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わが社のモノ作り戦略 第13回

オリジナルテクノロジー  取締役社長 田中 定道氏
オリジナルテクノロジー
取締役社長 田中 定道氏
オリジナルテクノロジー
(略称・オリテック青森)
取締役社長 田中 定道氏

 「国内のメンズスーツ産地」と呼ばれている青森県津軽地区には有力企業が集まっている。南津軽郡藤崎町にあるビッグヴィジョングループのオリジナルテクノロジー(通称・オリテック青森)もその一社で、メンズのイージーオーダー(EO)を手掛けている。EO業界では若い世代が新たな消費者となって市場が活性化する一方、国内の生産キャパが縮小し、残っている工場に受注が集中しているという。同社も一年半余りで人員を約六十人増やすとともに、積極的な設備投資も行っている。国内生産と同時に、海外工場を活用した生産体制の強化を進める同社の現状を田中定道社長にうかがった。


青森を拠点に国内外でEO生産強化

EOパターンの開発力もオリテック青森の強味
EOパターンの開発力もオリテック青森の強味

縫製現場ではドライヘッド電子本縫い袖付けミシン「DP-2100」も活躍
縫製現場ではドライヘッド電子本縫い袖付けミシン「DP-2100」も活躍

きめ細かな対応に活用しているピンポイントサドルステッチミシン「MP-200N」
きめ細かな対応に活用しているピンポイントサドルステッチミシン「MP-200N」

「メンズスーツ産地」の青森県津軽地区にあるオリテック青森
「メンズスーツ産地」の青森県津軽地区にあるオリテック青森
―オーダー工場として創業したのが始まりですね。
 一九七六年に青森県内のテーラーの方々が協業組合青森オーダーソーイングとして設立した工場ですが、二〇〇三年に主力発注先だったビッグヴィジョン(旧山村商事)が設備、人員を引き継ぎ、株式会社として新たにスタートしたわけです。二〇〇九年四月一日にオリジナルテクノロジーに社名変更し、通称でオリテック青森と呼んでいます。ハイテク企業のような社名で、縫製工場も新しい技術やシステムなどを導入していこうという思いを込めました。ビッグヴィジョンは現在、服地商社とオーダースーツの吉村グループになっています。私はグッドヒルに二十九年間勤めた後、縁があって山村商事に入り、こちらに来たのは六年前。新潟県胎内市に同じ社名でワイシャツ縫製のオリジナルテクノロジー(通称・オリテック新潟)があり、その会社の社長も兼務しています。EOのスーツとワイシャツはほとんどセットで販売しており、それに対応するため二〇〇八年一月に新規開設した工場で、現在六十人で一日三百枚を生産しています。

―現状は。
 オリテック青森は第一工場で上着を縫製、第二工場に受注の受け入れから裁断まで行う部門とズボン縫製のラインがあり、全体で二百十八人、うち男性が四十五人、女性が百七十三人。昨年一月は百六十数人でしたから、一年半強で六十人くらい増員したことになります。青森県は国内でも縫製工場が多い地域で、中途採用できました。新卒も毎年六、七人入れています。CAD、システム関係の人材として三年前から毎年短大卒も入れ、今春も高卒五人、短大卒二人を採用しています。生産能力は昨年四月が八時間労働で日産百六十着でしたが、昨年秋には百八十着、それでも間に合わないということで今年一月から二百着体制でやって来ました。また、青森からパターンデータと指示書を送って生産している中国の工場が二社あります。北京にあるビッグジョンの合弁工場は二百五十人で日産三百から三百五十着、大連にある協力工場が日産二百着の規模です。


パターンデータを一括管理

―オリテック青森の強味は。
 テーラーさんの立ち上げた縫製工場ということでデザインもパターンも細かな対応が出来ることです。流れ作業で本当に対応しにくいようなこと、例えばネーム付けの位置でも様々なお客さんの要望に現場がちゃんと応えています。よくそこまでやるなと私もびっくりするくらいで、これは歴史ですね。社員も創業当時からの人がまだ残っていますし、個人個人が熟練しているんです。それで古くからの取引先がつながっていることは確かですが、効率的には悪い面かもしれないですね。
 国内と海外の生産のパターンや受注情報を青森工場が一元管理しているのも特徴です。専門店でも一社で低価格の商品は海外生産、こだわり商品は国内生産と使い分けますが、我々はそれを全部一本化し、同じパターン、同じ付属で海外と国内の生産を上手くすみ分けできます。日本でパターンを作ると、中国にはネットでリアルタイムに渡せます。中国側ではパターンデータをプロッターで出力するか、CAMで直接生地をカットするかは任せています。裁断、縫製は中国にシフトしても、データは全部日本から作って送ります。ですから、青森工場では一日六百五十着くらいのパターン製作能力を持っています。伝票の最初の打ち込みを行うエントリー、CAD、原反管理などの業務を行う生産管理室は管理者を含め二十四人揃えています。
 もう一つはパターン開発力です。EOが伸び悩んだ理由はパターン開発力がなかったからだと考えています。だからこの機能を強化し、私どもではこの数年間で六タイプのヤング向けパターンを出しています。これはシステムの進歩のおかげです。昔だったら一つのパターンを市場に出すための開発は一年掛かりでしたが、青森工場では一年に三型のパターンを出したこともあります。私どもではパターンを持ち込んで頂いても、だいたい一カ月でものにするようにしています。

―EOは東日本大震災の買い控えの反動や若い世代の掘り起こしで市場も上向いてきたそうですが。
 人員、生産量を増やして来た背景には、そうした市場の動きがある一方、国内のEO工場の閉鎖・縮小が続き、その結果、行き場を失っている仕事があります。そういうところで我々の工場の存在価値が上がっている面もあります。二年前からフル稼働が続き、納期が集中する繁忙期には残業が続いたんですが、生産量の拡大が難しかった要因はもう一つあります。それはズボンがどうしても間に合わないんです。上着が二百着でもズボンはツーパンツがあり、ずっと二時間残業になったんです。それで限界を感じて、今、第三工場を設け、ズボンの生産量を広げようと計画しています。

―技術面での取り組みは。
 四年前くらいから、夏場の閑散期を利用して「特訓制度」を始めました。メンバーを選んで一人一着縫いをさせるもので、採寸から入力、裁断、縫製、仕上げのすべての工程を経験させます。流れラインは部分的な作業になり、それでは人材が育ちません。海外戦略に必要な人材を育成するのも狙いで、モノ作り全般を理解できると海外に行っても通用します。七月から二、三カ月掛けて、仕事が終わった後に勉強させています。講師は大阪から来てもらっているベテラン技術者です。
 第一期生は若手のCADを担当している三人でした。CADだけをやっていてはダメで、縫いの現場を知らなきゃいけないと。それにパターンも画面上だけでやるのじゃなくて、現物の型紙で作っていくんだ。そういうことを勉強しようとスタートしたんです。とにかく人材を育てたいという一心で始めたもので、今年は上着ラインの班長四人、それと中国人実習生にも技術研修を約束しており、実習生四人の計八人が参加していますが、勉強したいという若手有志も加わっています。こういうメンバーと熟練技術者がうまくコラボレーションしていくといいと思っています。

―海外戦略も今後の重要な取り組みに掲げられています。
 中国の合弁先が営業しているもので、今、日中連係プレーでスイスとフランスのEOも手掛けています。日本でサイズスペックからデザイン展開まで決めました。合弁工場を中継してメールで受注伝票が届くと、青森工場でパターンデータを作って、北京で縫製するという日本向けと同じやり方で、年間四千着くらいあります。また、合弁先からは中国市場でメード・イン・ジャパンのワイシャツを販売したいという依頼が来ています。すでに中国国内に十五店舗持っていて、富裕層向けであればメード・イン・ジャパンで多少高くてもオーダーワイシャツは売れるというので、我々も期待しています。

―今後については。
 目標としてはグローバル化を目指したいと思っています。会社のスタッフみんなが楽しいというか、面白い会社にしたいんですね。EOは既製服に比べると日本での生産がまだまだ維持できると見ています。海外生産は今は中国が中心ですが、中国は難しくなってくることは間違いありません。それでベトナムなども検討しています。青森で受注情報、パターンデータなどを一括管理して押さえておけば、生産国が変わろうが国内外の工場を使い分けすることが可能です。そういうグローバルな会社を目指したいですね。そのためには青森の人材とノウハウをきちっと作って高めていかなければならないと考えています。
JUKIは世界のアパレル生産を全力でサポートします
本縫い自動玉縁縫い機「APW-896」
本縫い自動玉縁縫い機「APW-896」

高速電子単糸環縫い根巻きボタン付けミシン「AMB-289」
高速電子単糸環縫い根巻きボタン付けミシン「AMB-289」
相次いで「APW-896」
「AMB-289」など導入



積極的に設備入れ替え

  オリテック青森では、新たにJUKIの本縫い自動玉縁縫い機「APW-896(斜め・フラップ仕様)」、高速電子単糸環縫い根巻きボタン付けミシン「AMB-289」、ダイレクトドライブ高速本縫い自動糸切りミシン「DDL-900B」などを相次いで導入されています。また、縫製現場ではドライヘッド電子本縫い袖付けミシン「DP-2100」、ピンポイントサドルステッチミシン「MP-200N」なども活躍しています。積極的な設備投資をされている理由や今後の取り組みなどについて、田中社長はこう話されました。
  設備投資をしているのは、人員増、生産量を大幅に増やしていることや、古い機材も多いので入れ替えの時期でもありました。やはり新しい機械は効率が良く、品質も安定しています。使いにくくなったとか、故障が多いという設備は積極的に替えていこうということでJUKIさんにお世話になっています。
 縫製企業は確かに優秀な機械も必要ですが、人材が大切です。そのために夏場の閑散期を利用して社内に「特訓制度」を設け、仕事が終わってから一人で一着を採寸から入力、裁断、縫製、仕上げまで実践させています。同様に、若手の保全担当者も育成しようと考えています。
 保全にはベテランがいて、まだまだ現役で頑張ってくれます。しかし人材はすぐには育ちません。幸い三十代になったばかりの若手が保全担当として入ってくれました。縫製機器についてはまったく素人ですが、機械が好きだと言う。出来るだけ早い段階で、JUKIさんが那須研修センターで開講している「設備技術者のための技術員研修コース」を受講させ、一人前にしたいと思っています。

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