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服作り新時代 Vol.11

ベクトルを変える時代
リベラルアートの裏付けを
日本アパレル工業技術研究会(アパ工研) 会長
( 東京工業大学名誉教授)
清水二郎氏
清水二郎氏
 冒頭、龍の爪の話をします。日本人は龍の爪を三本だと思っていますが、中国は五本、朝鮮や韓国は四本です。昨年暮れに建長寺を訪れました。金堂の天井に龍の絵が描いてありますが、建長寺では金堂の修理に際して絵を修復する時に、爪を三本から五本に修正しています。言いたいのは千年来の文化格差。この格差から外れ、中国と対等につき合おうという意識を持ったのが、日清戦争後の百年前。中国と日本の間にはものすごい文化格差、ポテンシャルの壁がある。それを乗り越えるには、猛烈なエネルギーが必要であり、それを蓄えることが必要です。これが、技術力であり、開発力ですが、技術だけでなく、世界に通じるリベラルアート、つまり文化、教養の裏付けが必要なのです。

 キーワードはGDPです。国力というのは、産業力を伸ばすことによって上がる。だからGDPというのは、むしろ国力なのです。ところがこれは国民の豊かさとは違う。GDPを人間の数で割ったものが国民の豊かさ。だから、二つのメジャーでグローバル化の戦略と日本のアイデンティティーは何か見直さなければなりません。一人当たりGDPで見ると、日本においてアパレルに対する購買意欲が出始めたのは1960年から70年です。いま、その時期に相当するのが中国、インドネシア、タイ、マレーシアまでの東南アジア諸国。そこでは量としての繊維を必要とするとともに、豊かな衣生活、ファッション化が芽生えつつあります。そこは日本がいま生産基地だと思っている国で、日本の技術者がたくさん活動していますが、中国が日本の衣料品を作りたがらなくなった。アパ工研では毎年、次代を担う人々が集まって研修会を開いています。YKKで開いた異業種交流会で、彼らは経験を通して、そこはもう生産地ではなく、ファッションを売り込む所だと言い出した。いまや繊維工業はベクトルを変える時だと言えます。

 技術力と生産力は違います。生産力が上がると、GDPが上がる。技術力が上がると、一人当たりのGDPが上がる。日本は国力を上げるために、最初GDPを上げた。それが繊維産業で、重化学工業になり、その中から合繊が生まれた。今度は技術力を上げ、豊かな日本を目指してロボット化を進めた。それでGDPを上げ、現在の米国に並ぶ技術大国になった。

 中国は米国に並ぶ大国で、約二十五倍の面積、人口は十倍以上。GDPで見ると、この五年間で、七位から米国に次ぐ二位に急成長した。我々は中国を下に見ていますが、日本よりも中国の方がGDPが高いのです。日本人は一人当たりGDPで中国を見ている。我々は、中国を生産力で見るようにしなければなりません。中国では、大体7%から10%の人が大学に進学してますが、その数は東京都の人口に達しています。収入のある一千万人くらいの人がいるのです。しかも、豊かさもあり、教養も高い。そこに行けば、欧米よりも高い市場があるのは事実です。日本の良さを売る時代です。アパレル産業もきちっと見なければならない。そうすると、日本人の体型調査ばかりではなく、中国人の体型調査もしなければ、ということになります。

 日本のモノ作りは今後、どうしたらよいか。日本の特許出願件数は現在40万を越え、アメリカを抜いて世界一の数字になっています。それに対し、韓国、中国、ヨーロッパは、その半分から3分の1くらいしかない。つまり、それは日本の企業が国際競争下にあって、積極的に技術開発をしている実証であり、高く評価しなければならないことです。技術開発は三段階あり、最初の段階が原理の発見、その次が構造の仕組みの提案、そして三番目が性能の向上。電球はエジソンが考案しましたが、面積当たりの熱密度を上げもっと熱を発生させるために二重コイルにしたのは日本です。発明の第三の段階の性能の向上が日本の得意分野なのです。合繊においても、新合繊と言う独特のジャンルを作ったのは日本。日本に入ると技術も、日本の土壌に馴染むために、日本独特の洗礼を受ける―これが性能の向上に結びついています。

 技術というのは、製造技術と製品開発とがあります。製造技術の進歩によって、大量生産が始まり物の価格が下がると物が売れる。雇用も少なくて済む。新しい開発をし、価格を上げ、雇用を増すのがエンジニアの仕事。生産基地が中国に移ったことで、技術者を新製品の開発に投入できるチャンスに変わったと考えればいい。中国からの製品輸入の急増は、視点を変えれば、中国にそれだけの能力が加わったということ。欧米や一部中国など高級な販路を開拓する。そのために新しいものを開発し企画することが求められています。

 技術はサイエンスの上に成り立ちますが、企画力や開発力はリベラルアート―教養と文化の上に成り立っています。サイエンスには国境がない。リベラルアートは民族文化に結びついた壁がある。これからのモノ作りには、人作りが必要なのです。中国には中国の文化を生かしたものを作る能力が欲しい。先陣を切るのはアパレル産業、繊維産業です。日本の繊維産業は常に、日本の産業の先端を切って来た。今度もまた国際化の先端を切って欲しいというのが、私の願いです。
日本の国際化のあり方について活発な意見交換を行ったアパ工研の異業種交流会
日本の国際化のあり方について活発な意見交換を行ったアパ工研の異業種交流会
大渕哲
JUKI顧客満足宣言
世界のソーイング・クリエーションをサポート
JUKI株式会社 工業用ミシン事業部縫製研究所所長 石橋 信一
「世界で生産性向上を提案」
 JUKIは品質を第一に機能・性能の優れた工業用ミシンを開発、製造、販売すると共にアフター、ビフォーサービスにも力を入れてきたことで、お客様から評価され、信頼を得てきたと思います。そしてそのサービス活動の一つとしてあるのが縫製研究所での活動です。
 1959年の創設以来、世界各地のお客様の生産環境下に最も適した生産方式、作業改善方法の提案を行ってきました。工業用ミシンをただお客様に買っていただくということではなく、生産財としていかに効率的に使っていただき、生産性を上げていただくか、ということを研究、提案してきたのです。

 具体的な活動としては現状の工場の問題点を調査し、その結果に基づき生産性を上げるための生産方式や改善方法の提案、指導を行う“工場診断”、生産するアイテム、作業人員等の条件のもとで最も効率的な生産を行うための最適な設備とレイアウトを提案する“プラント設計”、お客様自らが工場の現状調査、改善が行えるようになっていただくための“マネジメントセミナー”、工程単位の生産性向上と安定した品質を実現するための“アタッチメント技術セミナー”等があります。
  この他のサービス部門として、ミシン自体の技術的問題を解決する営業技術部、メンテナンスに欠かせないパーツをクイックに供給するパーツ営業部等もあり、総合的なサービス活動を行っています。

 これからも市場を取り巻く環境は大きく変化し、お客様のニーズも多様化し続けることでしょう。これに対応するために、今後もJUKIはより優れた品質、機能、性能を持った製品をお客様にお届けすることはもちろんですが、更にお客様が満足されるようにサービス活動を強力に推進していきます。世界のソーイング・クリエーションをトータルにサポートし、その結果、多くのお客様の笑顔が見られるようにこれからもJUKIは努力していきたいと思います。
縫製研究所が開くセミナーには毎回多数のユーザーが参加
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