本くらい落としている。
 「シミ汚れの対策としてドライがメリットになれば、ということで導入させて頂いた」と言う服部社長。昨年暮れに導入したロックについて感想を求めると、「新しいのはいい」とひと言。
 カジュアルをやっているのでJUKIのミシンは穴かがり、ボタン付けなど種類が多い。「AMBボタン付けは絶品だと1昨年からずっと言われ続けてきたので、AMB-289を2台も買ってしまった」と笑う。AMS-221、LK-1902、さらに鳩目穴かがりMEB-3200は2台目だ。玉縁が確実にあるのが今のレディスの状況で、拡充したいということで2年前の夏、APW-196Hを入れた。
 ミシン設備に対する考え方は明確だ。
 「婦人物は、ロットが大きいものもないわけではないが、そのためだけに設備投資は出来ない。それに対するアタッチメントだとか、ちょっとした工夫で縫えるものがないか、効率よく出来るものがないか。それを考えるのが、レディスで生き残っていくための最高の手段ではないか」と。
 パターン縫いのAMSについては212、220に続いて221Eを入れた。221Eへの評価は高く、「あれがないと生産出来ないかもしれない」とまで話す。バンドループでも何個も一気に縫って、後でハサミで切るとか、JUKIの担当者も驚くうまい使い方をしている。「大きな設備投資は出来ないにしても、結局設備に負けてしまうのが現状。本当に効率良く使える設備投資をと考えた時に、うちの設備担当がこれはどうしても必要だというものを出してきた。例えばAMSを使って菊穴なども作る。菊穴専用機だと、一個しか開かないが、それでベルトの菊穴を三つ開けるとすると、セットして三ついっぺんに開けられる。そういったことにも利用出来る。本当の菊穴ではなく、ニセの菊穴と言われているが、アパレルはそちらの方が本縫いだから良いと言う」。これにはJUKIの担当者も思わず「何か恐い気がする」ともらすが、「ゲージを使って正確に開けていき、角度さえ間違わなければ大丈夫。あとはミリ以下の単位で精度を出せるようにセット出来るような工夫はする」と涼しい顔。最近のミシンは電子化でダイレクトドライブにしてコンピューターで制御する形。これについて「一番生かされているのはLK。本閂、線閂両方出来て、パネルタッチで作業が出来る」と話す。
 「『国内回帰』で御社の規模と品質でやれるところはフォローの風では?」と向けると、「全然変わらないと思う」と一笑。「お客さんにしてみれば、中国で作っても、日本で作っても、同じコストで、もしくは、それよりも安く品質の良いものが上がればいい。ただ、中国も縫製が厳しくなっているのは事実。中国で作る予定のものを、ちょっと工賃がきついけれどこの値段で出せると言えば、意外に出しやすくなっているのが現状なのでは。その差がかなり近づいてきているとは思う。ただ、本当に採算を合わせられるかどうかというのは、まだ厳しいところ」と話す。今まで通り、「お客さんとのコミュニケーションを大切にして、これはこういうふうにしたらどうだろうかなど、提案を受け付けてくれる先と一緒に取り組んでいきたい」と結んだ。
MO-6704D
MO-6704D
AMS221E
AMS221E
JUKIから「この一台」

セミドライヘッド高速オーバー/インターロックミシン
「MO-6700」シリーズ

 縫製品の生産では、油汚れは、不良項目全体の4分の1強を占めると言われ、最も重要な改善項目のひとつに挙げられていますが、ミシンの構造上、油を完全に無くすことは、技術的に難しい面がありました。
 JUKIでは、長年に渡り、本縫いミシンのDDLシリーズで培って来たドライ技術のノウハウがあり、特殊ミシンなどにも応用しておりますが、より高速での使用を求められるオーバーロックミシンに技術展開したのが、このMO-6700Dシリーズです。優れた縫い品質と生産性で定評のある、MO-6700Sをベースに、油の飛散の要因となる重点機構に限定してドライ化を実施することでコストを抑え、実用的なセミドライロックミシンとして製品化しました。
 構造的には、油の飛散が発生しやすい針棒機構、上ルーパー機構を無給油化し、主要駆動部への特殊表面処理や、グリス潤滑方式などを採用し、高速性を維持しつつ、耐久性に優れ、長期間安心してご使用頂けるオーバーロックミシンを完成させました。
 従いまして、油汚れによるシミ抜き作業や、縫い直し作業が低減し、生産性の向上にも寄与することができますし、生地によってはシミ抜き剤そのものを嫌うものもあり、セミドライミシンのメリットを、より発揮させることが可能です。
 また、サブクラスで、パッカリング防止仕様を追加しました。送りの軌跡やタイミングを薄物素材に最適な条件にて設定することにより、難素材、新素材でも、美しい縫い品質を実現することができます。品質最優先のお客様、高級品を生産されているお客様には、特にお勧めです。

 昨今話題になっております環境問題に関しましても、油の飛散が無いことや、埃の混入による潤滑油の汚れも少なくなるので、交換頻度も減少し、潤滑油自体の使用量の削減に貢献します。またシミ抜き剤使用量も削減でき、環境にやさしいミシンといえます。

【営業本部営業推進部:03-3480-2357】

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