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わが社のモノ作り戦略 第4回

アルデックス 代表取締役社長 山口 達三氏
アルデックス 代表取締役社長 山口 達三氏
アルデックス
アルデックス 代表取締役社長 山口 達三氏

自社ショップ商品として提案するソフトな芯なしスーツ
自社ショップ商品として提案するソフトな芯なしスーツ
 愛知県豊橋市にあるアルデックスは、高級紳士服オーダーやパターンオーダーを工業生産する工場として知られている。その一方で社内に「匠塾」を設け、若手技術者の養成に力を入れている。紳士スーツはいち早く海外生産にシフトし国内の生産現場が縮小、パターンから縫いまで分かるベテラン職人も高齢化する中、山口達三社長は日本のモノ作りが失われてしまうという強い危機感を抱く。服作りが好きな若手に技術を継承し、世界に通用するメード・イン・ジャパンを担う人材になって欲しいと期待を掛ける。


「匠塾」を設け若手技術者を養成

―現状からお聞かせ下さい。
 今は60人弱で、半数がパート、半数が正社員。年間の生産量は約7千着で、日産にして24、5着です。国内の紳士服工場は高齢化しているところが多く、私のところも匠塾を始める前は平均年齢が50歳を超えていたが、今は40歳くらい。生産規模を大きくしていないし、若い子だけ入ってくるからですね。しかも若手が現場のベテラン女性技術者に自分の分からないところを教えて貰う。今まで芯据えや袖付けとかを教えて欲しいと声を掛ける人がいなかった。だから女性技術者たちも自分の持っている技術が財産のようになり、自分たちが必要とされているんだ、という誇りを持つようになっています。

―オーダーとパターンオーダーが生産の2本柱ですが。
 パターンオーダーはアパレルさんのプレタブランドからの依頼です。既製服工場で作るパターンオーダーは着丈や袖丈とか長さの調整がほとんどで、体形を補正するのは難しいし、デザイナーのファッションコンセプトを崩すという理由で断っているケースが多い。私たちはそんな工業化からはずれるものばかりが比較的来る。すごく手間が掛かって誰もやらないが、ちょっとしたわがままが聞いて貰えるから企業として存続できているんだと思います。オーダーはこだわりのある商品を手掛けているセレクトショップや、職人不足や高齢化したテーラーさんなどからの注文です。それと自社ショップがこの工場の隣と東京・西麻布にある。自社ショップに来るお客さんの平均は30代で、ホームページを検索できる人たちです。海外のトレンドにも敏感だしものすごくファッションに興味を持っている。だから価値ある商品を価値ある価格で提供できる企業として消費者から認めて貰うためにも、もっとダイレクトにマーケット・インしていきたいと考えています。


「手の届くフェラーリ」を目標に

生産ラインで実務を研修する2年生の塾生
生産ラインで実務を研修する2年生の塾生
―オーダーの工業生産化も特徴です。
 1963年に当時としては画期的なシンクロシステムによる紳士服のオーダーメードの生産を始め、また洋服は裁断の良し悪しで品質が決まるし、裁断能力によって生産力が左右されるので、裁断部門の効率化のために産学連携で型紙作成のコンピューター化を行った。服作りは教科書通りに行かないし、技術者がいないと良いものは出来ませんから、システム化によって彼らに十分時間を与えようという目的です。技術者の手はセンサーで、触った時のちょっとした感触でアイロンを強く掛けたり弱く掛けたりする。これはマニュアルを読むだけでは理解できない。職人がやらなくてもいい部分は機械に職人の心を伝えて機械化する。JUKIさんのミシンも職人の気持ちを機械に伝えながら開発してきたはずです。だから職人の果たす役割は大切です。我々は『手の届くフェラーリを作る』と言っています。フェラーリはイタリアの工芸品であり、型抜きプレスではなく、とんとんと職人が手で作り上げたライン。だからあのラインが世界中で好まれている。それをどうやって工業化に落とし込み、技術として残すか。つまりフェラーリを手の届く価格で生産するというのは、職人ワザによる高級紳士服を次の世代にいかに技術継承していくかということなんです。

―それが匠塾として具体化させたわけですね。
 徒弟制の中で育った技術者たちが大阪の谷町をはじめ既製服業界に加わり、その方たちが体で覚えた技術でJUKIさんのミシンなどを使って日本の縫製業界を作ってきたんです。でも、そういう技術者が高齢化している。全日本洋服技能士協会のデータでは全国技能士の平均年齢は2006年で66.9歳、もう70歳を超えているでしょう。1人で製図から縫製までできる技術者が失なわれつつあるのが日本の現状です。結局、縫製業は賃金も安いし人が集まらなかった。匠塾のきっかけは、そういう危機感を持っていた時、たまたま知人の紳士服工場が閉鎖し、若手男性の受け入れを依頼されたこと。続いて翌年に大阪の専門学校を卒業した男子が入社してきた。そこで若手育成のために元天神山のプラムイワテの工場長を務め、イタリア人モデリストから直接指導を受けた永井公氏と契約し、企業内学習塾をスタートしたのが始まり。2002年から実務の勉強をしながら閑散期の夏と冬に10日間の集中講義を行い、自分のスーツを作るという塾を開いた。求人というと誰も来ないが、匠塾の説明会に行くとたくさん集まる。こんなに洋服作りが好きな子がいるんだと実感しましたね。今年4月で第10期生になり、これまで26人が入っています。2年前まではみんな社員として採用していたのですが、現場のオン・ザ・ジョブ・トレーニングはどうしても部分縫いになるため、5年間いるけど袖しか作っていないといった不満が出てきた。それでも残る子は残っているんですが、匠塾のあり方を見直し、2年前から仕組みを変えました。

―新たな体制の運営というのは。
 それまでのように社員として採用するのではなく、年間100万円の奨学金を出す匠塾の生徒として募集する仕組みにあらためました。修業年数も2年間に設定した。塾生は半分は現場に入って実務を学び、あとの半分はビジネスマナー、フィッティング、パターン設計や縫製実技などを学ぶ。接客マナーや電話の受け取り方とか、人間形成のための授業もある。匠塾として独り立ちさせたわけです。熟生便覧も作成した。毎年8月で締め切り、4人以上は入れないということで、来年は2人を入れることに決めています。毎年たくさん応募があり、従業員を増やしたい考えもあるのですが、匠塾を求人募集の道具にしたくないんです。

―匠塾に応募してくるのはどういう人たちですか。
 だいたい4年生大学を卒業し、それから専門学校で学んだ子ですね。2年で一応フリーになり、外部に就職していく子もいるし、ズボンを覚えたから、今度は上着をやって見たいという子は社員として採用します。わが社で契約しているモデリストの先生から指導を受けられ、ここであと5年やれば、スーツ上下が習得できる。基礎をちゃんとやった子たちは社員になってからものすごく伸びます。来春で2年間の修業を終える4人の中に、横浜から来た子が営業を希望しているので東京の自社ショップに採用する予定です。その子は今、工場の現場で頑張っているので、営業を目指すのなら工場に来なくたって良いじゃないかと聞くと、負けたくないんですと言う。ただ笑顔でニコニコして売っているのではなくて、ショップでお客さんが試着した時、ちょっとおかしいですからボクがミシンをかけ直しますからという対応ができると、お客さんから本当に信頼される。だからここで2年間勉強したことは決してムダじゃないと話しています。また1人は商社に行く予定です。商社では日本で描いた型紙をバングラデシュやベトナムなどいろいろな海外工場で縫製するが、そこでは技術者の思いをどう伝えるか、伝え方が大事。洋服は最後の香り付けが必要なんです。現場を知っていればこういう仕上げにしてくれとか、丸くしてくれとか、叩いてくれと言える。だからその子も、ここで2年間勉強したとことはきっと遠回りじゃなかったと思います。


モデリストの育成を目指して

若手技術者を養成するために開設している「匠塾」(中央で指導するのが永井公氏)
若手技術者を養成するために開設している「匠塾」(中央で指導するのが永井公氏)
―今後については。
 この会社を人材育成の匠塾、イタリアに負けない本当に高級品を作る工場、そして製造現場を体験して知識を持った販売員によってお客さんに納得して頂いて売れる仕組みを作り上げたいですね。センスとテクニックによる付加価値あるモノ以外は国内でやる意味がない。そうすると人材育成を絶対しなければならない。イタリアに負けないようなメード・イン・ジャパンが目標なんです。縫製工場は瞬間的な利益よりも、焦らなくても人材を持ったものが勝つ。そのため彼らが本当に勉強して食べていけるようにするには、イタリアのモデリストのような人材を育成しなければならない。それが匠塾の目指す人材です。彼らが50歳、60歳になった時の日本のファッション産業の環境を考えると、生産はもう日本でなくなっている可能性が高い。そうすると日本のマーケット向けのモノ作りは誰が指導するんでしょう。海外の現地の人任せで良いのか。海外の工場に行って技術指導が出来ているのは全世界でイタリアだけ。日本向けの商品は日本人モデリストの手で技術管理をする。アルデックスをそのための実験農場として残して行きたいと考えています。
JUKIは世界のアパレル生産を全力でサポートします
● 斜めポケット仕様の本縫い自動玉縁縫い機 APW-896

高級紳士オーダー、パターンオーダーを生産しているアルデックスで活躍するJUKIの「APW-896」
高級紳士オーダー、パターンオーダーを生産しているアルデックスで活躍するJUKIの「APW-896」

高級紳士服生産でも活躍

 アルデックスは、高級オーダースーツ、パターンオーダースーツを工業生産しており、デザイン性を高めるためJUKIの斜めポケット仕様の本縫い自動玉縁縫い機「APW-896」を導入されています。
 当機は、優れた生産性と縫い品質でご好評頂いていますAPW-895の機能に加え、世界初の「コーナーメス横方向切り込み位置電子制御機構」と「コーナーメス左右個別昇降機構」を採用しました。ポケットの玉縁の品質を決定する角部の形状はコーナーメスの切り込み量の正確さによるため、従来はメス位置の調整を四角とも慎重に行なわざるを得ず、時間と技術が要求されていましたが、このAPW-896ではこれらの微調整がパネル操作のみで0.1mm位の調整を可能にし、縫製品変更に伴う段取り時間を大幅に短縮することができます。

 APW-896の特長は次の通りです。
  • 生産性の向上
    1. ダイレクトドライブ方式を採用した新設計の頭部は、最高回転数を従来機の毎分2,500回転から3,000回転にアップしました。
    2. 大押さえ移動速度、折り込み動作も高速化し、マシンタイムを短縮しました。マシンタイムは、業界最速の3.4秒を実現しました(条件・フラップ長さ150mm付け、縫い目長さ2.5mm)。旧機種と比較して、斜めポケット縫いでは、バックタック縫いで35%、コンデンス縫いで16%の短縮となりました。
  • 省電力設計
    1. エネルギー消費の削減に取り組み、経済性にも優れた省電力設計を実現。エネルギー伝達に優れたダイレクトドライブ方式を採用し、平均消費電力を75%削減、待機時の消費電力は90%削減しています。
  • 縫い品質の向上
    1. 斜めポケット縫製の繊細な切り込み位置の調整が、世界初の「コーナーメス横方向切り込み位置電子制御機構」と「コーナーメス左右個別昇降機構」により、縫い目に対するコーナーメス切り込み量の微調整が、縦・横方向ともに工具を一切使用せず、パネル操作のみで行え、玉縁角部の調整時間を大幅に短縮します。
    2. 左フラップの角度自動検知機能を標準装備し、フラップの縫い始め及び縫い終り位置と、角部切り込み量・位置の自動補正を行うことで、斜めフラップ付け縫製の縫い品質と共に生産性が向上いたしました。
    3. 左右の切り込み長さが異なる斜めポケット縫製の縫い始め・縫い終りの返し縫い(バックタック縫い)が、今まで左右の長さが異なっていましたが、バックタック長さ(運針)をそろえる機能が追加されましたので、返し縫い時の縫い品質が向上しました。

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