当社はもともとグンゼさんの単なる下請けで受注加工だけでした。しかし、数年前から別の契約になり、グンゼさんの商品、生地といったものも動かせるようになった。それが他の縫製工場といちばん違うところだと思います。グンゼさんの生地を使ってうちの商品を作る。グンゼさんの生地を使って自社を製品作る。一部はうちしか使っていない生地もある。それが最大の特徴です。
新しい事業に取り組むとき、会社の資源をいかにして使うかですが、ただの縫製工場ですから、加工技術しかない。グンゼさんがライセンスでやられている商材等があり、親メーカーさんの生産部隊の範疇で資源を考えていけば、もしかして親メーカーが出来ない部分で何か出来ないかと考えた。それで自分の所のブランドを作ろうとしたわけです。私は建築の設計をやっていて、アパレルのことは全く知りませんでした。父の後を誰も継ぐ人間がいないので、十五年程前に帰ってきた。何も知らないからこういうことが出来るのだと思います。
グンゼさんとはモノ作りだけではなく、東京で販売しているうちの商品はグンゼの営業開発課を通して営業してもらっている。そこの結びつきが大きい。逆に言えば、営業開発課がどこかのメーカーさんにOEMする時のサンプルをうちが作る。正直、うちのほうがメーカーさんよりスピードが圧倒的に速い。そういうコラボレーションして、クロスオーバーしている。でなければ、こんな地方の田舎から東京で商品を販売することはまず出来ません。
二〇〇〇年前後を境に中国化というのは盛んになった。たぶんこのまま海外に出て行くだろうなと。ここ四、五年、厳しい状況は当社も同じですが、はっきり言って二〇〇〇年頃までは黒字だったんです。これから日本で独自に残るににはどうするか。当時はSPAがさかんに言われ、スピードだけだったが、そんなことをやっていたら縫製工場は利益が出ない。独自のブランドを出そうとしたけれど、なかなかうまくいかない。実際にはアウターウエアの販売を今もやっていますし、ライセンスブランド、独自ブランドのものもそれはそれなりに売れています。
しかし究極は一番得意分野で勝負をしたいということで、大手素材メーカーと共同で、天然石による機能素材の開発に取り組みました。丸三年経ち、今年の三月に糸が完成。素材開発まで出来るようになってきた。これを糸にしたのは我々が初めてです。非常に可能性が高い素材で、独占的にうちだけが製造権を持っています。保温肌着などインナーウエアや健康グッズ分野など新規事業分野を開拓出来る。それ以外にいろいろなデータが出てきていますから、来年の秋冬が最初の本格参入でしょう。経済産業省の二年目の自立化事業にも採択されました。何とか成功して事例を作りたいと思っています。
縫製業界は電機業界や自動車業界に比べて、十年、二十年、あるいはもっと遅れていると思います。それを科学的にやっていけば、まだまだ生産性は上がるでしょう。うちも生産性はたぶん今の倍にはなる。でも、残念ながら肌着の分野は上代が低く、同じ肌着がヨーロッパは二倍、三倍の値段です。別の言い方をすると、コスト的に生産性を二倍にすれば、値段が倍になると四倍になる。そういうことをやらない限りはやっていけないというのが、私の基本的な考えです。ただ、特化してやってもメーカーさんの下にいるということは際限がない。
自分で値段が決められる商売を少し持たないと難しいだろうということで、いろんなことを始めたのです。十五年前に会社に入り、十年前から新しい取り組みを始めた。最初は生産性を高めるためにいかにするかということばかりを考えていた。本格的にブランド化をやろうとしたのはこの七、八年です。
メーカーとの協業を目指して
これから製造販売をやっていく中で、グンゼさんと組むことの一番のメリットは、グンゼさんの協力工場は同じものが同じレベルで加工できる。これは世界的にもあまりないことだと思います。同じ品質の物ができる。あまり量を出す気はないですが、万が一ヒットしても、その時は生産背景は同じ状態でやっていける。生産のインフラは最初から準備されている。それが大きい。営業に関しては、営業開発課というチャネルとおつきあいをさせて頂いているが、そのルートから本来のものと違った一格上の商品が展開できる。
私が考えているのはアパレルに関しては、親メーカーときちんとした協業が出来るようにすることも我々の役目ではないかと思っています。その中で収益が回復し、社員の生活がよりよくなればいい。会社を起点とした商品が出来ることはもっとおもしろい。
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