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服作り新時代 Vol.5

産学連携実践者の提言
「工」の人材育成に力尽くす
イトキン株式会社 技術顧問・文化ファッション大学院大学教授
  稲荷田征氏
稲荷田征氏
 三陽商会の技術部婦人服担当専門部長を最後に退職後、日本モデリスト協会副会長、イトキンさんの技術顧問をつとめ、さらに今年四月からは文化ファッション大学院大学の教授に就任します。今までは文化服装学院の非常勤講師でした。このほか、いろいろなところでセミナー講師や中央能力開発協会の検定委員などをやり、お陰様で充実した日々を送っています。

  常々思うことですが、この業界は、人材育成については力が入っていません。まだまだコスト優先です。その点では今度、大学院で人材育成に関わることになり、特にクリエーションの「工」の分野で、今までにない日本の工に携わる人材を育てたい。大沼淳理事長も、遅れている分野がそこにあるのではないかと言われています。「日本発」が叫ばれていますが、優秀なデザイナーさんはいても、ものを作るところに力が入っていない。新しい素材が他でどんどん出るが、カジュアル化ばかり追いかけ、本格的なモノ作り、後世に残るモノ作りはない。これから我々がスクラムを組んで残していかないといけない。

  アパレルはあまり工に力を入れていませんが、イトキンさんの大垣は地道です。JUKIさんのポケットマシンをカーブができるようにアドバイスしたりしていますが、四、五年経ったら差がつくでしょう。イトキンさんはできたら公開したいと言っています。すごいことです。大学で教える人は外部とのコラボレーションもやらないといけない。イトキンさんとはこれからも続けさせていただきます。そうすれば、業界の考え方とか業界が何をやっているか学生にも伝えられる。やはりアパレルにこういう人を欲しいと言われるような人を育てたい。

  ここのところ学生が地方の工場に行くようになってきました。工場さんも今までは地元の人を頼りにしていたが、将来の人材を育成するためにファッションの学校で勉強してきた人を採用することに目を向け始めた。モデリスト育成という取り組み方です。縫製工場の人は、管理を専門にやった人は少ない。洋服専門学校を三年出て工場に行くと、企画から生産管理、縫製、プレス、納品を一貫してできる。五年いると、かなりの力がつく。作ることに対しては工場が主導権を握らないといけない。若い人が工場に行き、わかった人がやり出すと、アパレルは困るところもあるでしょうが、本当はいいことです。工ががんばらないとだめです。それには基礎から地道にやっていかないと。縫製工場の二代目、跡継ぎに大いに勉強してほしいし、この人たちに期待しています。

  アパレルの技術者の仕事を三分割すると、三〇%は基本、三五%は基本の応用。その三五%のうち五%はそこでやっていること。残り三〇%はこれから絶対やらなくてはならないこと。オールマイティーの人はいないし、これからデザイン、素材、機械など新しいことに挑戦するには、三〇%残しておく。そういうやり方で学生にも今後は教えていきたいし、自分が持っている引き出しをできるだけ早いうちに出したい。

  大学でやりたいことは、二つあります。ひとつは解体の技術。いま日本の、特に婦人の場合は、ヨーロッパなど売れているものを買ってきて抜き取りする。しかし、まともに取れていない。十年程度の経験者がやってもわからない。それなりの経験者が解体しないと。作る方から言わせてもらえば、買ってきたものを再現しなさいと言われても、材料が違ったのではできるわけがない。全部ほどいて裏返して、作る。それを三枚やらないと、一人前の職人ではないという時代があった。簡単に言うと畳の裏返し。そこにノウハウがあるのです。

  パターンメーキングも、ひたすらトレースをさせる時間が必要。CADでやるときれいだが、洋服にしたら全然違う。図形そのものがわかっていないからです。パターン設計が耐震偽装建築になってしまってはだめです。どちらかと言うとカジュアルとか、廉価商品はそちらに行ってしまう。これは改めないといけない。

 私たちは新しいものばかり作ってきた。振り返る余裕がなかった。それでよかったのか。振り返ってみる余裕も欲しいです。ビッグなものが流行り、スリムなものが流行る。ビッグしか経験がない人はスリムになると出来ない。ストレッチ素材ができ、何となく出来た気になる。ところが洋服を見るとシワだらけ。違和感がないのは、伸びてくれるからです。しかしあれは寂しいし、情けない。

  一方、本物志向、高級のものになると手間暇かかりすぎる。今必要としているのは、それなりの値段で作ること。そういう技術が必要です。やることがまだある。私は残りの人生で人に教えないといけない。アパレルの工に役に立つことをやっていきたい。

  最後に、モノ作りの中に『お陰様で』と言う言葉がほしい。教わったらお陰様でこうなりましたと相手に敬意を表す。今は言葉にしても出てこないし、逆に、教えてくれない、と口にする。お陰様でこうなりましたと言えば、次のステップに行けるのです。
「工」の人材育成に力尽くす
「工」の人材育成に力尽くす
 
三浦利正
JUKI顧客満足宣言
世界のソーイングクリエーションをサポート
事業部横断で市場調査
JUKI 市場調査部部長 三浦利正
 市場調査部は二〇〇四年十一月に設立したJUKIでは新しい部門のひとつです。

  既に、市場調査や事業性評価は、それぞれの事業部門で対応されていましたが、事業部横断の問題あるいは本社の視点での調査については、具体的に対応する部門がありませんでした。
  そうした、グループ横断的または基礎的な調査活動を広くカバーすると共に、グループの調査スキルを向上させ一層のグローバル対応推進のために本社機能として設置されたのが市場調査部です。

 市場調査部の業務としては、地域別・国別情報などのマクロ分析、業種別のセミマクロ分析、法制度・規制などの特殊テーマ、企業別のミクロ分析、ブランド調査やCS調査などのマーケティング活動などを挙げることができます。

  調査を行う場合は、他部門よりの依頼に基づき取り組む受託調査あるいは調査支援の場合と、自部門でテーマを設定し取り組む自主調査のケースがあります。
  調査推進上の特徴としては、バリューチェーンの見方を重視しています。特定の業界のみではなく、その川上・川下および関連業界も対象としています。当社の事業領域は、産業財の売上比率が高くなっていますが、市場調査部としては需要の根源である最終個人動向を重視しています。調査に臨んでは、過去分析と同様に予測にも力を入れています。

  市場調査部ではまた、個別の事業部門ではカバーしにくい情報網の拡充や、他社・他業界の好事例の応用や展開にも取り組んでいます。

  私どもは、こうした活動総てにおいて、最終消費者を念頭に置いたCS価値向上のコンセプトをベースとしています。
  社外の皆様とは日頃の直接的な接点が少ないだけに、個々の機会を大切に致したく存じております。
マーケティング活動をベースにCS向上を目指す
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