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次世代のモノ作りに挑戦 第2回

有限会社ファッションしらいし 代表取締役 白石 正裕氏
有限会社ファッションしらいし
代表取締役 白石 正裕氏
有限会社ファッションしらいし
代表取締役 白石 正裕氏

 第2回は、都内にあるプレタの婦人服工場として知られているファッションしらいし(東京都杉並区)。従来の委託加工にとどまらず、百貨店向けを主力とした自社企画を軌道に乗せ、またニューヨークのデザイナーブランドとの取引を作り上げています。
 そんな先進的な取り組みを可能にしているのが、若手技術者を育成することで培ってきた高い技術力です。こうしたモノ作りをサポートする目的で、このほどJUKIが発売したばかりのダイレクトドライブ高速本縫い自動糸切りソーイングシステムのフルデジタル仕様「DDL-9000CF」を導入されました。白石正裕社長に導入効果や今後の可能性などをお聞きしました。


「フルデジタル」の本縫いミシンを導入

フルデジタルミシンを使ってサンプル段階でマネージャーがミシン調整のデータを作成
フルデジタルミシンを使ってサンプル段階でマネージャーがミシン調整のデータを作成
―デジタル本縫いミシンとの出合いは、今年四月に大阪で開催されたJIAM2016(国際アパレル機器&繊維産業見本市)でしたね。
 JUKIさんがJIAMでフルデジタルミシンを使って婦人服のアトリエを再現するコーナーを設けることになり、当社の女性技術者3人と私がスタッフとして協力したんです。アトリエでは厚地のジャケットと薄地のブラウスを縫製し、タブレット端末からデータを転送してミシンの調整を瞬時に切り替えるという実演をしました。そのため事前にミシンを工場に持ち込んでもらったが、みんな興味津々でいっぱいデータを取り、機能面などの要望も出したんです。その時に担当したメンバーが話していたのは、手のチカラが及ばない部分をこのミシンは補ってくれるということでした。ボクも職人なので理解できますが、すごく小さな部分だけどミシン作業には本当に手の感覚を使えないところがある。それをミシンが補ってくれるというのは、すごくいいと思った。そういうことを可能にしたのは上下、水平の送り機構をデジタル化したことによって送り軌跡を変更することができることが一番大きな要因でしょう。特にボックス送りを選択すると、普通の本縫いミシンで、いわゆる上下送りに近い感じが実現できます。そんな箇所がそこここにあるような気がしています。

―今回、2台のフルデジタルタイプを導入されました。
 うちは専務をはじめ7人がマネージャーと呼ぶ上級管理者で、パターンやサンプルを担当、現場は4人1組で丸縫いしており、現在4チームあります。フルデジタルミシンはサンプルと現場に1台ずつ配置しました。と言うのは、マネージャーたちが先にサンプルを作り、その時点でミシン調整のデータを作ることができるわけです。特に新しい型や新しい素材は最初にこの人たちが触る。だからサンプルと現場でそういうデータのやりとりがスムーズに連携できるかどうかを試すためにとりあえず2台取り入れました。サンプル作成で調整したデータが、素材や副資材と一緒に現場に行く--そんなシステムを実現できれば格好いいですよね。文字通り、スマートファクトリーに一歩近づけます。

―これまでミシン調整はどうしていたのですか。
 素材やデザインが変わると、本当は送り歯の高さ、押さえ金圧力、それと上糸調子や縫い目ピッチの4つを毎回いじる必要があります。でも、今までの本縫いミシンではやりたくてもやりにくかった調整があった。例えば送り歯の高さ調整なんか面倒で、しかもカンでネジを動かすから女性ではいじれない。だから上糸調子と縫い目ピッチだけ調整し、残りは置き去りにしてきたのが実情。ところがフルデジタルミシンはボタン1つでこの4つがすべて調整できるし、送り軌跡も選択できる。だから、マネージャーたちがサンプル段階でデータを作り、オペレーターに調整したデータを伝達しておけばよくなる。実際にはもっと使い込んでみないと分かりませんが、例えば厚手のウール、薄手のウール、シルクとか、ざっくりいくつかの素材ごとに設定しておけば、そこにいきなりぽんと行って、あとは微調整だけで済むわけですね。


多能工型工場で大きな効果を期待

4人1組で丸縫いする生産現場にも「DDL-9000CF」を導入
4人1組で丸縫いする生産現場にも「DDL-9000CF」を導入
―多品種小ロットの国内工場にとって便利なミシンになりますね。
 ボクらのような多能工型の工場は、専用機のミシンを置けません。1人のオペレーターが1台のミシンを使って、いろいろな工程を担当する。1チーム4人で丸縫いしていますから、単純に言えば4分の1ずつの工程を受け持っていて、裏地専属というわけにはいかない。1人が表地を縫って、すぐに裏地を縫ってというケースも出てきます。しかし表地、裏地でいちいち設定を変えるというのはとても面倒。だから今は表地の設定で裏地も縫っています。ところがフルデジタルミシンで裏地のミシン設定をしておいて、ボタン1つで調整を替えられることになれば、それは裏地だってきれいな上がりに越したことはないわけですから、すごく有効です。また、ぐし縫いも工程の途中でぐしを掛けています。そのたびに上糸の糸調子を強くしたり、ピッチ幅を変えている。それもフルデジタルミシンであれば、すぐにミシン設定が可能となるわけです。だからボクらみたいな多能工型の縫製工場のオペレーターにとってすごく画期的なミシンです。

―9000CシリーズはIoT(モノのインターネット)時代を見据えたミシンですが、今後の可能性をどう見ていますか。
 工場のいろいろなデータと連動してくる大きなきっかけになる気がしています。例えば操作パネルにCADデータを表示することなどができたらとても便利です。画像の解像度が上がり、今の操作パネルの画面でも十分対応できます。現場では1つの型でも縫い代が2cmの箇所だったり、1cm、1.3cmなど異なっていたりします。そのために今はいちいち紙のパターンを持ってきて確認をしている。CADデータでミシンを動かすというのなかなか難しいでしょうが、CADとリンケージして縫い代情報などが表示できるようになるとまた一歩進化するし、そうなることを期待しています。

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